第8話

普通に授業を受け、そして、数日が経過して、休みの日になった。休みの日なったので、早速出かける事にしたのであった。

出かける準備をして、いや行こうとすると、俺に話しかけて来る者がいた。


「お姉ちゃん、何所行くの?」

そう言ったのは、俺の妹である南山亜季だった。


「ちょっと、バイトしにね」


「バイト!? お姉ちゃんが!?」


おい、何でそこまで驚くんだ? 別に俺がバイトしたっていいと思うんだが……?


「一体何所でバイトするの? お姉ちゃんが働いてる場所、私も行きたいし」


さて、どうしよう? 別に言ったっていいのだが、普通のバイトじゃあないからな……

それに俺の親友の栗谷美玲だって、働いてるんだし?とりあえず、俺は言うのもやめて、隠す事に決めたのであった。


「いや、教えないよ、来られるとちょっと困るしね」


「え~……お姉ちゃんがどんな場所で働くか、気になったのに……本当は、一緒に行きたいけど、今日は約束があるし……じゃあ、お姉ちゃん、また今度教えてよ?」


「……気が向いたらそうする……じゃあ、行くね」

そう言って、俺は家を出たのであった。

外に出て、電車に乗り、秋葉へと辿り着く。

秋葉は、休日なせいなのか、人であふれかえっていた。その中をかき分けて進んでいくと、辿り着いた場所はラブ喫茶「アイライク」だった。その店内に入ると、いらっしゃいませ~と言ってきたのが、俺の親友の栗谷美玲だった。ちなみにこの店では、美玲はれいれいと呼ばれているらしい。


「あれ? まこ? 一体どうしたの?」


「おはよう」


「何でまこがここに? あ、もしかして……ここが気に入ったとか? 私に会いたかったから来たとか? もーそれなら、携帯に連絡入れてよ? すぐに時間作って、会おうとしたのにー?」


……何を言ってるんだ?こいつは……そう思ったが


「いや、そうじゃなくて、美玲、店長の紫さんはどこにいる?」


「紫さん? 紫さんなら、奥の控室にいるけど……なんで、まこが紫さんの事知ってるの?」


「ちょっとね、控室にいるのね?ありがと」

俺はそう言って、控室にの中に入る。

後ろで美玲が「な、なんでまこが?控室に?」とか言っていたが、気にしない事にした。

控室の中に入ると、そこにいたのは、この喫茶店の店長である、東雲紫と、ウィッグをつけていて完璧に、女の子に見えるが、紫の弟の俺の学校の後輩の東雲玲だった。


「よく来てくれました、まこさん」


「まこ先輩、おはようございますです」


うん……改めて玲を見ると、本当に女の子に見える。紫さんと姉妹って言われても、ああそうか……とか、納得できるレベルじゃないか? これは


「じゃあ、早速ですが、この制服に着替えて下さい」


そう言って、紫さんに渡されたのは、スーツらしき物と、長ズボンだった。


「え~っと……これに着替えろと?」


「はい、あ、もしかして、メイド服をイメージしたのがよかったですか? そっちがいいなら、そっちを渡しますけど?」


「いや、いい……」


メイド服を着るより、こっちのほうがいいかな……と、思った俺は、更衣室を借りて、早速着替えた。いざ、着替えて鏡を見てみると、イケメンな感じな俺がそこにいた。

なんかホストっぽいイメージ何だが、それかギャルソン? 着替え終わって更衣室から出ると


「よく似合ってますよ、まこさん」


「凄いですね……普通の女の子なら、惚れるレベルじゃないですか?」


「あら、じゃあ、玲も見とれちゃったの?」


「僕は、女の子じゃないよ……姉さん」


「判ってるわよ、そんな事、冗談よ冗談」


「ほんとうにもう……」


なんか……仲がいい姉妹に見えるのは、気のせいか?


