第9話

季節が夏に近づき、雨がよく降る季節になり始めた頃、俺は、今日もいつものように学校へと向かっていた。

まあ、いつも晴れていたけど、今日はどしゃぶりの雨が降っていて、傘をさして俺の通っている、山野辺高校へと行く。

登校途中、俺に話しかけて来る者がいた。


「おはようございます、まこ」


「おはよう……」

俺に話しかけてきたのは、俺と同じクラスで、俺に手紙を送った人物、汐崎美咲であった。普通なら、安心してあいさつとかするようなものだが、彼女から来た手紙の内容は「好きです、彼女にして下さい」だったので、どう返事していいか、本当に困っているのである。


「まこ……やっぱり、私と付き合えませんか……?」


そう彼女が聞いてくる。

普通なら付き合えないだろう? だって、俺と言ってるが、俺も彼女も同姓だし?


「えっと……付き合うのは、ちょっと……」


「ど~してもですか……?」


「ど~しても」


「……分かりました、でも、私、諦めませんから、絶対にあなたに好きって言ってもらいます!」


そうガッツポーズを決めて言う、そう言われても困るんだが……まあ、もしもそう心変わり? とかしたら、そうなるかも知れないけど……そう話していると、校舎についたので、中に入る事にした。

校舎の中に入って、教室の中に入る。

教室の中に入ると「おはようございます、美咲様」と、男子の数人がそう言ってきた。

美咲は、その言ってきた男子に向かって、「おはようございますね?」と優しく言っている。

その言葉を聞いた男どもは、うおお!とか異様に盛り上がっていた、ほんと……大丈夫か? こいつら?俺は、そう思いながら自分の席に着く。席に着くと、やっぱりと言うか俺に話しかける者がいた。


「おっはよーまこ」


「おはよう」

俺に話しかけてきたのは、俺の親友でもある、栗谷美玲だった。


「まこ~、まこが私と同じ場所で働くなんてびっくりしたよ? でもなんで?」


「……誘われたから?」

もとはと言えば、美玲が原因なんだが


「ふ~ん、そっか、じゃあ休日もまこといられるのか~なんかいいかも?」


……何がいいんだかよく不明なのだが……

そう話していると、チャイムが鳴ったので、授業に集中する事にした。そして、昼休み。いつものように俺は、俺の妹、南山亜季が、作ってくれた弁当を食べる事にした。

お弁当箱を開いて、食べていると、俺に話しかけてきたのは


「まこー一緒に食べよ?」


そう言ってきたのが、美玲だった。


「別にいいけど……あれ? 美玲っていっつも購買部に行ってなかったっけ?」


「そうだけど、今日は自分で作ってみたんだ、あ、そうだ? まこ、ちょっと食べてみて?」


美玲の持ってきたお弁当箱を開ける。

中に入っていたのは、ハンバーグに玉子焼き、お結びとまるで、お子様が好きそうなメニューばっかりだった。


「えらく子供っぽいメニューだけど?」


「うん、私、こういうの好きだからさ? こういうレパートリーにしたんだよー」


「そう」


成程……俺はとりあえず、玉子焼きを食べてみる。うん……一言で言うと、しょっぱい、砂糖と塩、間違えたんじゃないか? と思う。


「これ……しょっぱいよ」


「え? ほんと? ……あ、ほんとだ……まあ、こういう事もあるよね」


いや無いだろ、普通は……そう言って、二人でお弁当を食べる。お弁当を食べ終わると、チャイムが鳴ったので、午後の授業に集中する事にした。午後になって、授業が終わり、放課後。

