第214話 トーナメント表の発表
開会式のあと、
その様子はバックヤードに控えている僕たちにも、映像盤で共有された。
「僕たちのリインフォースは、一回戦か」
「一番最初だと、緊張するね」
アルフェの声が少し震えている。いつものように笑ってみせてはくれているけれど、かなりの緊張状態にあることが容易に想像できた。
「……けどさ、ラッキーだな」
「どうしてそう思うのですか?」
「だって、オレたち生徒会チームとは真逆のブロックだろ?」
ヴァナベルが言うように、僕たちのブロックとエステアたちのカナルフォード生徒会のブロックは全く別のブロックに位置している。
「そんな難しい顔すんなよ、リーフ。少なくとも一回戦や二回戦で敗退しなくて済むじゃねぇか」
だが、決勝に行く以外にリベンジを果たす道はなくなったということだ。これを
「わたくしは元より負けるつもりはありませんので、どこで当たろうと同じことです」
抱いていた心配はホムの頼もしい一言によって打ち消される。やれやれ、どうやら僕はホムのことを随分甘やかした目で見ていたようだ。エステアに負けて自信を失ったホムは、もしかするともういなくて、今僕の前にいるホムは、特訓を重ね、勝利のために新たな自信を持ちつつあるのかもしれないな。
「にゃはっ! そんじゃ、まずはお互い一回戦突破からだな!」
ホムの成長を感じているのは僕だけではないらしく、ファラが破顔してホムと高く手を合わせる。
「応援してるよぉ~!」
激励を示してホムと両手で何度もタッチしているヌメリンの間にヴァナベルが割り込む。
「最低でもオレたちと当たるまで負けるなよ!」
「望むところです」
そういえば僕たちもヴァナベルたちも生徒会とは真逆のブロックだ。
「勝ち進んだら、いつかはファラちゃんたちと戦うことになるんだね」
アルフェが気づいたように、映像盤に表示されているトーナメント表を指で辿る。
「順調にいけば三回戦――準決勝でヴァナベルたちのチームに当たることになるね」
僕は頷き、改めてトーナメント表を目で辿る。
一回戦の相手は、ロードオブロードというチーム名だ。どんな相手であれ、僕も負ける気はないけれど、気を引き締めて挑まなければならないな。
映像盤の元から離れ、それぞれの機兵の元へと移動する。移動を開始してすぐに、ホムが身体を寄せてきた。
「……マスター」
「なんだい、ホム? 緊張してきたのかな?」
問いかけにホムは首を横に振り、僕の目を真っ直ぐに見つめてきた。
「そういうものは、マスターが始めから取り除いてくださっているので」
だとすれば、模擬戦での特訓を積んできたホムがこのタイミングで僕に言いたいことはひとつしか思いつかない。
「……初戦の作戦かい?」
「はい。作戦というほどのものではないのですが……」
問いかけにホムは頷くと、立ち止まって僕とアルフェと交互に目を合わせてから口を開いた。
「この戦い、可能ならばわたくし一人で戦わせていただきたいのです」
「相手はレーヴェ三機だよ。ホムちゃん一人で大丈夫……?」
ホムの申し出にアルフェが驚いたように目を瞬く。
「遠目ではありますが、模擬戦の様子は何度も見かけております」
ああ、ホムの視力なら問題なく把握出来ているだろうな。その上で、一人で戦いたいというのは、戦闘時間をなるべく長く確保したいという趣旨なのだろう。
「アルタードが完成してから模擬戦を行う余裕はなかったからね。動作確認程度じゃなく、本気で動かしたらどれだけの力が出せるか知りたい――そういう理解でいいかな?」
「はい。この試合を通して最終調整を行いたいと考えております」
僕の理解が正しかったようで、ホムの顔に微かな笑顔が浮かんだ。とはいえ、僕たちはチームなので、アルフェの意見も尊重したい。人一倍心配症のアルフェは、ホムがみすみす傷つくのを見過ごせないはずだ。
「……アルフェはどう思う?」
「心配だけど、ホムちゃんが大丈夫ならホムちゃんが好きなように戦うところをワタシも見てみたい。それに、優勝するためには次の試合のことも考えなきゃだよね」
アルフェの答えは半分予想通りで、半分予想とは違った。僕たちは優勝を目指しているし、そう約束した。けれど、そのためにどういう作戦を組むかまでは、僕自身考えが及んでいなかった。
「その通りだと思う。アルフェの考えを聞かせてくれるかい?」
「ワタシ、メルア先輩と当たるまでは魔力を出来るだけ温存したい。もちろん、リーフたちの負担にならない範囲で……だけど」
「僕もそれがいいと思う。二回戦の相手次第だけれど、僕と違ってアルフェには魔力に限りがあるからね」
魔導杖で魔力を増幅できるとはいえ、機兵を自身のエーテルで動かしながら、
「初戦はホムの意向に従うよ。ただし、危険を感じたら必ず助けを求めること。ホムの本能にはそれが強く植え付けられているはずだからね」
「ありがとうございます。マスター、アルフェ様」
ホムが笑顔を見せて深く頭を垂れる。その笑顔からもホムの成長が感じられた。
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