「じゃあ、着替えた事だし、早速仕事内容を教えるわね、まあ、基本的にここは喫茶店だから、お客様のオーダーを聞いて、出来上がったものをお客様に運ぶのが主な仕事よ? あと、たまに特定イベントやるから、それも考えておいてね?で、ここのスタッフだけど、今いるのが、接客中のれいれいと、玲、それに私、で、あと、もう一人いるんだけど、今日はシフトに入ってないから休みね、で、まこさんには、れいれいと同じく、接客をして欲しいの」


「了解、美玲と同じようにすればいいって事?」


「まあ、そんな感じね、じゃあ、早速ホールの方に行ってくれるかしら?玲、サポート頼むわよ?」


「了解、姉さん、じゃあ、まこ先輩、行きましょう?」


「う、うん」

こうして、俺のアルバイトが始まった。


「は~い、今日からみんなと一緒に働く事になった、まこさんです、まこさん? 挨拶よろしくね?」


そう、店長の紫さんが言う、俺はこう言った。


「毎週一日だけですが、働く事になった南山真琴です、よろしく」


「ええ~!? まこがここで働くの!?」


そう言ったのは、俺の親友の栗谷美玲だった。


「そうだよ、言ってなかったっけ?」


「言ってないというか、聞いてないよ?」

まあ、言わなかったしな? 知らないのも当然か


「とりあえず、一応自己紹介して? みんな」

店長の紫さんがそう言うと


「は~い、じゃあ私から、れいれいだよ~よろしく~」


「じゃあ、次はボクだね、ボクはあきら、よろしくね?」


「あと一人いるんだけど、今日は休んでるので、一応名前だけ教えとくね?休んでる子は、さなちゃんと言って、れいれいと同じく、接客担当の子よ」


「そうなんですか」


「ええ、じゃあ、今日も張り切って頑張りましょう」


「了解ー」


「分かったよーー」


「う、うん」

こうして、俺のバイトが始まった。

主に俺の仕事は、お客様から呼び出しを受けたら、その席に向かって、オーダーを取る係だった。しばらく見ていると、男性客と女性客が入ってきて、注文を取っていく。俺も女性客に呼ばれたので、行ってみて、こう言った。


「はい、今日はどのような品にしますか?」


「あれ……? 初めて見る顔ですね?新入りさんですか?」


「はい、今日から働く事になった、まこと言います、よろしくです」


「きゃ~!! カッコいい!! かなり美形ですね!」


……なんかやたらとテンションが高いのだが……


「えっと……ご注文は……」


「あ、はい、この悪魔の息吹と、天使の微笑みお願いします!」


「は、はい……悪魔の息吹と、天使の微笑みですね……かしこまりました」

そう言って、注文取ったので、調理場に向かう。それにしても……悪魔の息吹に天使の微笑みね……全くどう言った品か、想像出来ないんだが……数分後、調理場から「悪魔の息吹と天使の微笑みあがりました~」と聞こえて、俺はそれをトレーに乗せて運ぶ。うん、悪魔の息吹=コーヒーで、天使の微笑み=ショートケーキだったのか……俺は、それを注文した客の所へと持っていく。


「お待たせしました、悪魔の息吹と天使の微笑みです」


「ありがとう、あの……」


「はい?」


「携帯の番号とか教えてくれませんか? 貴方の事知りたいので……」


そう赤らめて言ってきた、はて……? なんで顔を赤らめるのが疑問なんだが……生憎俺は、携帯を持ってないので、教える事は不可能なんだが……


「い、いや無理かと……」


「どうしてですか!?」


「だって、持ってない……」


「え!? 持ってないんですか!?じゃあ、何所に住んでるかとか教えて下さいません?」


「い、いや、それもちょっと……」


「そうですか……じゃあ、このバイトは毎日やってるんですか?」


「いや、週に一回ですけど……?」


「じゃあ、貴方に会いに毎週通いますね?」

……なんかちょっと怖いんだが……お客様だし、文句は言えないか……

俺は、そう思っていたのであった。

そして、時間が過ぎて、夕方。

さすがに疲れたので、あがらせて貰って、朝着てきた服に着替えなおして、外に出る。

外に出ると、待っていたのか美鈴がそこにいた。


「まこ~帰ろうか?」


「待ってたの? 美鈴」


「うん、じゃ、行こう?」

そう言って、美鈴と二人で電車に乗って、家へと帰る事にしたのであった。

帰る途中


「まこ? 今日は人気だったね? 特に女子に?」


「うん……」

そうなのである、「まこさん~」と呼んでくるのが、ほとんど女子だった。男性客もいたのだが、男性客は「あきらちゃん~」と言って、あきらを呼んでいたからである。


「まあ、来週もよろしくね~? まこ」


「りょ~かい」

こうして、俺のバイトは、とりあえず無事に終了したのだった。

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