第42話 マンション地下の訓練場
地下に着いた三人はエレベーターから降りて訓練場に足を踏み入れる。
「ここが訓練場、広いわね。それでどんな訓練をするの?真価解放?」
「いばら、あなたそんなにマスターとイチャイチャしたいんですか?」
「え!?そ、そんなわけないでしょ!」
「どうでしょう?そこまで必死だと逆に怪しいですね」
いばらは必死で否定し、セイラはそんないばらをからかうような言葉をかける。
そんな二人を真は優しい眼で見守る。
(セイラがあんなに楽しそうにしてるの珍しいな。同年代の女子と話すのが新鮮なのか)
真がそんなことを考えていると、二人のやり取りも終わり、本題に入る。
「それで、結局何の訓練をするの?」
「とりあず射撃だな。正直作戦開始までの一週間でやれることは少ない。だからお前の長所を伸ばすことにする。それと後で異能も少し調べるぞ」
真といばらは射撃場に向かう。セイラは訓練場の別エリアの確認に向かった。
「とりあえず試してみろ。一口に銃と言っても種類があるからな」
真は壁にかけられている銃を手に取り、いばらに渡す。
「分かった。やってみる」
いばらは人型の的に向けて銃を構え、引き金を引く。弾丸は的の中心に当たる。
「……なるほど。確かにいい腕だな。次は頭だけを狙ってみろ」
「分かった。すぅー……」
いばらは新しい的の頭を狙う。連続で放たれた弾丸は全て頭に命中する。
「よし。次はこれだ」
真は壁からスコープの付いた狙撃銃を手に取り渡す。
「これってスナイパーライフルってやつ?」
「あぁ、次はそれぞれの部位に一発ずつだ」
真は的を新たな的を出す。ただし先ほどよりも距離はかなり遠い。
いばらはスナイパーライフルに付けられたスコープを覗き、狙いを定める。
「すぅー……」
弾丸は頭、胸、肩、腕、足、と的に命中していく。だがどれもが狙った場所とは少しずれている。
「さすがに距離が離れると厳しいか。感覚的にはどうだ?」
「う~ん。私的にはライフルよりも拳銃の方が使いやすかったな」
「なるほど。それじゃあ拳銃メインで鍛えていくか。気に入った拳銃を持ってこい、次行くぞ」
「次?」
「実戦だよ。さっきも言ったけど時間が無いんだ。習うより慣れろの精神で行くぞ」
いばらは拳銃を手に取り、真と共に射撃場を出る。
___________
二人が向かった場所はいくつかの遮蔽部が置かれている訓練場。
「ここでセイラを相手に実戦を積んでもらう。弾丸はペイント弾。それとこれ付けろ」
真はいばらにイヤホンを渡す。
「俺はそれで指示を出す。と言っても基本的な立ち回り方やアドバイスをする程度だ。とりあえず自分で考えて戦ってみろ。最初の目標は一発セイラに当てることだ」
「……分かった。行ってくる」
真は監視カメラのモニターが置かれた部屋でいばらとセイラがスタート位置に着いたのを確認する。
「では、始め!」
訓練場はいくつもの遮蔽部で囲まれた迷路のような作りになっている。なので先に相手を見つけた方が圧倒的に有利だ。
開始の合図とともにセイラは走り出す。
対するいばらはゆっくりと警戒しながら進んで行く。
そんな二人はそう時間も経たないうちに装具する。
「見つけましたよ」
先に見つけのはセイラ。セイラはいばらの背後から迫っていく。
「……セイラ!?」
いばらは警戒をしていたおかげか後ろを向くと共に自分に迫ってきているセイラに気づいた。
「速い!?けどこの距離なら銃の方がっ!」
いばらはセイラに拳銃を向けて引き金を引く。
「甘いですよ」
セイラは常人離れした動体視力でペイント弾を避ける。
「うそっ!?」
目の前で起こった人間離れした技に、いばらの動きが一瞬止まる。その一瞬の隙にセイラは一気に距離を詰める。
「隙だらけです」
セイラは手に握っているインクの付いたゴムナイフをいばらに当てる。
「そこまで。二人とも最初の場所に戻れ」
真からの指示で二人はスタート位置に戻る。
その間にいばらはイヤホン越しに、真からアドバイスを受ける。
「さっきのセイラの動き何なの?ペイント弾が避けられたんだけど!?」
「あれがセイラの戦闘スタイルだ。弾丸を避ける、もしくは切りながら接近する。今回はペイント弾が相手だから切らずに避けてるな」
「なんでそんなこと出来るのよ」
「簡単に言えば才能だな。あまり深く考えない方が良い。それよりも今はお前だ。さっきも言ったがセイラは何があろうとも接近して戦うスタイルだ。自分の
「なんか難しいわね」
「まずはセイラに一発入れることを目標に戦ってみろ。時間は無いが、戦闘は経験を積んでいくしかないからな」
「なるほど。……なんだかアドバイスし慣れてるわね」
「月影で新人相手に指導とかしてたからな」
いばらはスタート位置に戻り、訓練を再開した。
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