第14話 おまけ:俺の家

信じられない状況だが、これが現実だ。


社長が俺の部屋の中でキョロキョロしている。


昨日までは社長が俺の家にいるなんて想像すらできなかった。


再び社長に目を戻すも、やはり俺の家にいることが信じられない。


社長は一通り俺の家の中を見て満足したのか、何をするわけでもなく立っている。


急に静けさが気になり始め、妙な緊張感が俺を襲う。


そんな空気を変えたくて、わざと大き目な声で社長に話しかける。


「シャワー浴びますか?かなり汗かいたでしょ。その間、簡単に食べるもの用意しておくので。」


俺の言葉に何を思ったのか、急に焦り始める社長。


その社長を見て、俺は何を言っているんだと後悔する。


家に呼んだばかりの女性にかける言葉ではなかった。


「着替えがないので。」


これは断られているのだろうか、それとも本当に着替えが無いのを心配しているのだろうか。


さっきまで海辺にいたせいで、俺の体は潮でべたべただ。


きっと社長もそうに違いないと思い、再び声をかける。


「Tシャツとハーフパンツでよければ、俺の貸します。」


とりあえず着替えを持ってこようと、寝室に行き適当な服を選ぶ。


社長の元に戻ろうとした際にベッドが目に入り、急に鼓動が早くなる。


期待は少しあったが、社長が嫌がるなら無理にはしないつもりだ。


部屋に戻り、手にした着替えを社長に手渡すと素直に受け取ってくれた。


「お風呂場はあそこのドアの奥です。簡単なものしか用意できないけどよかったですか?」


社長はお風呂の場所を確認するかのように、お風呂の方へ目線を向ける。


「さっき貰ったパンがあるので、それを一緒に食べましょう。」


そう言い残して社長はお風呂に行ってしまった。


社長がいなくなった瞬間、緊張していた体から力が抜ける。


家に帰ってから何度も思ったが、この部屋に社長がいることが信じられない。


シャワーの音がお風呂から聞こえてくると、益々心臓がバクバクと音を立て始める。


気持ちを落ち着かせるために、夕食の準備をしようとキッチンに向かう。


冷蔵庫を開けると、夕食がなんとかできそうな食材が入っている。


食材を冷蔵庫から出して、料理を始めるものの耳はシャワーの音が気になってしょうがない。


シャワーの音が止まり、お風呂のドアが開く音がする。


少しの時間大人しくしていた心臓が再び動き始める。


気にしないようにしていても心臓の音が嫌でも耳の奥に感じる。


もう料理をする手は止まっていて、いつこっちに社長が戻ってくるのか聞き耳をたてていた。


お風呂の方からぺたぺたと歩く音がする。


社長がこちらに戻って来たのかと確認しようを顔を上げると、お風呂上がりの社長と目が合う。


色気たっぷりの社長が目に入ってきて、慌てて目を逸らす。


あまりに挙動不審な自分の行動に呆れつつも、一度深呼吸をしてから社長に話しかける。


「早かったですね。ドライヤーの場所分かりましたか?」


まともに社長を見ることはできなかったので、料理をするふりをする。


「場所が分からなかったので、教えてもらってもいいですか?」


社長の近くに寄ると、俺と同じシャンプーの匂いがする。


ドライヤーの場所を社長に教えるも、今度は柔らかい髪に触れたいという欲望がむくむく湧き上がる。


「俺が乾かそうか。」


断られる前に勝手に社長の髪を乾かし始める。


柔らかい髪から俺と同じシャンプーの香りが漂う。


「シャンプーお借りしました。相馬さんと同じ香りが自分からするなんて変な感じです。」


自分と同じことを考えていたかと思うと嬉しくなり、鏡越しに社長を見る。


ばちりと社長と目が合う。


いつもより化粧が薄い社長はあまりにも可愛らしく色気がある。


不覚にもこのまま小さくて赤い唇を塞ぎたくなる。


野蛮だと思われたくなくて、気持ちをぎゅっと我慢する。


「料理の途中でした。後はお願いしても良いですか。」


気持ちを誤魔化すためにドライヤーを社長に手渡し、キッチンに戻る。


自分をこのまま抑えることができるのか不安になりながらも、作った料理とパンを机に並べる。


髪を乾かし終わった社長がこっちにやって来る。


「社長、何か飲みますか?と言っても缶ビールとカクテルぐらいしかいですが。」


「缶ビールでお願いします。」


