第34話 特別任務人員募集
(映像)
流れ出した映像には広い部屋には千人近くの月影の構成員が映っている。
その場に居る人たちは各々近くの人と話したりして時間を潰していると、正面のモニターに人が映る。映った人は月影トップの忍田黒仁。
黒仁が映ったことでその場にいた全員が背筋を伸ばし、その場の雰囲気がガラリと変わる。
「みんな忙しい中よく集まってくれた。早速だが、今日集まってもらった内容、特別任務について話をしよう」
その瞬間黒仁の顔が映った画面が小さくなり「特別任務について」という題名が大きくモニターに映し出される。
「現在世界各地で行方不明者が急増している。表向きには原因不明とされているが、その原因は異世界転移と呼ばれる現象ということを我々は突き止めている」
その言葉を聞いた瞬間、何人かの人が怒りに満ちた顔をする。おそらく身内が異世界転移に巻き込まれたんだろう。
「今回の任務はその異世界転移の原因究明にあたる任務だ。これは世界連邦からも依頼を受けている重要な任務だということを改めて頭に入れてほしい。そしてまだ未定ではあるが、君たちの内の何人かにはこの任務に当たってもらうことになるだろう」
黒仁は一度話を区切る。
「では今日の本題に入ろう。本来なら各部隊の代表を集めて話すようなことをわざわざ有志を募って集まってもらった。その理由は君たちも知っての通り君たちの中から一人、今回の任務を先行して行ってもらう部隊に異動してもらうためだ」
黒仁の言葉に構成員たちが食い入るようにモニターを見る。
「改めて言うがこの任務は危険で重要な任務だ。主な指揮はすでに決まっている部隊の隊長にしてもらうが、それでも命の危険があることに間違いは無い。もちろんそれに見合った報酬も用意している。だが命を落としてしまえばそれも意味がない。それでもやろうという者はこの場に残ってくれ」
黒仁は脅すような言葉を並べるが、誰一人としてその場から離れる者はいない。
「なるほど。君たちの覚悟は分かった。これからさらに詳しい説明を行っていくが、ダメだと思った時点で離れて貰って構わない。ではまず、君たちの異動先となる部隊だが、部隊名は月影異能部隊、開花真が隊長を務める部隊だ」
その瞬間、その場の一割の人が逃げるようにその場を離れた。さらに二割ほどの人がどこか悟ったような表情で、「無理だな」「無理ですね」なんて話しながら出ていく。
_________
(車内)
「いきなりたくさんの人が出て行っちゃったけど!?」
いばらの声で姉川が映像を一度止める。
「……いきなり大きな声出すなよいばら。驚くだろ」
「それはごめん。けどあれだけお父さんが危険だぞって言っても出て行かなかったのにあんたの名前を聞いた瞬間にたくさんの人が出て言っちゃたじゃない」
「そんな俺が原因みたいに」
「どう見てもあんたが原因でしょ。いったいあの人たちに何したの?」
そんないばらの疑問に答えたのは空。
「『死神』と恐れられて数多くの任務をこなしてきたんだ。その過程で助けられた奴もいるし、お前にえげつない言葉をかけられた奴もいる。そりゃあ怯えられるしお前との任務を諦める奴も出てくる」
真は車内全員の視線を集める。
「……仕方ないだろ。俺が口を出さないと死にそうな奴がいたんだから」
「お前らしいよな。そんなお前だからあれだけの数がその場から逃げ出した訳だが」
「まぁまだ三分の二くらいの人数が残ってるんだ。姉川さん続きを」
「はーい。じゃあ流すよ」
__________
(映像)
人が減っても黒仁は気にすることなく説明を続ける。
「そしてもう一人、異能部隊副隊長のセイラ=レーショウも同行する」
その瞬間、約三割の人が扉に向かって歩き出した。人によっては怯えるように走って部屋を出て行った。
_________
(車内)
