第49話 ブラッドテイルとの戦闘
ブラッドテイルが
「リーフ、気をつけて」
「大丈夫だよ。それより、僕になにかあっても絶対に近づいてきちゃだめだよ、アルフェ」
「……うん」
宙に逃れてもらったアルフェが攻撃範囲から離れるのを確認し、映像盤のブラッドテイルに視線を戻す。
ブラッドテイルと戦う上で最も厄介なのは、頭部に存在する毒腺に蓄積されている毒だ。といっても、射出されるわけではなく、牙から注入されるから、アーケシウスには効かないんだけど。
そうなると鞭のように
――真っ向から受け止めて、ドリルで胴体を攻撃するのがいいかな。
突進してくるブラッドテイルを見つめながら、冷静に分析する。あまり賢い個体ではないようで、アーケシウスのドリルを装着した腕は避けているものの、体勢を低くして胴体に真っ直ぐ向かってきているのがわかった。
「ギャギャッ!」
威嚇の声を鶏冠から上げ、ブラッドテイルがアーケシウスに体当たりする。
「……くっ」
予定通り真っ向から受け止めてはみたものの、衝撃が想像以上に強すぎて、操縦桿から手が離れてしまった。
「……っは! アーケシウスで戦うとはいえ、内部への衝撃を加味しないとならなかったな」
僕としたことが大きな誤算だ。衝撃で尻餅をつくような体勢になったアーケシウスを、操縦桿と
「ギャッ、ギャギャッ!」
だが、もたついている間にブラッドテイルは勝ち目があると見込んだのか、再び突進を始めた。
「おっと」
機体にダメージがほとんどないとはいえ、生身の僕になにかあれば戦うことはできない。さっきの衝撃で支えもなしに受け止めるのは、子供の僕の力では無謀だとわかったので、足裏に取り付けた
「ギャギャッ!」
アーケシウスの後ろをブラッドテイルが追ってくる。ここまでは狙い通りだ。
大木の前で機体を旋回させ、背をつけて構えたところで、アルフェの悲鳴が聞こえた。
「リーフ!」
「来るな、アルフェ!」
宙に逃れているはずのアルフェに向かって拡声器で叫ぶ。その一瞬の隙を狙って、跳躍したブラッドテイルが飛びかかってくるのが見えた。
「……あぐっ!」
凄い衝撃で操縦槽がびりびりと震えている。だが、アーケシウスの背中を大木に預けたことでブラッドテイルの突進を上手く受け止めることができた。
「悪いね」
アーケシウスの左腕を強く曲げ、ブラッドテイルの首を固定する。すかさず右腕のドリルを作動させた僕は、ひと思いにその首を穿った。
「ギャギャ! ギャーーーッ!」
ブラッドテイルの首にドリルが埋まっていく。紫色の鮮血が噴き出し、ブラッドテイルの身体は横倒しになった。胸部が僅かに上下しているところを見ると、まだ生きてはいるが、もう動けないだろう。周囲を確認し、他の個体が近づいていないことを確かめ、それからアーケシウスの頭部を確認する。アルフェが乗るところは、汚れていないようだ。
「リーフ!」
宙に浮かんだままのアルフェの姿が、少し遠くに見える。でもその声だけは集音機越しに僕の耳にもよく届いた。
「アルフェ、そっちに行くから待ってて!」
機体を歩ませてアルフェの元へ向かう。魔獣とはいえ、あまりアルフェには見せたくない光景だったから。
「リーフ、リーフ!」
近くまで行くと、アルフェが僕の名をを呼びながらゆっくりと降下し、地面に降りた。
「……乗らないの?」
「うん。
そう言いながら、アルフェはなにもないところを指差した。僕の目にはなにも見えないけれど、アルフェにはそれがはっきりと見えている。改めてアルフェの浄眼は便利だな。
アーケシウスに脚部を畳んだ駐機姿勢を取らせた僕は、操縦槽に置いていた鞄からリオネル先生からもらった、魔素保管容器という特殊なガラス瓶と
魔素保管容器は、僕が両手で抱えられるほどの大きな細長い瓶で、粘土状のカイタバで蓋をして密封する仕様になっている。
「さてと。穴を掘らないとね。どのあたりがいいかな、アルフェ」
「こっち」
アルフェはそう言うと、土魔法で魔素保管器が入るほどの穴を空けてくれた。手で掘るつもりでいた僕は、驚かされた。なるほど、魔法で穴を空ければよかったのか。その発想すらなかったな。
「助かるよ、アルフェ」
早速魔素保管器の瓶を地面に埋めて固定させ、巻物を巻き付けて簡易術式を発動させた。
「わー、すごーい!」
「アルフェ――」
「リーフ、そろそろいっぱいだよ」
聞こうとしたところで、瓶の状況をアルフェが先回りして伝えてくれた。
「ありがとう、アルフェ」
アルフェにお礼を言いながら、ウィンド・フローが発動している瓶に向け、粘土状のカイタバを近づける。吸引によって瓶の口にカイタバが貼り付き、蓋になる。これで採取完了だ。
「いっぱい採れてよかったね」
「そんなに入ってるの?」
瓶の中がいっぱいなのはわかるけれど、その量をどう評価して良いかわからない。重さも空気と大して変わらないため、手で持っているくらいでは微々たる変化さえわからないのだ。尤もこれを計測できるような代物は、僕も母上も持っていないけれど。
「うん。この吹きだまりの渦がなくなるくらいには」
改めて『見える』っていうのは便利だな。アルフェの浄眼が羨ましい。それだけの量があれば、ダークライトの結晶を錬成するのに充分だろう。
アルフェのおかげで無事に
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