第48話 勇者召喚
フードの女が王国に来た日からさらに二年の月日が流れた。シオンは現在十四歳。
この二年間、シオンは計画を進めるための準備をしていた。
まずは『支配の瞳』の複製。
『支配の瞳』は数回使えば壊れてしまう。『支配の瞳』が使えなければ計画のほとんどが破綻してしまう。
しかし複製と言ってもシオン自身には知識も技術も無い。そして洗脳する魔道具を持っていることを知られれば、味方といえど警戒されることになる。
なので初めに王国の技術士を魔道具の確認を兼ねて洗脳した。結果的に誰にも怪しまれることなく複製することに成功した。
その複製過程で分かったのは洗脳には種類があること。完全な洗脳は負荷が大きく、記憶の一部を消すなどは負荷が小さい。
研究を重ねた結果、『支配の瞳』のレプリカを作ることに成功した。ただしその効果は相手の意識を朦朧とさせたり記憶の一部を消す程度。しかも一度使うと壊れてしまう。
結果的にシオンのスキルと並行して使うことで一時的な洗脳状態を作り出すに止まった。
現在王城は完全にシオンの手中にある。騎士団やメイドの上層部を集中的に強い暗示をかけ、戦争の準備を整えている。
さらにフードの女が来てからの二年間、シオンは勇者召喚について調べていた。
それで分かったのは勇者召喚が数百年前に行われたこと。そして召喚するには専用の魔法陣と大量の魔力が必要な事。
そして王城の宝物庫を調べ上げ、勇者召喚の魔法陣を探し出した。
『支配の瞳』の量産と勇者召喚の調べ上げ、上層部の洗脳、それらを含めて二年の月日を要した。
そしてついに、この日がやってきた。
「お父様。準備が整いました」
シオンは王妃の寝室で、眠る王妃の手を握る王に声をかける。
王妃の寝室は、フードの女が来て以降、特別な部屋に移された。寝室には王とシオン、そして世話をするため数人の決められたメイドだけが入ることが出来る。
「そうか。……シオン、すべては王妃のために」
王は王妃を見つめたまま呟く。
「分かっています。必ずお母様を起こします」
シオンは顔をうつむかせながら寝室を出た。
________
寝室から出て、シオンは勇者召喚の用意に入った。
「さぁ、始めますよ」
シオンは騎士と共に勇者召喚の間に足を踏み入れる。
「第一陣、魔力を流してください」
騎士たちは命じられた通り魔力を流す。すると魔法陣が輝きだす。
「順調ですね。第二陣、魔力を流してください。第一陣は魔力が無くなった者から下がりなさい」
騎士たちは魔力が無くなった者と入れ替わり、魔力を流す。魔法陣は輝きを増す。
「これで最後です。第三陣、ありったけの魔力を流しなさい」
控えていた最後の騎士たちが魔力を流す。
そして魔法陣は輝きを増し、光を放つ。
「全員部屋の外へ!」
シオンの指示で騎士たちは一斉に部屋の外に出る。
(お願い、成功して!)
シオンは扉の隙間から光を放つ魔法陣を覗き、祈る。
数秒後、魔法陣の光が消える。そして光の中から数十人の人、勇者が現れる。
「なにが起こったんだ?」
「ここスマホ使えないんだけど?!」
「まさか、この展開は異世界転移?!テンション上がってきたあぁ!!」
勇者たちは各々様々な反応をしている。
「……行きますよ」
シオンは扉を開け、騎士たちと共に中に入る。
「勇者様方!どうか我らの世界をお救いください!」
(私たちのために)
そんな気持ちで、シオンは勇者たちに頭を下げた。
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