四話 コスプレ衣装店のアプリ
家に帰ると、ベットの上に転がりながら僕はさっきの店のアプリを確認した。
最初の時は言われるがままダウンロードしただけで、アプリを開い他ことはまだなかった。
二度と行く気はなかったから、開くつもりがなかったと言うのが正しいかもしれない。
だからアプリ自体を開くのはこれが初めてだ。
「ふーん…店はあんなに怪しい外装なのに…アプリはまともじゃん。」
UIが少し古い気はするけど…まぁまぁ見やすい。
そのアプリに表示されるのは、
『獲得ポイント数』『クーポン&プレゼント券』『ショッピング』『レベル』
の4つ。
ショッピングという項目があるということは…
なるほど、確かにネット上で衣装が購入できるらしい。
早速ショップの内容を見てみると、やはり豊富な衣装が掲載されていた。
下手したら、店で見た衣装の数より多いかもしれない。
「もったいないな…衣装はマジでいいやつ多いのに。
あの外装なんとかなんないのか?そんだけでもっと客来るだろ。」
あの店行きにくいし…今後はこのアプリで衣装を買おう。
あの店主と話すのも億劫だし。
「でも、結局…なんの手がかりはなんもなかったな…」
ここの当てが外れたってことはやっぱただの火事場の馬鹿力だったのか…。
いやちょっと待てよ、物は考えようだ。
あの日できたと言うことは、それが今の自分の実力なのではなかろうか?
「そうだよ、もしかしたら気が付かなかっただけで、
最強人間になった可能性十分あるし!」
僕はベッドから一度起き上がり、試しに本棚を持ち上げてみようと手をかけた。
もちろん、本棚は持ち上がらない。
僕は最強ではなかった。
「あーもう!」
期待を裏切られた僕は、もう一度ベッドにダイブして、手足をバタバタさせる。
どんなにあの日の僕が持て囃されても、誰も気が付かないわ、
あの日はトラック止めれたのに、今日は本棚すら持ち上げられないし…
原因わかんないのにこの状況に喜べるか!
「なんなんだよもう!」
僕はひとしきり暴れた後、もう一度携帯を見る。
すると『レベル』のタグが目に入った。
「そういえば…このタグはまだ見てなかったっけ…
他の3つはともかく…このレベルってなんだ?」
ゲームじゃあるまいし…もしかして買い物した回数や金額でレベルが上がって、
レベルが高ければ高いほど特典が得られる…みたいな感じだろうか…
「タップしてみればわかるか…、説明くらいあるよな。」
そう思った僕は寝転んだそのままの体勢で、『レベル』と書かれたタグをタップする。
しかし予想とは全く違って、文字もイラストも衣装の紹介も何もなく、
ただ真っ黒な画面が表示された。
「ん?」
なんだ?壊れたのか?バグか?
困惑した僕は、スマホを振ってみたり何回か画面をタップしてみたりしたけど、
画面は特に変わらない。
「なんだ…?固まったか?」
再起動すればいいのか?
とアプリを落とそうか検討を始めた時、
羽の生えた女の子がフラーっとゆっくり画面に表示されていた。
どうやら壊れていたのではなく、ロードに時間がかかっていただけらしい。
少し安心する。
しばらくフヨフヨと画面内を飛び回るその女の子を眺める
「店の看板キャラとかかな?」
あの外装の店のキャラクターにしては、結構キャラデザが可愛い。
紫色の髪で、両サイドにお団子というヘアスタイル、
細いけれどあるところにはちゃんとある体の作りに、
お腹を出すファッションで、履いてるスカートは結構短い。
背中の羽も綺麗だし…薄く透けてるけど、モチーフは蝶々かな?
結構作り込まれている。
でも、キャラクターが出てきただけで、やっぱり説明とかは一切ない。
本当になんなのだろうか…もしかしてゲームか?
なんかスマホ画面を触ると変わるのか?
と答えの出ない疑問を抱きながら女の子を見ていると、
画面の女の子はこちらに顔をむけ、画面に近づいてきた。
しばらくじーっと見つめたかと思うと、画面の中の女の子は
「ヤッホー!」
と僕に声をかけてきた。
「うぉっ、しゃべった。」
少しだけ驚いたが、本当に少しだけだ。
なぜなら今時珍しくないからだ。
今の時代AIが発達している、
AIが搭載されているなら、アプリの中にいるキャラが話しかけてきたとしても
なんの不思議もない。
「何よその反応、もうちょっと驚いてくれてもいいんじゃない?」
画面の中のキャラクターは、僕が一瞬しか驚かなかったのが不服だったのか、
むくれた様子で僕にそう言ってきた。
感心した。
結構感情入った喋り方するんだな…しかも流暢だし。
今の技術でもこんなにすらすら喋るAI機械は見たことがない。
「かなり高性能なAIだな…もうここまで技術は進歩してたのか…」
僕が頷きながらそういうと、
「ちょ、AIなんかと一緒にしないでよ!
プログラムで構成なんかされてないわよ私!」
めっちゃ怒るキャラクター。
本当にすごい、僕の言葉を一言一句ちゃんと理解している。
こんなアプリで使うには勿体無い技術だ。
全く聞き入れようとしない僕の様子を見た画面の中のキャラクターは、
さっきまでの怒った顔とは違って
うるうると目を潤ませながら座り込んだ。
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