いつものように帰る用意をしていると、再び美玲が話しかけてきた。


「まこー?」


「何?」


「今日さ? 遊びに行かない?」


「どこに?」


「まあ、私についてきて? きっとまこも楽しめると思うんだ~」


「そう……」


俺は、どうしようか迷ったが、生憎朝から降り続いている雨だし、家に直行で帰っても、何もする事ないし「遊びに行こう?」と誘って来たので、学校が終わって、放課後。

雨の中を傘をさして、街中へと制服のまま、出かけるのであった。

俺の住んでる町、山野辺市は、結構な住宅街と商店街がある。地域としては、結構な広さで、人も多く、商店街は、人でにぎわっている。

そんな山野辺市を、美玲と一緒に歩く。


「で、一体どこに行くの?」


「それは、ついてからのお楽しみだよー」


「そう」


一体、何所に行く気なんだ?俺は、そう思っていた。数分後、山野辺市商店街の中にある、一軒の建物にたどり着いた。


「ここだよ? まこ」


「ここって、ゲームセンター?」


「そう、ゲーセンだよ? まこはよく行くの?」


「いや……全くと言っていいほど、行かないかと」


「そうなんだ、じゃあ一緒に楽しもう?」


「……まあいいか」


俺と美玲は、ゲームセンターの中へと入る。

ゲームセンターの中に入ると、中は冷房が効いてるせいか、涼しく、人が多くいた。


「今日は、私がおごってあげるよ~、まずこれからやっとく?」


そう言って、美玲が指さしたのは、首都高ロワイヤルと呼ばれるレースゲームだった。


「まこは、やった事ある?」


「いや、初めてやるかな」


「じゃあ、操作方法教えるね?」


俺にこのゲームのやり方を説明する。


「じゃあ、早速バトルしよ~、負けたらジュースのおごりね?」


「……こっち、不利なんじゃないかな?このゲーム始めてやるんだけど?」


「……っふ、勝負と言うのは時には非常な物なのだよ~? 負けても恨みっこなしね?」


うわ……なんか言い方がムカツク……

こうなったら、全力でやってみるか……と、思い、俺は、こう言った。


「分かった、さっき教わった通りに、やってみて、全力でやるよ」


「おお? そうこなくちゃね? じゃあ、始めるよー」


座席にお互いに座る、コインを投入して、アーケードモードの対戦バトルと言う項目をセレクトして、レース開始を待つ。数秒後、画面上にお互いの操作する車が映し出されて、スタート地点に並んだ。


「あ、ちなみにね? 私、このゲームのハイスコアランキングの上位者だよ~」


……何だと? と言う事は……こっちが、思いっきり不利な状況じゃあないのか?まあ、やるからには全力で相手をしてやろうと思い、俺は、ゲームに集中する事にした。

そして……結果は、どうなったのかと言うと


「な、なんで??」


何故か俺が勝てました。美玲がこう悔しがっているあたり、手加減はしていない筈……うん、運がよかったのか? それか実力か?


「美玲……手、抜いたの?」


「ぬいてないよ~? 私、全力で相手したんだけど?」

「じゃ、まぐれかな」


「うわ、なんか言い方がむかつくなあ、運がよかっただけでしょ~?」


「じゃ、約束どおりにおごってよね?」


「解ったよ~、次は私が勝つけどね?」


そう言って、美玲は自販機で、ジュースを買う。俺はそれを受け取ると、一気に飲み干す。

飲み終わって、空き缶をゴミ箱に入れると、次に美玲は、こう言ってきた。


「次は、これやろ~?」


そう言って指差したのは「太鼓の神様」とか言う、太鼓を鉢で叩く、リズムゲームだった。


「解った」


「うん、ランクはどうする? 優しいから激ムズとかあるけど」


「やさしいで、お願い」


「りょ~かい」


難易度を決めて、コインを入れてプレイする。

画面上に天使のわっかをつけた白ひげの爺が出てきて「これをプレイするのじゃな? まあ頑張るのじゃ」とか言ってきた。

うん、なんかやなじ~さんだなとか、思っていると、美玲が曲を選択する。

選択した曲はと言うと「天空カイザーOP~光の空へ~」とかいうタイトルだった。

そう選択して、俺と美玲はバチを持って、太鼓を叩く。数分で曲が終わり、なんとかぎりぎりで成功。そしてさっきの爺が出てきて「まあまあじゃな? もっと上を目指すがよいぞ」とか言っていた。何で上から目線なんだ? この爺は?

2曲目は、アイドル曲の「スターマリン」とか言う曲をプレイした。

この曲はちょっと難しかったので、クリア失敗してしまい、そしてさっきの爺が出てきて「この程度とは情けない、コンテニューするかの?」とか言ってきた。やっぱりむかつくな……この爺……


「う~ん、失敗しちゃったね?どう?楽しめた?まこ?」


「う~ん……まあ、誘ってくれてありがとね?美玲」


「いえいえ、あ、もうこんな時間だ?じゃあ、帰ろうか?」


「そうだね」


俺と美玲は、ゲームセンターから、出て行ったのであった。

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