エリー.ファー

 クリスマスがやってきて、また遠ざかっていった。

 次のクリスマスが待ち遠しい。

 そう思ったが。

 待ちきれない。

 さて、クリスマスを錬成するしかない。

 まず、クリスマスとは何でできているか、ということだ。

 赤と緑。

 これで間違いない。次に何が必要なのかと考える。頭を使ってクリスマスなどと名のついた幸せを思い浮かべるのは至福と言える。

 そうだ。赤い服と白いふわふわと、おじいさんだ。

 つまりは、サンタ。

 年老いた赤い不審者である。

 ということはソリも必要になるし、プレゼントも必要になる。

 サンタをあそこまで分解したなら、ソリは木材から、プレゼントは箱と包装紙とリボンを分けて考えるべきとの意見も分かるが、ここは無視しよう。話が先に進まない。

 というわけで練成開始。多くの人が見守る中、やろうと思ったが大きな失敗をしてしまったら被害がどれだけのものになるか想像もできない。ここは、私一人で行うというのが筋というもの。結局、誰も彼も成功を見たいだけで、そこまでの過程など、その成功に魅入られたオタクたちにとってコンテンツになるだけなのだ。

 無意味だ。

 そういうことに時間を使うわけにはいかない。

 私は目の前で発生する、この不思議な事象に前のめりになるので忙しいのだ。

 何かが生まれたような気がした。

 気がしただけだった。

 煙と少しだけ硫黄の香り。

 以上。

 練成とは一体なんなのか。

 期待し過ぎたということならば、反省はする。しかし、それだけだろうか。自分の知らない道や鏡を割って生きていくのは成功からは程遠いのではないか。

 練成など日常的に行うものではない。皆、現実に存在することすら知らないのではないだろうか。

 大抵は漫画だ。そして、バトル漫画だ。金髪で背が低くて、体の大きい弟がいるのだ。兄弟は非常に仲が良く、しかし、非常に暗い過去を背負っている。

 それがまた練成というものの価値を上げるのだ。

 ドラマチック。ファンタスティック。ファナティック。プラスチック。

 人工的だ。

 ここにあるのは本当のドラマだ。嘘ではないのだ。

「なぁ。ここで練成なんかしちゃだめだぞ」

 どこからともなく声が聞こえて来て、怒られた。

「すみません」

 素直であることが一番良いとよく聞く。

 なので、素直を意識してみる。

 見抜かれないように作り出された上っ面の素直さは、とても滑らかである。喉越しがいいのだ。特に言葉が。

「何を見たんだ。この練成で」

「何も見ていません。失敗したような気がします」

「上手くいったのさ」

「本当ですか」

「それに気づいていないというだけの話」

「信じられません」

「気持ちは分かるが、すべては事実だ」

「練成とは、いったいなんなのですか。捻出、作成、創作、創出。なんであっても良いと思うのですが、理解の外にある気がします」

「理解の外にあるものを扱うことができないと」

「そうです」

「人体の仕組みを全く理解できていないのに、今日も人体を使って生きているのはどう説明するのかな」

 脳の中で言葉を錬成する。

 きっと、いいものができるはずだ。

 やればできると言われ続けてここに来たのだから、問題はない。

 そうだろう。

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