無為の出汁
紙季与三郎
無為の出汁
ほのかに吐く息白く
そのような週末の朝焼けが、私の日常だとするならば——誰もが
朝が迫ると嘆く
湯気に鼻を
きつねの好物などという与太話を沈めて
ろくでもない。
ろくでもない。
このまま眠れば、起きるのは昼過ぎか夕頃か。
どのみち陽が降りるのも時間の問題。
出汁のついでに流れ込む
流されるまま。
流されるまま。
煮込んだ舌から喉を通って胃の腑に流るる出汁は
意味は無いかと問いかけた。
意味は無いかと問いかけた。
為になるかと問いかけた。
為になるかと問いかけた。
ほのかに吐く息白く
そのような週末の朝焼けが、私の日常だとするならば——誰もが
高説垂れる高位の御方は
負け犬が安いきつねに八つ当たっておるのだと
テレビリモコンのボタン押し込み、流れ始めた朝のニュースに耳澄まし、世間の声に出汁の残った器を
現実感の無い
「はぁ……」
私の腹から込み上がる上昇気流のような溜め息と共に、からりと倒れる器の中の割り箸二本。
意味はあるかと問いかけた、私に対する答えの代わりに。
意味はあっただろうと笑い掛けた気さえして。
私の舌と記憶に未だに
意味はあったなと、私は想い——
その日も——雪は降り
無為の出汁 紙季与三郎 @shiki0756
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