第44話 再び異世界へ
異世界から戻り一週間後の早朝。真、セイラ、いばらの三人はマンションで装備の最終確認を行っている。
「よし。これで全部だな」
真は黒いスーツを着用し、腰や内ポケットに武器や道具を収納している。
「はい。準備は完璧です」
セイラはいつも通りの白と黒のメイド服。至る所に金属の板や糸が隠されており異能を使うことによりどこからでも武器を出現させられる。
「これが私の戦闘服……。武器を持ってるのに何だか軽いわね」
いばらは腰に銃とナイフ、さらに鞭を携える。そして青と白を基調とした服を着ている。
「月影の技術の結晶だからな。ちなみに鞭の方はどうだ?」
「たぶん大丈夫。少ししか練習してないから自身は無いけど」
「その点は自信もっていいぞ。お前は実戦で十分に使ってたからな」
いばらが銃やナイフに加えて鞭を持っているのは真価解放で鞭を使っていたから。そして真価武装のための訓練という名目もある。
「マスターの言う通りです。私との訓練でも十分に動けていました。後は実戦で経験を積むだけですよ」
「まぁ二人がそこまで言うなら……うん。なんとかなりそう」
最終確認も終わったところで、三人は部屋を出る。
そしてマンション近くで待機している黒服の運転で約一時間。ヘリポートに着く。
「ヘリコプター?」
「門がある場所の整備がある程度整ったんだ。だから車よりも早いヘリで移動できるようになった」
三人はヘリに乗り込み一時間足らずで門のある場所に着いた。
_________
「たった一週間でかなり整備されましたね」
以前までは建物の一つもない草原だったが、そんな草原の中に巨大なヘリポートが設立されている。
三人がヘリから降りると真めがけて一目散にロウガが駆け寄ってくる。
「『我が主!』」
「ようロウガ。調子はどうだ?」
「『万全です。どんな敵が相手でも問題ありません!』」
「そいつは力強いな。異世界の調査はどうだった?」
真が聞くとロウガは声のトーンを落とす。
「『申し訳ありません。そちらはあまり成果が出ていません』」
「そうか。まだ始まったばかりだからな。今日は今日の任務に集中しよう」
「『はい。今日の任務、全身全霊で挑みます!』」
三人にロウガを加え、一同は地下に向かった。
「来たな」
「みんなおはようー。お、いばらちゃん装備似合ってるね」
地下に着くと、空と姉川が迎えてくれる。
「あ、ありがとうございます」
「いいね。初々しい。それにしても鞭かぁ……」
姉川は昔の任務の事を思い出し苦笑いをする。
「何か変ですかね?」
「ううん。大丈夫、気にしないで」
姉川は笑いながら手を振る。そんな様子を見て真が口を開く。
「……二人とも疲れてるな」
真の言う通り、目立つほどではないが二人の目には隈が出来ている。
「ここ数日は忙しかったからな。作戦会議、人員選定、異世界調査。色々と立て込んでたからな」
「私も機材の調整とか、組み立てとか。もう忙しすぎるよ」
二人は同時にため息を吐く。
「それはお疲れ様。まぁ今回の任務が終われば……。終わったらトップに休めるよう掛け合ってみるよ」
真の言葉に二人は疲れた目にわずかな希望を宿す。
「頼むぞ我らが隊長様」
「真くん。ほんとに、お願い」
二人の言葉に真たちは「本当にこの人たち休ませてあげよう」と思った。
そして空と姉川を加えて歩き出す。そして門の前に着くと白衣の職員が近づいてくる。
「異能部隊の方々ですね。みなさまがお待ちです。門の中へどうぞ」
門が開き、異能部隊は再び異世界に足を踏み入れた。
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扉の先には多くの人、車、飛行機、様々な機械が置かれている。
「人がたくさんいるわね」
「これでも月影のほんの一部だけどな」
異能部隊が歩いていくと、月影トップである忍田黒仁と出会う。
「みんな揃っているね。いばら、装備はどうだい?」
「大丈夫。サイズもあってるし、練習もしたから」
「そうか、けど無理はしないようにね。いばらは数日しか訓練をしてないから」
「分かってる。無茶はしないわよ。それよりも私の隣に居る人の方が無茶すると思うわよ」
いばらは横に立っている真を見る。
「大丈夫だ。俺は自分の実力を把握してる。無茶はしない」
「どうかしら?ねぇセイラ」
「そうですね。マスターはもっと自分を大事にしてほしいです」
「……気を付けるよ」
真が女子二人に言いくるめられているのを空や姉川、黒仁が顔をニヤつかせながら見守る。そうしてしばらくすると黒仁の端末が鳴る。
「準備が出来たそうだ。そろそろ行こうか」
黒仁の言葉に頷き、真たち異能部隊と、別部隊約三十名を乗せた二機の飛行機が王国に向けて出発した。
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