書けなくなったラブレター

雑食紺太郎

第1話

「あなたのことが大好きだった」


私は右手にペンを持ち、言葉を綴る。


好きな気持ちを伝えたかった。

でも、勇気が出なくて手紙にしようと決めた。

本人の目の前で想いを告げられない、こんな臆病な私の想いを筆に乗せて。


筆を進めて言葉を綴る。

そんな最中にある事に気がついた。


「本当に好きなのかな?」


あなたへと向けていた想いへの疑問。

私はなぜ、あなたのことを好きになったのだろう。


「なんでだろう」


あなたと2人で過ごした時を思い出す。

あの頃は楽しかったな。

それでも、何故か違和感に引っかかる。


うーん、うーんと唸って考えた。


「あぁ、そういうことか」


あなたと2人で過ごした私。

楽しいと心を躍らせているそんな私。

そんな私の状態が好きだった。


「なんだ、そうか」


あなたに向けてた筈の淡い想いは、純粋な恋心なんかではなかったようだ。あなたのことが愛しいとか、恋しいとかではなく。単なる自己愛だったんだ。


書きたかったラブレター。

あなたへ向けた想いの手紙は書けなくなった。


そんな手紙は眠らせましょう。

宛名も書かずに封筒へとしまう。


一言、お礼を添えて。


「ありがとう、気づけたよ」


恋だと思った私の心は、形を成すことなく消えていった。私の恋はいつ始まるのかな。

そんなことを思いながら部屋から出た私。


宛先不明のラブレターは引き出しへ。

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書けなくなったラブレター 雑食紺太郎 @zasshoku_konntarou

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