第50話 王国潜入

 王国に向かってから約十時間後、日が落ちた頃、月影の面々は目的地である王国の王都内に侵入していた。


「こちら異世界調査第一部隊、作戦実行位置に着いた」


「こちら第二部隊、同じく位置に着いた」


「第三部隊、同じく」


 月影では異世界調査部隊という異世界調査のための新たな部隊が設立された。そんな部隊からの報告を空が聞いている。


「異能部隊了解。時間まで待機していてくれ」


 通信を切り、空は報告を整理する。

 現在空は王都の路地裏で作戦決行までの準備や現状報告を聞いている。他の面々も王都内の確認や情報取集中だ。

 そんな空のもとに、黒仁と姉川が戻ってきた。


「全員準備は出来たようだね」


「はい。……って、トップ、何食べてるんですか?」


 黒仁は肉串を手に持っている。


「魔物の肉串だよ。そこの屋台で買ったんだ」


「はぁ、ちなみに金は?」


「さっき人に絡まれてね。ちょっと説得したらお詫びにってくれたんだよ」


「……何やってるんですか」


 王都には多くの人が集まる、それはガラの悪い人も例外ではない。

 そんなガラの悪い奴らが、武器の一本も持っていない黒仁に絡んできた。そんな愚か者どもを返り討ちにし、金を貰った訳だ。


「はい。これ空くんの分だよ」


 姉川が袋に入った肉串を空に渡す。


 ちなみに金はお詫びとして貰ったが、異世界の言葉に関しては準備期間で覚えた物だ。

 真たち異能組の言語は相手が聞きやすい言語や、自分が伝えたい言語に自動的に翻訳される。

 だが意識すれば異世界言語を日本語に翻訳せずそのまま伝えることが出来る。

 そうして真協力のもと、最低限の会話が出来るレベルまで異世界言語を習得した。


「姉川さん、ありがとうございます。……美味い、けどこれなんの肉ですか?」


「オーク肉だって言ってたけど?」


「オーク、豚の魔物でしたっけ。確かに豚肉っぽい味ですね……」


 空は警戒しながらも肉串を食い終わる。すると真、セイラ、いばらがフードを取りながら三人に近づく。


「美味そうなもの食ってるな」


「オークっていう魔物の肉なんだと、意外といけるぞ」


「魔物の肉?魔物って食えるんだな」


「真くんも食べる?セイラちゃん、いばらちゃんも、どうぞ」


 姉川は袋から肉串を取り出し、三人に渡す。


「ありがとうございます。……確かにいけるな」


「……美味しいですね。魔物、今度料理してみたいです」


「……美味しい。けど、魔物って思うとなぁ~」


 三人は各々意見を述べながら肉串を食べ終える。

 そしてしばらくすると完全に日が落ち、夜が訪れる。


「さて、そろそろ時間だね。みんな準備はいいかい?」


 黒仁の言葉に異能部隊の全員は頷く。


「では、作戦開始と行こうか」


 黒仁は通信機を手に取り、作戦の開始を告げた。



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