第7話 異世界の情報
スキルの確認が終わった勇者たちは各々割り当てられた部屋で休んだり、友人の部屋に赴いたりと基本的に部屋で過ごしている。
そんな中友達のいない真はじっと部屋で過ごす、などというわけは無く城の中を動き回っていた。
「この部屋も何も無しか」
真は次から次へと城の部屋を確認していき、大量の本がある部屋に行き着いた。
「ここは、書庫か。ようやく当たりだな」
真は部屋に誰も居ないことを確認して中に入り、本を調べ始める。
「なるほど。……」
真は本を手に取ってパラパラと捲っては戻し、また別の本を取って捲っては戻しを繰り返した。
ものの数分で多くの情報を頭に入れた真は、本を棚に戻して自分の思考を回し始める。
(まずは情報の整理だな)
1.スキルは原則一人一つ、神から授かる物。得る能力は人によって違う。(【剣術】や【水魔法】他にも【鑑定】、【鍛冶】、中には【料理】のような能力もある)
2.ほとんどの者が授かるスキルは、前者のような戦闘に役立つものよりも後者のような戦闘向けで無い物の方が多い。
3.だがクラスメイトのほとんどは戦闘に活用できる能力を授かっており、姫はその中でも【魔法】と名の付く能力を気に入っている。
4.俺の【真価解放】は何故か水晶に反映されず水晶が壊れた。
「こんな所か。次は……この鍵のかかった本棚だな」
真は数ある本、その内の一つの本を奥に向かって押す。
すると本棚が移動し、新たな鍵のかかった本棚が出てくる。
「異能、スキルで鍵がかけられている可能性も考えたが、どうやらその心配なさそうだな」
真はポケットから針金を取り出す。
そして針金を鍵穴に差し込みしばらくカチャカチャといじると、ガチャンッと音が鳴り鍵が開く。
「よし。思ってたよりも簡単に開いたな」
真は警戒を解かずに本を取り出し、先ほど同じようにパラパラと本を捲り内容を頭に入れる。
なお、真は簡単に鍵を開けたが一応ここは国の書庫。そのなかでも鍵のかかった特に重要な書物が保管されている本棚だ。
そう簡単に開けられる物ではない。それでも真が解錠することが出来たのは、やはり真が世界最高の裏組織月影で培った能力があるからだ。
やがて真は全ての本を頭に入れ終え、再び思考の海へ入る。
(これらの本によると、人族はかなり長い間から魔人族と戦争をしている。だが最近はそこまで激しい争いではなくほとんど休戦状態。そんな中で俺たちをわざわざ異世界に呼んだのは魔人族との戦争とはまた別の理由があるはずだ。それに、)
真は国の歴史が書かれた本を見る。
「異世界召喚。この国で過去にも行われていたようだが、それでも一番新しいのが俺たちを除いて数百年前。だとすると俺やセイラが巻き込まれたのは別の国によるものか?」
(だとしても人族であれば何かしらの記録はされるはず。だが何もないとすると可能性は、……この書庫でない場所に記録されているか。そもそもこの世界と俺たちの世界との時間軸がずれているか。はたまた別の種族である魔人族や亜人族の仕業か)
どんどんと思考が深くなっていく中、廊下の方からカツ、カツ、と音が鳴る。
「!?……足音がする」
真は思考を一度中断し、書庫を元の状態に戻し素早く退室する。
そして自分の部屋に向かう途中で青髪の美少女、姫と出会う。
「あら、勇者さま。こんな所でどうされたのですか?」
目が会った瞬間、姫の方から話しかける。
普通であればなんてことはない会話の始まりだが、真の耳にはここでうろつく者を疑う尋問に聞こえる。
真はそんな尋問に自分を装いながら返答していく。
「実はなかなか眠れなくて。こうして少し散歩を」
「そうでしたか。ですけど無理もありませんね。突然こんな所に連れてこられたんですから。ですが私たちはあなた方が魔人族と戦うと言っていただき本当に感謝をしています。もう夜も遅いのでそろそろお休みになられたほうが良いのでは?」
「そうですね。お心遣いありがとうございます姫様。そういえばお名前聞いていませんでした。自分は
「そうでしたね。私の名前はシオン=リフレイトです。では、おやすみなさい」
二人は短い自己紹介だけを済まし、最初の対面を終わらせたのだった。
_____________________
王国の姫であるシオン=リフレイトは真との対面を終えた後に書庫に入った。
「さて、なんとか勇者召喚は成功しましたね。それになかなか効いているようですし、魔族との戦争をする準備も順調。明日からの訓練は騎士たちに任せればいいでしょう」
シオンは独り言をつぶやきながら数ある本の一つに近づき、その本を奥に向かって押す。すると本棚が移動し新たなる本棚が出てくる。
「さて、鍵を開けないと」
姫はポケットから鍵を取り出し本棚にかけられた鍵を開ける。
そして中にある本を手に取る。
「あれ?なぜでしょう、誰も触れることはできないはずだけど、でもこの本確実に私以外の人が触っている。この本棚はお父様ですら開けることは出来ない物なのですが……。まさかあのすれ違った勇者、たしか開化真でしたか。もしかして彼が?」
シオンは本を捲りながら思考を回転させ続ける。
「だとすると少々面倒ですね。見たところ彼には薬が効いていなかったようですし、これは対処が必要かもしれませんね」
シオンは苦しそうな顔をしながら本を閉じ、隠し本棚の奥に手を置く。
「『我、王の血を引く者』」
言葉を唱えると、足元の床が開き、その中にも本が収納されている。
「こっちは無事か。でも調べられる可能性もあるし」
そこに収納されている古びた本を手に取り、自室に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます