第18話 真と空の初任務②


 真と空が任務を受けた一週間後、現在二人はパーティー会場に足を踏み入れている。


「ここが世界中の重役が集まるパーティーか」


 今回の任務の目的は各国の重役の拉致。

 拉致する重役は誰もが国を傾けかねないほどの情報を有しており、その情報を他国に売ろうとしているとの情報を掴んだ。今回の任務はその情報を奪うことが最終的な目標になる。


 月影の存在理由は世界のバランスを保つこと。

 様々な国からの依頼を受け、表向きに対処できない仕事を引き受けるのが月影の役目だ。


「ゆうと兄さま。緊張なさらないように」


 片手に飲み物を持ちながら、空をゆうと兄さまと呼ぶ真。


「あぁ、大丈夫だ。ありがとうゆうま」


 この場では兄弟ということで互いに真をゆうま、空をゆうとと呼んでいる。


「対象は五人。顔は把握している。全員の場所も確認し終えた。黒服も潜入済み。あとは計画通りにやるだけ」


 そんな会話をしている二人のもとに、後ろから一人の男が近づく。


「やぁ、君たちがルナカンパニーの出席者だね」


 その言葉に反応し、二人は後ろを向く。

 なおルナカンパニーとは月影が表向きに運営している会社の名前の一つだ。


「はい。今日は叔父の代わりに出席することになりました。高月ゆうとです。今回はお招きありがとうございます」


「弟の高月ゆうまです。初めまして」


 二人が挨拶する相手は、今回のパーティーの主催者であり、さらに二人が月影の構成員と知っている月影の協力者だ。


「初めまして。一条事務所代表取締役社長、一条和樹いちじょうかずきだ。今日はよろしくね」


 そのよろしくは任務のことに関してのよろしくだ。


「はい。お任せください」


 空が返事をすると一条は満足したように頷き、別の出席者のもとに歩いていく。


「ではそろそろ始めましょう」


「あぁ」


 二人は任務を開始する。



「まずは一人目。対象はあの男だ」


 空の目の先には、ワイングラスを片手に話している四十代ほどの男がいる。


「あれは俺がやろう。すれ違いざまに薬を入れる」


 空の案に真は頷く。


 空は手に液体状の薬が入った容器を手に隠すように持ち、歩き出す。


 そんな空が近づいてるとも知らずに男は話が盛り上がっているのかワイングラスを近くのテーブルに置き話し出す。


(チャンスだ!)


 空はそう思いながらも表向きは平静を装い、男のワイングラスの横を通り過ぎる瞬間に、薬を一滴垂らす。


(よし。あとはあれを飲めば)


