第6話 スキル確認
姫が部屋に入り早速説明が行われたが、少し長いので整理して話そう。
この世界は主に三種類の種族がいる。
一つ目は人族。真たちを召喚した姫たちや騎士などがこれに当てはまる。
人族は主に王国、皇国、帝国の三カ国に分かれており、真たちを召喚をしたのは王国。真たちが現在居る場所は王国の王城だ。
二つ目の種族は人族と長年敵対をしている魔人族。
人族と似た見た目を持つが、その力は人族よりも強く性格は残忍な種族。
三つ目の種族は亜人族。
これは人族に獣のような耳や尻尾が生えた獣人、そしてエルフやドワーフなどが当てはまる。
そして王国が真たちを召喚した理由は、魔人族との戦争に勝つためだった。
「どうか人族の敵である魔人族を倒すため、我々に力をお貸しください!」
姫は頭を下げる。
だがこのお願い、健気なお姫様が頼むにしてはかなり物騒なお願いだ。
仮に月影がこんな依頼をされても受けるはずがない。受けるにしてももっと情報を聞いてからだ。なので月影異能部隊隊長、『死神』である開化真はこの
だがこの場に居るのは『死神』では無く、ただの高校生の開化真。
そして決定権はクラスカースト外の真には無く、謎の薬を盛られたクラスメートが持っている。
「お願いします!勇者様!」
さらに綺麗なドレスを着た美少女が上目遣いで手まで握られてお願いしてきてる。
そんなもの、結果は見えている。
「もちろんです!お姫様がこんなにお願いしてくれてるんだ。みんな、助けてあげよう!」
「「おおー!!」」
一人のクラスメイトの言葉に、他のクラスメイトたちが賛同する。中には怖いくらいに強く賛同している者もいる。
(これは薬の影響か?となると、思考、精神に干渉する系統の薬だったか)
真はクラスメイト達の異常な反応を見て薬の予測を立てる。それに加え、姫の所作を見る。
(ずいぶんと手馴れているな。言葉、所作、あらゆるものを使っている。相手の感情を引き出のが上手い。薬を盛ったことからも、人を操るのは初めてではなさそうだな)
姫に対する警戒のレベルを一段階上げる。
そんな中、薬による効果なのか妙なテンションで盛り上がっているクラスメイト達。
「忍田さん、頑張ろうね!」
「えっ、う、うん。そうだね?」
だがその薬も個人差があるようで真の従兄妹であるいばらにはあまり薬が効いていないようだ。
「勇者様方……。ありがとうございます!では、こちらの部屋に移動してください。こちらで、勇者様たちの力を確かめます」
嬉し涙をこぼす姫に連れられ、真たちは別の部屋に移動した。
_____________________
移動した場所は中心に水晶が一つ置かれた部屋。
「この水晶に触れることで、勇者様が神様から授かった力を調べることができます」
姫は「触れてみてください」と催促する。
真は内心「そんな怪しいもの誰が触るか」と思うが、クラスメイトはホイホイと水晶の前に並んで触れていく。
「よし俺の番だ!」
意気揚々と水晶に触れたのは最初に姫に賛同した男子。クラスでもカーストが上の男子だ。そんな彼が水晶に触れると【剣王】という文字が現れる。
「すごいですね!【剣王】その名の通り剣の王。最強のスキルの一つです」
姫が褒めると、剣王の男子は顔をにやけさせながらクラスメイト達と喜び合う。
だが真はそんな雰囲気に似合わずひたすらクラスメイト達の能力を考察し、暗記している。
(【剣王】姫の説明が雑過ぎて詳しくは分からないが、名前的には剣の扱いが上手くなるとかそんなところだろう)
クラスメイト達は次々と水晶に触れ、次はいばらの番になる。
「触ればいいのよね?」
いばらが水晶に触れると現れた文字は【治癒】。
「【治癒】ですか……。その名の通り治療をすることが出来る能力ですね。サポート向けではありますが、よろしくお願いしますね」
姫は微笑みながら、いばらに言う。
真はその姫の顔に違和感を覚える。
(あの顔、これまでは作り笑いではあったがあの顔は少し違ったな。最初【治癒】の字を見た時、喜んだような、でもなんか複雑な表情だった)
その後もクラスメイト達が水晶に触れるが姫は全員を褒める。
(これまで見た中だと【魔法】と名の付く力が姫に印象がいいな。まあ俺もそういう力が一番気にはなるが……)
そして最後、ついに真の番になる。
(俺の場合だと【真価解放】が出るとして、異世界転移に巻き込まれたのは二回目だ。だとすれば能力が二つ出るのか?これまでに二つ能力を持っていた奴は居なかったが……)
そんな風に考えながら、水晶の前まで来る。
一応他の生徒や姫の様子を見て、水晶に害がなさそうであることは確認済みである。
そして水晶に触れた瞬間、
バリンッ!
と水晶が二つに割れる。
「は?」
真もさすがに水晶が壊れるのは予想外で思わず声が出てしまった。
「えっと、これまでの測定で水晶に負荷が掛かっていたのかもしれませんね。すぐに新しい物を持ってこさせます」
そうしてすぐに、騎士が新しい水晶を持ってくる。
「新しい水晶です。さぁ、どうぞ!」
新しい水晶である故、真は警戒をしながらも水晶に触れる。
そして水晶に触れた瞬間、
バリンッッ!!!
と水晶が先ほどより大きい音を立ててバラバラに割れる。
「え、えぇ……」
もはや真に水晶に力を確かめさせる気が無い水晶に、全員が引く、もはやドン引きだ。
「えっと、これは……」
姫は困りながら真を見る。
そして、
「測定不能ですね!ですが、一緒に頑張りましょうね!」
姫は笑顔で真の手を取る。
そんな姫を、真は冷たい眼で見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます