第41話 マンションの地下
異世界から戻ってきた翌朝。
「……朝か」
真はベットの上で目を開ける。服装は昨晩と同じまま。四六時中警戒でろくに休めず、さらに何度も戦闘を繰り返した状態だったので部屋に着くと共に眠りに着いていた。
真は体を起こし、枕元に置いてある端末を確認する。
「トップから連絡が来てるな。いばらの事か……」
黒仁からのメールを確認していると、扉が開きセイラが入ってくる。
「おはようございますマスター。よく眠れたようですね」
「あぁ、おはよう。トップからの連絡見たか?」
「はい。起きてすぐに確認しました。まぁ話は後で、先に朝食にしましょう」
「そうだな。あ、でも先にシャワー浴びてくる」
「そうおっしゃると思い着替えを脱衣所に準備してあります。何でしたらお背中も……」
「それは遠慮しておく。でもありがとな」
「はい。ではお食事の準備をして待っています」
真は脱衣所に向かい、セイラは朝食の準備のためリビングに向かった。
___________
真とセイラはリビングで朝食を取る。
「それで、トップからの連絡の内容だが」
「いばらが正式に月影に入ることですね。それも私たち異能部隊に」
「異世界転移で異能を得たからな、別の部隊に入れるわけにもいかないんだろ。それともう一つの内容」
「高校生たちの救出ですね。ただまた異世界に行くには準備に一週間ほどかかると」
本来であればすぐにでも救出作戦を実行したい。だが作戦の立案、移動手段の確保、装備の確保、やらなければならないことは大量にある。まして場所は何が起こるか分からない異世界、なので慎重に事を進めなければならない。
さらに言えば真といばらが異世界転移に巻き込まれたことにより、進められていた異世界調査の作戦が前倒し、急ピッチで進めれたことにより物資も設備も足りていない状況だ。
「ここまで何年も待ってきたんだ。準備のためにかかるのが一週間なら早い方だ。……ごちそうさま」
朝食を食べ終わり、真は銃の手入れ、セイラは食器を洗う。そうして約一時間後。
ピーンポーン
「お、来たな」
インターホンの音が鳴り、真とセイラは玄関まで歩き扉を開ける。
「おはよ。真、とセイラ?」
家の主である真と何故か一緒に居るセイラに挨拶をするいばら。その手には大きな旅行カバンが握られている。
「おはよう。とりあえず荷物はセイラの部屋に置いてこい」
「隣です。こちらにどうぞ」
セイラは玄関を出て、隣の自分の部屋にいばらを連れて行く。
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「適当な場所に置いておいてください」
「ありがと。……この部屋、何もないわね」
セイラの部屋は真の部屋以上に物がない。ほぼ真の部屋で凄いしているので置かれているのは最低限の家具と洋服くらいだ。
「普段はマスターの部屋で過ごしていますから。そのマスターの部屋もあまり物がありませんが」
「へぇ~。……って真と一緒に暮らしてるの!?」
「そうですが?まぁ、のんびりと話をするのはまた後。マスターを待たせるわけにはいきませんから。どうぞ、これに着替えてください」
セイラはいばらに服渡す。渡した服は、見た目は普通の青色のジャージ。だがその実態は月影の技術を集結して作られた高い耐久性と機能性を兼ね備える月影の訓練服。
訓練生は全員この服を着て訓練に励んでいる。
「この服、見た目は普通のジャージなのになんだかすごく動きやすいわね。それにサイズピッタリ……」
「月影の技術の結晶ですからね。サイズに関してはシャルロット様からお聞きした物を用意したので」
「なるほどお母さんから……なんでお母さん!?」
「シャルロット様には普段からお世話になっていますから」
「もしかして月影関連?」
「いえ、普段使っているスーパーが同じなので共にお買い物をしたり世間話をしたりしています」
「何でお母さんとセイラが主婦同士の交流みたいなことしてるのよ。というかお母さん私よりもセイラとの交流が長いのね……」
いばらが自分の母親と恋敵が仲良しであるという事実に何とも言えないショックを受ける。
「そろそろ行きましょう。いつまでもマスターを待たせるわけにはいきません」
「あ、うん。帰ったらお母さんに色々聞こう」
__________
いばらとセイラが部屋から出ると、部屋の外に黒いスーツを着た真が立っている。
「なにその恰好?」
「仕事着。普段の任務は学校帰りが多いから改造した制服を使ってるんだが、こっちが俺の本当の戦闘服なんだよ」
真の着ているスーツは見た目よりも多くの物を収納が出来る。服のあちこちに様々な武器や道具が収納されている。
「へぇ、カッコイイ……じゃなくて似合ってるわね」
「そいつはどうも。いばらも好きな服を考えておけよ。月影に入ると自分の好きな戦闘服を注文できるからな。じゃあ話はこれくらいで行くぞ」
三人はエレベーターに向かう。
このマンションは五階建て。真とセイラが住んでいるのは最上階の五階。
ちなみにこのマンションに二人の他に住んでいる人はいない。月影が管理している建物なので万が一にも他の人に危害が及ばないようにするためだ。
「それでこれからどこに行くの?お父さんからは二人に特訓してもらえって言われて来たんだけど」
「俺たちもトップ、叔父さんから連絡を受けてる。これから向かうのはこのマンションの地下だ。地下には俺たちのために作られた訓練場がある」
「なるほど。……でも地下に行くボタンが無いけど?」
三人が乗り込んだエレベーターには地下に行くためのボタンが無い。
「一応、訓練場は秘密の場所だからな。セイラ」
「イエスマスター」
セイラはエレベーターのボタンを連続で押す。すると階層表示が地下のB1になる。
「後で教えるのでいばらも覚えてくださいね」
「う、うん。ほんと異世界に行ってから予想外の事ばっかり起きるわね」
いばらがため息を吐いている間にエレベーターは地下に着いた。
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