 空が薬を垂らし、そのまま何もなかったように壁際に移動して男を見ると、男は話終えてのどが渇いたのかワインを口にする。

 そしてワインを飲んですぐに、男は腹を押さえる。


「うっ、腹が……。飲み過ぎたか?」


 男はホテルスタッフを呼んでワイングラスを渡すと共に、トイレに向かう。

 空はそれを確認するとワインを受け取ったホテルスタッフに近づき耳打ちをする。

 するとホテルスタッフは静かに頷き、男の後を追う。


「上手くいきましたか?」


「あぁ、あの男は黒服が上手くやってくれる」


 男のワイングラスを受け取ったホテルスタッフは黒服だ。

 黒服の役目は月影の任務の補佐、いわば月影の準構成員。

 戦闘任務の後始末からこういった潜入任務での補佐まで多くのことをこなす。


 空はすれ違いざまに薬の入ったグラスの処理と男の拉致を黒服に頼んだ。


「では次のターゲットに移りましょう」


 そう言って二人は会場内を歩き移動する。




 __________


「二人目はあの人ですね」


 二人の目の先には女性と会話をしている男が見える。


「今回は俺が行きます」


 真の言葉に空は頷き、真は男のもとに歩いていく。

 男と話していた女性は真が近づく前に話を終え、別の場所に移動する。


「あの、初めまして」


 いきなり真に話しかけられ、男は驚きながらも真の目線に合わせて話す。


「初めまして。えっと、どうしたのかな?親御さんとはぐれた?」


「いえ。実はおじさんを見て、有名な美食家の方だと思い出したので。あの、迷惑じゃなければこのパーティー内のおすすめの食事を教えてくれませんか?」


 真は月影では見せない年相応の子どもらしい話し方で男と会話をする。

 そんな真の発言に男は笑って手招きをし、料理が並ぶ場所へ移動する。


「いやー、まさか君みたいな小さな子がわたしを知ってくれてるなんて嬉しいよ。今日は妻の付き添いとして来たからいつもみたく食事の話が出来なくて退屈していたんだ」


 真は男の話に適度に頷きながらついていく。

 そして料理が並ぶ場所につくと、早速男がいくつかの料理を皿にとる。


「こんなものだろう。苦手な物があれば避けてくれてかまわないよ」


「ありがとうございます。いただきます」


 真は男から受け取った料理を口に運ぶ。


「……おいしいですね」


「そうだろう!特にその肉を扱った料理はわたしが目をかけている料理人が作っていてね……」


 真が料理を食べている間にも、男は楽しそうに料理について語る。

 それを真は興味があるように、時に質問などをして反応する。


「……ごちそうさまでした。とてもおいしかったです。ありがとうございました」


「うん。わたしも話を聞いてもらえて楽しかったよ!」


 そんな話をしていると、真が行動を起こす。


「あの、すこし食べ過ぎたみたいで、トイレってどこでしょう?」


「あぁ、……子供一人で行かせるわけにはいかないし、一緒に行こうか」


 男は真を連れてトイレまで歩いた。




 ___________


「さて用も済んだし戻ろうか」


 男は手を拭くと、後ろに立っている真に話しかける。


「そうですね。あ、少し待ってください。実は見せたい物があるんです」


 ごそごそと服を触る真に男は、真が子供らしく自分の宝物か何かをを自慢したいのだろうとほほ笑みながら見守る。


「きっとおじさんびっくりしますよ。ちょっとしゃがんでください」


 男は「何かな?」と言われた通りにしゃがみ、真は男の目の前まで歩く。

 そして、ポケットからあるものを取り出し、男に突き付ける。


「え?これって!?」


 突き付けられたものを見た男は驚いて目を見開くが、真はそんなものは気にせずにスイッチを入れる。


「あぁぁぁぁ!!?!?もご!?がががが!?!!?………」


 真がスイッチを入れた瞬間、男に強力な電流が流れた。

 真が手に持っているのはスタンガン。

 さらに電流が流れている間、大きな声を出させないようにわざわざしゃがませて口を塞いで電流を流し、気絶させた。


 完全に気絶したことを確認した真はすぐに黒服に回収命令を出す。


「おじさん。あんたの選んでくれた料理、美味かったよ。どうか次からはくだらないことに手を出さないでくれ」


 真は気絶している男の肩を軽くたたき、会場に戻った。





 _______________


 真が会場に戻ると、先ほどまで男と話していた女性が真に近づいてくる。


「ちょっといいかな?君と一緒に会場から出って行ったおじさん知らない?」


 その女性、おそらく男の奥さんは真に聞く。


「えっと、おじさんなら電話で急用ができたからって外に行きましたけど?」


「そうなの?……あら、あの人から連絡がきたわ。ありがとうね」


 女性はケータイを見て会場の端の方に歩いてく。

 それと入れ違いになるように空が真のもとに来る。


「おつかれさん。……お前が直接やったのか?」


「はい。そちらはどうですか?」


「お前のおかげで黒服と協力して追加で二人確保できた。にしても……」


 空は真を見ると、真は「なにか?」と首をかしげる。


「遠目から見ていたが、結構よくしてもらってたのに自分の手を使うのに躊躇いはなかったのかと思ってな」


 真はそれを聞ききしばらくぽかんとすると、表情を戻して淡々と話し始める。


「確かに優しくしてもらいましたが、そんな一瞬の善意、一生に残るであろう悪の前には無意味ですよ。それにこの程度で心が動いていてはとても訓練を乗り越えることは出来なかったでしょう?」


