第19話

 アルコール依存症だったのかと思ってしまうことがある。

 最近は車の運転もいつするかわからないし、酒を飲むような集まりも無いからあえて飲むことはなくなった。


 普段は人とうまく話せないけど、酒を飲むとテンションが上がって話せる。やらないけど、たまに飲んで仕事に行ったら楽にできるんじゃないかと考えることもある。


 大学に入って、ゼミ飲み会で飲ませてもらってから、けっこう自分は強いし何でも飲めることに気がついた。それで上の人や初対面の人に気に入られ易かった。サークルに入ると飲ませる雰囲気もあって、どんどん飲んだし人にも飲ませた。

 社会人になって一度帰ってから吐くほど飲みすぎたことはある。

 それ以来、飲ませようとする人から逃げたり断ったりするようになった。怒られることはあったけど、もうあんな苦しい思いするよりはマシだった。相手がそんなに強くなければ合間に水やソフトドリンクを飲んで酔わないように調節することも覚えた。学生のころは吐くほど飲めば強くなると言われてたけど、それはこういうことだったのかもしれない。耐性が付くのではなく、距離を取れるということだ。


 それまで某記者の事件みたいな危ない目に会わずに来れたので、自分はラッキーなのかもしれない。吐くほど飲んだ職場でも元々断らずに飲む方だったから、そういう心配はされた。


 占い師にも言われた強運の持ち主というのはそうなのかもしれない。

 私は慎重なところもあるけど、うまく今まで生きてこれたなと思うくらい断らなかったかもしれない。


 断ったら良かったのに、追い詰められるまで断れないから、もっと早く仕事だって辞めてればよかったなと思う。結局ぎりぎりまで我慢して心身を病んだり向こうから契約を切られたりして仕事がなくなったことが多い。でも自分から言い出す勇気はずっとなかった。自分になんとかできると考えてなかった。甘えがあったんだろうなとは思う。


 私は、何もできなくはないが、えいっと自分の感覚を無くして行動することはできた。だから営業の仕事もやってこれたのだと思う。

 でも、その感覚をうまくコントロールできなくて、追い詰め方が足りないのかなと自問自答したりした。

 私はどうしたら私の思う通り動いてくれるのだろう?自分で自分の人生を動かしている感覚がなかった。

 これは未だに解決できていないことかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

小川の家 奈月 糸乎 @yu-ps9

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