第14話 真といばらの話し合い
「う、うぅん……。ここは?」
「おはよう。いばら」
いばらは目をこすりながら、冷たい地面の上から身体を起こす。
それと共にいばらの身体にかけられていた上着が落ちる。
「あ、真。おはよ」
いばらは上着を持ちながら真に近づく。
「これ真の?」
「あぁ。……よく眠れたか?」
真は差し出された自分の上着を着て、整備していた銃を懐にしまう。
「ねぇ、真」
「なんだ?」
いばらは真剣な目で真を見る。
「説明してほしいの」
「……それは、俺の能力のことか?それとも銃のことか?」
真はそんな風にはぐらかすが、いばらの目をみて説めして欲しいことがそんなことではないということは伝わっている。
「全部。あんたの能力も、なんで銃を持ってるのかも、それとお父さんのことも、全部説明して」
いばらの言葉に真はすこし考えた素振りを見せる。
「思い出したのか?」
いばらはその真の反応から、いばらは確信をする。
「やっぱりあの夢は本当にあったことだったのね。それで、説明してくれるの?」
真はいばらの言葉を受けしばらく考えると、意を決したように口を開く。
「そうだな。こんな状況だし、いずれ説明は必要するつもりだった。それにお前には知る権利があるからな。説明するよ」
真は過去にあったこと、いばらの父であり月影のトップである黒仁のこと、そして月影と異世界のことを知っている限り説明した。
「月影、お父さんと真がそんな仕事してたなんて。それに叔父さんと叔母さん、行方不明って聞いてたけどまさか異世界になんて。昔からあんたはどこか周りの人より大人びてたし」
いばらは真から受け取った事実を頭の中で整理しながら、昔から感じていた違和感を解消していく。
そんな中で一つ気になったことをを真に聞く。
「ねぇ、あんたの能力もう一回説明してくれる?」
「能力を?まぁいいが。俺の能力は真価解放」
【真価解放】その異能の能力は主に二つ。
一つ目は特定の相手の自分に対する思いを受け取り、青白い光によって自分と相手の能力、主に身体能力を上昇させる。他には思考能力や異能力も強化される。
二つ目は真価武装。
これは真価解放の付属のような力であり、謎の光を収束させて武器を作る能力。
その形や力は相手の思いや心によって形を変え、その武器の能力は相手の本性、真価を映した能力になる。
他にも細かい能力があるのだが、主には上の二つが【真価解放】の能力だ。
「こんな感じだな」
真の能力解説を聞き、いばらはどこか怒ったような眼を真に向ける。
「つまりあんたの能力は一人じゃ使えず、使うには相手が必要なのよね」
「そうだな。それがこの能力のデメリットみたいなものだ」
「ということは、あんたにはその能力を使うための相手がいるってことよね」
「そうだな。相手がいる……え?」
いばらは、相手がいることを肯定したということを聞き逃さずさらに質問を重ねる。
「そういえばあんたの家の側を通るときに、マンションの中に入るメイド服を着た銀髪の女の子を見かけたことがあるんだけど?」
「……見間違いじゃないか?」
「あんたの家に学校のプリントを届けに行ったとき「マスター、マスター」ってまるでとりつかれたように叫ぶ女の声が聞こえたんだけど?」
「…………空耳じゃないか?」
「あんたと仲良さそうにマンションの中に入っていくメイド服を着た女の子を見たんだけど?」
「………………気のせいってことに、出来ないか」
「出来るわけないでしょ!それで、その子とはどんな関係なの?」
いばらは真に「説明して!」と詰め寄って行く。
そんな状況で真は、
(面倒だな。いや、正確には絶対面倒なことになる。初めてセイラにいばらのことを話した時もこんな感じだったし、その時も面倒だったし。けど、)
真はいばらの目から伝わる「絶対に話させる」という強い意志を感じため気をつく。
(まぁ、下手なことを言わずに説明すればいいだろ)
そんなことを考え、いばらに一旦落ち着けと手で指示をして落ち着かせる。
「そのメイド服の子は月影に所属してる子だ。名前はセイラ=レーショウ。そのセイ、レーショウは同じマンションに住んでるんだ。それで俺が家事が苦手だから善意で手伝いに来てくれてるんだ」
セイラはあくまで善意で手伝ってくれるだけ、という説明を押し通す。
そんな説明にいばらは納得はいってなさそうだが、ひとまず納得するといった形で落ち着いてくれた。
そしていったん月影関連の話を終え、現状についての話に移る。
「いろいろと驚くことはあったけど。これからどうするの?私たちはダンジョンのかなり下の方にいるわけだけど」
「そうだな落ちてきた穴から戻れれば楽だったんだが、すっかり塞がってるからな」
すでに真といばらが飛び降りた穴だけでなく、ミノタウロスが開けて降りてきた穴もきれいに塞がっている。
「いくら月影でもさすがにダンジョンまで来るのは時間がかかるだろうしな」
「え?ちょっとまって、その言い方だとまるでお父さんたちがこの世界にこられるみたいだけど?」
いばらは真の当然といった風に言った言葉に反応し驚く。
「言ってなかったか?月影では現在、異世界の調査をする体制を整えてる最中なんだ。俺といばらが異世界転移に巻き込まれたから多分その調査体制もかなり急ピッチで終わる。ダンジョンから出たら元の世界に戻ることが出来ると思うぞ」
そんなあまりにも驚くべき情報のい連続により、いばらはもはや驚くことが出来なくなっている。
「そう、なの?でもさすがに私たちの場所まで分からないわよね?」
「それも問題ない。俺にはこれがあるからな」
真はそう言いながら左手の薬指にはめられた指輪を見せる。
「これはいわゆる発信機なんだが、それも世界を超えても機能する物で……いばら?」
真が説明していると、いばらは驚きのあまり固まっている。
そんないばらをしばらく見ていると、
「け、」
「け?」
「結婚指輪じゃない!!」
と大声叫ぶ。
驚き、固まっていた理由は月影の技術力にではなく、真が左の薬指に指輪をはめているからだったらしい。
「あんた、左手の薬指に指輪をはめるって、意味わかってるの!?」
「いや、そういうのじゃないから。だから落ち着けいばら」
そんな真の言葉でいばらはなんとか落ち着き、深呼吸を繰り返し心を落ち着ける。
「とりあえず上に繋がる道を探すか」
「……うん」
そうして二人はダンジョン脱出のため歩きだした。
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