 その言葉を聞いた瞬間空は、今の真が噂で聞いていた真の姿と重なった気がした。


「お前、ほんとに子供らしくないな。うちの妹とは大違いだ」


「妹さんがいるんですか?」


「あぁ、ちょうどお前と同じ歳のな。っと今はそんなことを話してる場合じゃないな」


「はい。対象はあと一人。あの人ですね」


 二人が対象の位置を確認した瞬間、会場内の電気が消え真っ暗になる。

 いきなりの出来事に参加者たちがざわめいていると、会場の前の方の電気がつき、そこに立つ一人に光が集中する。

 立っているのはパーティーの出席者一条和樹。


「みなさん!パーティーは楽しんでいただけてますか?みなさんにもっと楽しんでいただくため今からビンゴ大会を行います!」


 一条の言葉と共に、会場内の明かりがつき会場にビンゴの景品と思われる様々な種類の物が運ばれる。


 重役が集まるパーティーなことだけはあり、さすが景品はどれも豪華で中には高級車の鍵などもあり、重役たちはウキウキでビンゴカードを受け取る。


 そんな中、


「ゆうと兄さま。対象が居ません」


「え?そんなバカな……」


 二人は拉致すべき最後の一人を探すが、どこにも見当たらない。


「そうだ!黒服なら見たんじゃないか?」


 二人は出入口付近にいたホテルスタッフをしている黒服に声をかける。


「はい。指示通り外に行かせましたが?」


「指示だと!?いったい誰の……」


「ゆうと兄さま、今は対象を」


「……そうだな」


 二人は急いで会場の外に向かった。



 ________


 二人は真っ暗なホテルの外に出る。


「いたぞ!」


 ホテルの外には足をもつれさせながら走っている太った男がいる、彼こそが最後の対象だ。

 それを見た瞬間、空が走り出す。


「ひっ!?」


 男は空に気づき、声を上げながら必死に走る。

 だが月影で鍛えている空から普通の人が逃げられるわけがなく、わずか数秒で空は男に追いつく。

 そして捕まえようとした瞬間、


「っ!?……なんだ!?」


 銃弾が空の腕をかすった。

 そのせいで一瞬足を止めた空に向かって男は叫ぶ。


「ははは!貴様の狙いなど知っている!お前らしっかり足止めしろよ!」


 暗闇の中から男に雇われたであろう複数の男たちが現れる。人数は十人に満たないほど。だがその全員が空に銃を向けている。


「くそっ、はめられたのか!」


 空は懐から銃を取り出す。


(そういえば真は……)


 空は姿の見えない真のことを考えようとするが、すぐに戦闘にはいり頭を戦闘に切り替えた。





 _________


「はぁ、はぁ」


 男は暗い道を走る。

 後ろでは銃の発砲音が聞こえるが、男の目の前には扉の開いた車が見えている。


(あれに乗れば、逃げ切れる!)