俺の歓迎会で飲み過ぎてグダグダになっていた社長が思い出される。


「座って待ってて下さい。」


缶ビールを持って席に戻る。


「さぁ、食べましょうか。簡単なものしかなくて申し訳ないですが。」


「簡単なものなんて、とんでもない。相馬さんの女子力の高さに驚いてます。」


俺の家で社長が笑いながら俺の作った料理を食べている。


この光景が信じられなくも幸せだった。


気まずい思いをさせてはいけないと思い、色々な話題を社長にふる。


楽しい時間はあっという間に過ぎ、机の上に並べた料理がほぼなくなる。


「洗い物は私がします。」


と社長が席を立とうとするので、慌てて制止する。


社長に洗い物をしてもらうなんてとんでもない。


「洗い物は食洗器がしてくれるから大丈夫ですよ。食器は全部食洗器対応のものですし。」


俺が食器を下げ始めると社長も一緒に食器を運び、食洗器にセットする。


まるで新婚みたいだな。


食洗器のスタートボタンを押す。


狭いキッチンに二人でいると距離が近いので、またおかしな考えが湧いてきそうだ。


「俺シャワー浴びてきてもいいですか?社長はそこのソファーでテレビでも見てて下さい。」


社長にリモコンを渡すと、寝室から着替えをとってきてお風呂に逃げるようにして向かう。


お風呂場で服を脱ぐと、一気に脱力する。


俺は自分の理性を保つので精一杯だったが、社長は終始楽しそうにしているだけで、特に甘い雰囲気になることはない。


ほんの少し期待していたので、少し残念な気もする。


この後のことはどうなるか分からなかったが、もしもの時に備えて入念に体と頭を洗う。


あんまり長くお風呂にいるわけにもいかないので、洗い終えると急いで髪を乾かして社長の待つ、リビングに向かう。


社長はテレビに夢中で俺に気付かない。


俺ばっかりが意識しているみたいで悔しい。


「社長、ビール飲みますか?」


酔っぱらっているのか、社長は俺を見たまま何も言わず動かない。


もう一度社長に声をかける。


「ビールじゃなくてカクテルにしますか?それともジュース?」


「缶ビールで」


俺もお酒の力を借りないと我慢しきれないと思い、自分の分も手に取る。


缶ビールを社長に手渡し、社長とは微妙に距離を空けてソファーに座る。


近くに座ると触れたい気持ちが我慢できなさそうだったので、わざと空間を開ける。


あまりにもテレビに夢中な社長に寂しさを覚える。


まるで男と意識してないと言われているようで。


「社長、お笑い番組好きなんですか?」


こっちを向いて欲しくてしゃべりかける。


「特にそういうわけじゃないですが、テレビを付けたらやっていたので惰性で見てました。」


「あんまりお笑い番組を見ないので久々見ると面白いですね。」


大して面白くなかったが、社長に合わせたつもりで言葉を発する。


静かな家の中でテレビの音がやけに大きく聞こえる。


「相馬さん、社長って言うのやめてくれませんか?」


突然社長が怒ったような口調で言い始めるから、驚いてしまう。


「そうですよね。じゃぁ、高梨さん?高梨さんってのも変か。」


社長はなんて呼んで欲しいか分からず、言葉を濁す。


「真理のことは真理さんって呼んでるので、私の事も下の名前で呼んで下さい。」


信じられないぐらい可愛いことをいう社長の表情を見たくて、顔を覗き込む。


まるで拗ねた子供のような表情がなんともいじらしい。


急にいたずら心が芽生える。


「それじゃぁ、凛って呼ぶ。ついでに敬語じゃなくてもいいよね?俺の方が年上だし。」


「そうですね。それでお願いします。」


「凛も敬語辞めて。それに俺のことも相馬さんって呼ばないで。」


俺のからかいに動揺を隠せない社長もまた可愛い。


「そうですね。そうします。」


「そう言ってる先からすぐ敬語。」


社長は俺のからかいに返すことができなくなったのか、無言になると再びテレビに目線を戻す。


あまりに可愛い表情をする社長をもう一度見たくて、社長の頭にそっと手を添えて自分の膝に社長の頭を乗せる。


俗に言う、膝枕ってやつだ。


さっき髪を乾かした時に触った柔らかい髪にもう一度振れたくて、そっと髪を撫でる。


俺の膝枕にかちこちに固まってる社長が可愛くて仕方がない。


