第15話 学校調査
真が異世界転移に巻き込まれたその日、真を見送ったセイラは家の掃除をしていた。もちろん自分の、ではなく真の部屋のだ。
「こんなものですかね。しかし」
セイラは部屋の中を見渡す。
「本当に生活に必要最低限の物しかありませんね。知ってはいますが」
セイラは本棚やベットの下などを探り、ため息をつく。
「それにやましい本なども一切ない。マスターはちゃんと男の人なのかたまに心配になります」
掃除を終えたセイラはお茶とお茶請けを用意しサブスクでドラマを探す。
「今日は何を見ましょう」
セイラは恋愛ドラマから時代劇、サスペンスにホラーまであらゆるジャンルに精通している。
「……これにしますか」
セイラが今回選んだのは恋愛ドラマ。
そのドラマはセイラのお気に入りの、メイドの主人公とその主人である男との恋愛ドラマだ。
だがその内容は普通の恋愛ドラマではなく、男を狙う刺客からメイドの主人公が様々な武器を使い戦うアクションバトル恋愛ドラマだ。
「いい動きしてますね。私もこのような技が使えれば……」
そうしてドラマを見ていると時計の針は十二時をさす。
「そろそろお昼にしましょうか。何かありましたっけ?」
セイラはキッチンに向かい、冷蔵庫の中にある食材をいくつか手に取り料理する。
「余り物しかないですし、こんなものですね。食べ終わったら買い物に行かないと」
セイラは昼食を食べ終え、近所のスーパーのチラシを見る。
「さて、今日の晩御飯、マスターは私の好きな物でいいと言っていましたが……」
そうしてセイラがチラシと睨めっこをしていると、
「!?」
突如セイラは何かを感じ取った。
いや、正確には感じていた物が消えたというべきだろう。
普段感じている繋がりが消えた。
それすなわち、
「マスター!」
思うが早く、セイラは真に連絡。
今の時間であれば学校は昼休み。本来なら連絡もすぐに繋がるはずだが、一向に連絡が繋がらない。
連絡が繋がらないことを確認すると共に次は月影トップである忍田黒仁に連絡を取る。こちらはワンコールで連絡がつく。
「やあ、レーショウ。君の要件は分かっている。準備を整えたら真の学校まで来てくれ。あぁ、あと真の荷物なども一緒に……」
セイラは黒仁が言い終わるの待たずに電話を切った。
そして月影開発部特性のバックに必要な物を詰め込み、部屋を出る。
そのままセイラはマンションを出て学校に向かう、ということはせず、逆にマンションの屋上に向かう。
そして学校のある方向を向き、セイラは勢いをつけて、
「マスター、今行きますよ!」
跳んだ。
マンションから隣のマンション、さらにそこから民家だったりビルだったりと、次々と建物の上を移動し、最短ルートで学校に向かった。
________________
「着きましたね。すでに生徒は居ないみたいですが」
セイラは生徒が誰も居なく、警察の恰好をしている月影の構成員が囲っている学校に近づいていく。
「悪いがここから先は関係者以外立ち入り禁止で……」
セイラは途中で構成員から止められる。
そんなセイラは一秒でも早く真がどうなったかを知りたいという気持ちから、多少の苛立ちを見せながらバックから一枚のカードを取り出す。
「月影異能部隊所属のセイラ=レーショウです。通してもらえますね?」
「異能部隊!?し、失礼しました!どうぞ、お通りください」
セイラが出したのは月影所属を示す身分証だ。それを見た構成員は態度を急変させ、セイラを先に通す。
セイラはそんな構成員のことをすぐに頭から消して真の教室に直行した。
「マスターの教室は、……ここですね」
セイラは教室に入るが、中には誰も居ない。
普通ならば調査をしている最中ではないかと思っていると、後ろから人の気配を感じ、後ろを向く。
「やぁ、レーショウ。さすが早いね」
「……トップ」
セイラに声をかけたのは月影のトップである忍田黒仁。
黒仁は教室に入り、セイラが疑問に思っているであろうことを説明する。
「君が来るまでこの教室の調査は待っていたんだ。きっと君が一番に確かめたいと思ったからね。真の席はあそこだよ」
セイラは軽く会釈をし、黒仁が指した席に向かって歩く。
「ここがマスターの」
セイラは椅子を引き、真の席に座る。
「これがマスターが見ていた、マスターの日常の景色」
セイラはしばらく座っていると、満足したのか真の席を調べ始める。
そこで机の中に入っている箱とノートを見つける。
「これは、お弁当箱とノート?」
セイラは今日の朝真に渡した弁当箱と数学と書かれたノートを取り出し、ノートをパラパラとめくる。
しばらくは普通に授業で使われているであろう数式などが書かれており、それが終わるとしばらく白いページが続く。そうしてめくっていくと白いページの中の1ページに何かしらの書き込みがされている。
「これは、暗号ですね」
セイラは頭の中に入れてある暗号の解き方を浮かべ、ノートの暗号を瞬時に解読をする。そしてセイラは解読した文章を黒仁に聞こえるように口に出して読む。
「「異世界召喚に巻き込まれた。一人では脱出は不可能。俺は異世界から帰還を試す。いばらのことは面倒を見るが、クラスメイトまで手が回るかは分からない」だそうです」
「なるほど。……レーショウ、なんか不満そうな顔だね」
黒仁の言葉に、セイラはあからさまに低いトーンの声で返す。
「そうですか?だとすればそれはマスターがピンチの時にそばにいることが出来なかった私自身にイラついているからでしょうね」
黒仁はそんなセイラの言葉を聞いて(それだけではないだろうな)と思うが、思うだけにとどめる。
「真からの伝言はそれだけかい?」
「はい。他にそれらしい物は無いかと………!」
セイラは黒仁に答えながらノートをめくると不意に手を止める。
そしてしばらくノートを眺めていると、笑みを浮かべてノートを閉じる。
「レーショウ?」
「いえ。なんでもありません」
セイラは表情を戻し、ノートと弁当箱を手に席を立つ。
「じゃあここは他のみんなに任せて行こうか」
「はい。マスターの元に」
セイラは凛とした足取りで教室を後にする。
なお手を止めたページにはこう書かれていた。
【弁当美味かった、次も楽しみにしてる】
_____________________
セイラは黒仁に言われて学校の駐車場に向かった。
「確かトップはマスターと面識がある人を集めたと言っていましたが……」
駐車場には月影の物と思われる車が何台も止められており、目当ての車を見つけるのは難しいと思っていたが、
「そこのメイド服の子ー!こっちだよー!」
セイラが見つけるよりも先に相手の方がセイラを見つけて声をかける。
セイラが声のする方を見ると、声を出しながら手を振る二十代半ばほどの年齢のショートカットの女性と、運転席に座ってタバコを吸っているこちらも同じく二十代半ばほどの仏頂面の男性が見える。
セイラはその二人の方に向かい、丁寧にあいさつをする。
「初めまして。月影異能部隊所属、セイラ=レーショウです」
そんなセイラの挨拶に合わせ二人も同様に名乗る。
「初めまして。月影技術開発部所属、
「マスターのお姉さん?」
セイラは居ないはずの真の姉だと言う姉川の言葉に?を浮かべる。
「私の話は後にして次はこっちの自己紹介」
姉川にそう言われ、タバコを車内用灰皿に捨てセイラの方を向く男性。
「俺は月影実行部隊所属、
セイラは空に言われた通りいろいろと二人に聞きたいのを抑え、車に乗り込んだ。
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