 その車がすぐ目の前に見えた瞬間、男の視界に一人の子供が映り込む。


「こんばんは」


 一人の子供、真は軽い口調で夜にふさわしい挨拶をする。


「はぁ、はぁ。そこをどけ!」


 だが男には挨拶を返す余裕などなく、相手が子供だということも忘れて叫び、横を通り過ぎようとする。


「ぐはっ!?」


 だが逃げることを真が許すはずがなく、男は足を掛けられ無様に転ぶ。

 倒れたまま真に背中を踏まれ、スタンガンを当てられる。


「あ、あぁぁあああ!!!?!?………」


「よし。あとは……」


 真は男が気絶したことを確認すると、すぐさま男が乗るはずだった車に飛び乗り、運転手にスタンガンを突き付ける。


「ひっ!俺は何もしてな、ああぁぁぁぁ!!?!………」


「悪いな、恨むならお前を雇った奴を恨んでくれ」


 真は車の鍵を抜き、運転手と男を車に押し込む。そして黒服に連絡をして回収を命じる。


 そんなことをしていると、ところどころ服が破れ、傷を負った空が近づいてくる。


「そっちは終わったか」


「はい。足止めの足止め、ご苦労様でした」


「お前、分かってて先回りしたのか……」


 二人がそんな会話をしていると空の後ろから人影が現れる。


「やぁ二人ともおつかれさま」


 声の主はパーティーの主催者一条和樹。

 あのパーティー内で月影以外に今回の任務を知っていた唯一の人物だ。


「一条さん。お疲れ様です!今回は一条さんのご協力のおかげで上手くいきました。ありがとうございました!」


「気にしないでくれ。私と月影の仲だ。ふむ、見た所怪我をしているね。かすり傷でも放っておくのはよくない。見せてみなさい」


 一条はそう言いながら懐から何かをだそうと手を入れる。

 それを見て、消毒でも持ち合わせてるのかと思いながら空が近づく。


 空が傷を見せるのに十分な距離まで近づくと一条の手が止まる。

 そして一条が何かを取り出そうとした瞬間、


「空、伏せろ!」


 真が叫んだ。

 真の言葉に、空は反射的に体を地べたに伏せる。

 そのワンテンポ後に、空の上を銃弾が通る。

 真の言葉が無ければ空の心臓は完璧に貫かれていただろう。


「なっ!?どうして……」


 空は銃弾を放った銃を持つ、一条を見る。


「どうして、か……」


 一条は空に銃口を向けると、空は転がるように移動し一条に向けて銃を構える。


「今回の任務で得られる情報が、とても魅力的だったからかな?それに、そろそろ月影と手を切ろうと思っていたしね。すでに別の組織とも話がついている」


 一条は銃口を空ではなく、自分を見ている真に向ける。


「さて、次は君に聞きたいな。どうして私が彼を殺そうとしたことが分かったのか、教えてくれるかな?忍田黒仁の甥である開化真くん」


「真が、トップの甥?」


 空は突然告げられた事実に驚き真を見る。

 その真は驚く素振りも見せず、ただ淡々そしてこれまで使ってきた敬語の一切を使わずに話し始める。


「気づいたのは黒服の言葉だ。あの黒服は指示だと言った。指示ということは月影からの指示。だが、それなら俺たちにもその指示がこなければおかしい。では黒服に指示を出したのは誰か、それは俺たち以外のあの場にいた月影の関係者つまり一条和樹、あなただ」


 真は一度呼吸を置き、さらに説明を続ける。


「さらに逃げた男は俺たちの計画を知っていると言った。ではそれはどこから知られたのか、この計画は月影の上層部と俺たち、そして一条、この限られた者しか知らない。あんたが裏切った証拠はだいたいこんなもんだ」


「なるほど。そういうことだったのか……」


 空は真の話を聞き、これまでに抱いていた違和感を解消する。


「そしてこれだけのことをやって成果がありませんでした。それであんたが終われるはずがない。あんたは俺たちを殺してでも目的は果たす。空を殺そうとした理由はこんな所だろ?」