社長の体温を感じ、俺の下半身が反応し始めている。


「俺の服着た凛、可愛すぎる。見ると自制心が抑えられ無さそうで見れなかった。」


髪だけじゃなくて、社長の色んなところに触れたい。


髪を撫でる隙に社長の耳も触る。


びくっと社長の体が跳ねたと思うと、社長は目を閉じてしまった。


その表情が色気が駄々洩れで、もう我慢できそうにない。


「ねぇ、、、キスしていい?」


社長の答えを聞く前に、口を塞ぐ。


ぎゅっと閉じられた社長の口の中に入りたくて、舌で唇をノックする。


おずおずと社長の口が空いたので、閉じる前に急いで中に入る。


とろっとした口の中でほんのりとビールの香りが漂う。


味わうかのように社長の口を隅から隅まで味わう。


社長から息が漏れるのが聞こえて、益々俺の奥が熱くなり固くなるのを感じる。


急に社長の口が空いたのを感じる。


もっと欲しいという合図だろう。


塞いでいた口を離すと、だらしなく開いた口のまま社長がこっちを見ている。


とろんとした目の社長と目が合う。


その表情を見て、俺の奥がさらに厚く固くなる。


「もう俺限界なんだけど。」


俺の言葉が合図となったのか、社長は上体を起こし俺の首に手をかける。


ゆっくりじんわりと唇に社長の体温を感じる。


我慢も限界だったから、社長の体を優しくなでる。


本能のまま柔らかい膨らみをそっと触られると柔らかくて気持ちが良い。


溜まらず社長の服をたくし上げて、固くなった膨らみを口に含む。


社長の鼻から抜けた声が頭上から聞こえる。


その声が益々俺を煽る。


余裕なく社長の服を脱がすと、目の前に白くほっそりとした体が目に入る。


俺が見惚れていると、社長が慌てて脱がした服で前を隠す。


「もう我慢できないって言ったよね。綺麗だから隠さないで。」


社長の手から服をとり、自分も服を脱ぐ。


ぎゅっと社長を抱き締める。


肌と肌が触れ合っただけなのに体に電流が走ったような刺激が体を駆け巡る。


もう一度社長のふくらみにつんっと立っている部分をそっと口に含む。


優しく舌で転がすと、我慢できなくなったのか社長の声が漏れる。


もっと悦ぶ声が聞きたい。


「声、我慢しなくていいよ。」


余裕がなくて自分の声が掠れている。


下の方に手を伸ばすと既に熱くなって、蜜が溢れて来ている。


その蜜をそっと掬うようにして社長の奥を刺激する。


社長の声が漏れる。


その声に煽られて、俺の指も動きを早める。


社長の声に余裕がなくなってきている。


一瞬体が弾み、俺の指が締め付けられる。


俺も早く社長の中に入りたい。


「ごめん、俺もう限界。」


「私も限界。洋平さんを頂戴。」


このタイミングで名前を呼ばれるとは思ってもいなかった。


「もう一回名前呼んで。」


「洋平さん」


社長の甘い声に我慢ができず、余裕もなく一気に社長の中に入る。


思った以上に温かく、きつく俺を包み込む。


早く動きたい。


「きつくて気持ちい。優しくするから動いてもいい?」


社長が頷くのと同時に俺はが激しく腰を打ち付けていた。


我慢ができず時折声が漏れる。


俺の声を聞くと社長の奥がどんどん俺を締め付ける。


俺の動きに合わせて、社長はぎゅうぎゅうと締め付ける。


もう限界が近い。


「凛、ごめん。俺もうダメだわ。」


返事の代わりに社長の奥がさらにぎゅっと締まる。


瞬間、社長の中でどくどく脈を打っていた。


頭が真っ白になり、体の力が抜ける。


こんなに余裕のないのは初めてだ。


カッコ悪すぎて恥ずかしくなる。


「みっともないな。夢中になり過ぎた。」


顔を見られたくなくて、社長をぎゅっと抱き寄せる。


「私も夢中でした。」


「また敬語。敬語使ったら、これから罰を与えるからな。」


恥ずかしさを誤魔化すように、優しく社長の唇を啄む。


「これが罰。」


ベットの上でゴロゴロしていたら、2人共体力が残っていなかったのでいつの間にか眠ってしまっていた。



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社長に恋する KEI @kei8787

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