「ちょ、またたくさんの人が出て行っちゃったけど!?」
いばらの言葉でまた映像を停止する。
「いばら。あなたもう少し静かに見れないんですか?」
「ごめん。けど今の人たちセイラの名前を聞いて部屋を出て行ったわよね?」
「そんな私が原因みたいに」
「どう見てもあなたが原因でしょ。セイラは何をしたの?」
その疑問に答えるのはやはり空。
「レーショウの場合は噂くらいしか聞いたことないが、二年足らずで月影の戦闘訓練を終え、その後は『
「私も効いた話だけど、確か月影の子が真くんにちょっかいをかけようとしたらセイラちゃんの無言の殺気に当てられたせいで泡拭いて気絶して医療部送りにされたって」
「うわぁ。そいつら命知らずですね」
「だよねー」
二人が盛り上がっている中、後部座席で言い訳が始まる。
「私はマスターのメイドなので。マスターへの危害は私が全て排除するべきなので」
「だからって大人を殺気だけで気絶させるって」
「ではいばらはマスターに危害を加えられようとしても殺意が湧かないと?」
「うっ、そりゃあ嫌ではあるけど、でも普通そんな殺気なんて出ないでしょ」
いばらの言葉に空と姉川が頷く。
そんな反応を見てセイラは「そんな……」とショックを受ける。
「そういえば真もセイラも『死神』とか『冥土』とか二つ名?みたいなの持ってるのね」
「そうだな。トップ、叔父さんも父さんと母さんも持ってたし、裏世界で有名になると本名よりも二つ名の方が浸透するんだよな」
「へぇー。じゃあ空さんと姉川さんも二つ名持ってるんですか?」
「ん~。私は持ってないなぁ。そもそも私はあんまり任務には出ないし先生みたいな天才的な開発や発明も出来てないからね」
「俺も無いな。そもそも二つ名なんてよっぽど変な奴かヤバいやつじゃないと付かないからな」
「それじゃあ俺がヤバいやつみたいだな」
「その通りだよ。じゃないと『死神』なんて大層な二つ名つかないんだよ」
「……そもそもなんで『死神』と『冥土』なの?セイラは恰好から来てるんだろうけど、そもそもなんでメイド服着てるの?」
いばらの怒涛の質問ラッシュに一つずつ答えていく。
「真の二つ名の由来は幼い頃から数多くの人を始末してきたこと。幼いのに、いや幼いからこそ年齢にそぐわない功績を積ん出来たからこその『死神』だな」
「なるほど。俺の二つ名にそんな由来があったのか」
「いやなんで当の本人が知らないのよ」
「二つ名なんていつの間にか呼ばれてる者だからな。由来なんて気にしたことなかったし」
「そういう物なのね」
真の二つ名について納得したいばら。次はセイラの二つ名についての解説だが。
「『
「無いね。空くんの言う通りメイド服が一番その二つ名の由来になってると思うよ。……今更だけど、セイラちゃんはどうしてメイド服を着てるの?」
車内の視線を集めるセイラは淡々と疑問に答える。
「マスターの好みです」
その瞬間、全員の視線の先が真に変わる。
「し~ん。どういうことなの?」
「真くん。いくらセイラちゃんが言うこと聞いてくれるからってメイド服を着せるのは、ねー?」
「さすがは真。俺たちが出来ないことを平気でやって見せるな」
「『なるほど。主はメイド趣味』」
車内の視線に真は頭を抑えながら口を開く。
「待て待て。いばら落ち着け。姉川さん勘違いです。空お前は俺を何だと思ってるんだ。ロウガ間違った判断をするな。そしてセイラ、俺そんなこと言ったか?」
珍しく焦ったような真の言葉にセイラはこてんと頭を横に曲げる。
「お忘れですか?私がまだ訓練期間の時に言っていましたよ」
「訓練期間……あっ!」
真は記憶を辿ると、思い当たった記憶を引っ張り出す。
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