 真の一から十までの説明を聞き、一条と空は思わず固まってしまう。

 そしてしばくし、一条が笑い出す。


「ははは!そうか、そこまで気づかれていたか!驚いたよ、いくら忍田黒仁の甥とはいえ、子供にそこまで気づかれているとは思わなかった」


 真は笑う一条の言葉を聞きため息を吐く。


「子供、子供って。お前らは自分の目に映るものを信じすぎる。だから足元をすくわれるんだ」


 それは一条だけでなく、空にも向けられた言葉だったのだろう。

 ただ当の空は先ほどからの真の言葉遣いと言葉にただ呆然としているのでその言葉が自分に向けられているとは気づいていない。


「そうか。だが本当に足元をすくわれるのは君たちの方だ」


 一条が手を空に上げ指を鳴らす。するとぞろぞろと男たちが現れる。

 人数としては、十人以上先ほどの男が雇った者たちよりも多い。

 その全員が、真に向けて銃を構える。


「君の言う通り、私は君たちを殺してでも今回の任務を成し遂げなくてはならない。……なにか遺言はあるかい?」


 一条は銃口の先にいる真に向けて言う。

 そんな絶対絶命な状況で、真は懐に手を入れながら敵を見る。


「空!その場で伏せていろ。俺がやる」


 声をかけられた空のみならず、その場に居た全員が一瞬ぽかんとする。

 そして真が懐から黒く丸い物取り出し、一条たちに投げつけた瞬間、


「あれは……、っ!?伏せろ!!」


 ドカンッ!!


 と、黒い物体は派手に音を立てて爆発した。

 真が投げた物は手榴弾。

 しかも普通の物よりもかなり威力を増したものだ。


 真は手を止めることなく、次は別の物を投げる。

 それは地面に落ちた瞬間に煙を撒く、発煙弾はつえんだん


「ごほ、ごほ。なんだこの煙!?」


「吸うな!毒かもしれない!!」


 この時点で男たちは大混乱。

 その中に真は単身で突っ込んでいく。


「ぐほっ!?」


「なんだ、がっ!?」


 煙の中銃を撃つわけにもいかず、だが真は近くの人影を容赦なく殴るればいいので一切の反撃を受けずに一方的に男たちをぼこぼこにしていく。


「くっ、こうなれば仕方ない!全員動くなよ!」


 一条はこのままではやられると考えたのか男たちに当たるのも気にせずに、発砲をしようとする。

 だがそれよりも先に煙が晴れる。そしてその場に立っているのは真と一条のみ。


「バカな……あの一瞬でこの人数を倒したのか!?」


「驚いてる暇はないぞ。最後はあんただからな」


 一条は接近してくる真に向けて銃を撃つが、小さく素早く動く真には当たらず、真の姿はすでに目の前。


「くっ、くそおぉお!!!!」


 一条は最後のあがきか超至近距離の真に銃を向けるが、


「この距離なら、こぶしの方が速いだろ」


 一条は引き金を引くより先に、その身にこぶしを叩きこまれその場に倒れる。


「ぐっ!?あっ………」


「終わったな。少し人数が多くなったし、黒服の追加を頼むか」


 真は連絡を取ると、黒服からすぐに回収に向かうという返事をもらい空のもとに近づく。


「あー、もう敬語はいらいないよな?」


 空はいま起こったことに気を取られ、言葉を失ったまま真の言葉に頷く。


「とりあえず立てよ。銃もしまえ」


 空は言われ自分が銃を構えた姿勢であることを思い出し、言われた通りに銃をしまい立ち上がる。


「おい、大丈夫か?さっきからぼーとしてるが、頭でも打ったか?」


「お前は、」


 真が心配し、空の顔を覗き込むと空が口を開く。


「お前は何者なんだ?どうしてそんなに強いんだ?」


 真は「突然どうしたんだ?」と思うが、空の目を見るとすぐにそれを真剣に聞いているというのを感じる。

 空は先ほどまで見て、聞いて、助けられた、真の戦闘力と洞察力その理由を欲しがっている。


 何がお前をそこまで強くしたのか、と聞いている。


「俺は、俺の目的のために力が必要だ。だから手に入れた。もう二度と、失わないように。そして、失ったものを取り戻すために」


 その瞬間、空は初めて真という人間を見た。

 それを語る真の眼は黒く、暗く、どこまでも深い闇が広がっている、噂に聞いていた真という人間と目の前の真が完全に重なった。


(こいつはいったいどんな経験をしてきたんだ……)


 真は「もういいか?」と話を終え、男たちの武器をはぎ取っていく。

 空は真に様々な思いを抱きつつも、無言で武器をはぐ手伝いをしていくのだった。


 この初任務こそが二人のファーストコンタクト。

 空と真が同期として対等になった日だ。

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