第7話
季節が雨がよく降る季節になり始めてた頃。俺は、いつものように起き、いつものように着替えて、いつものように外に出る、そんな毎日を過ごしている。
まあ、普通、いきなりそんな日常が変わったりとか滅多に無いし、でもそんな当たり前のような日常が、ある日ちょっとずつ変わっていった。まず変わったのは、同じクラスの汐崎美咲に話しかけられる事だった。
今まで全く彼女から話しかけて来なかったのに、どう言う訳か……俺が手紙を受け取った日から、よく話しかけて来るようになったのである。まあ、手紙の内容が「好きです、彼女にして下さい」だったから、仲良くなりたいと言うか、俺と付き合いたいと言う願望があるらしいので、話しかけて来るのだろう……
普通の男ならば「はい、よろこんで!」とか「お願いします!」とか言うだろう、普通ならばだが……俺は、普通じゃ無かった……まず、俺は男では無いからである……一人称が俺とか自分とか言ってるが俺は正真正銘の女の子だし、まあ、髪が短いので、服装を変えると男に見えるのかも知れない。
実際に親友の栗谷美玲に、アニメだが天空カイザーのキャラのレキ(男キャラ)のコスプレさせられて、似てる!と言われたほどである。
あと最近と言うか、遊園地で俺の妹の南山亜季が、美咲と会ったからか、いつもと倍以上に俺といる時間が長くなった気がする……気のせいではなく、最近お風呂も「一緒に入ろ?」と言って来たし……今までは、そんな事言って来るの全く無かったのだが……そんな日常を過ごしていたりもするのであった。
そして、遊園地に行って次の日、俺はいつもと同じ時間に起きて、俺の通っている高校、山野辺高校に向かう。
いつもと同じ時間に到着する予定だったのだが……俺に話しかけてくる者がいたのである。
「あの……先輩」
「はい?」
俺に話しかけてきたのは、俺の事を先輩と言って来た。と言う事は、俺は二年生なので、後輩の1年生なんだろう。その後輩君が一体俺に何のようなんだ?
「これ読んで下さい!」
そう言って、俺に一枚の手紙を渡して、俺の傍から離れて行ったのであった。
「……手紙……」
これで、手紙を貰うのは二枚目だな……そう思い、手紙をしまおうとすると
「まこーー見たよ?」
俺に話しかけて来たのは、俺の親友の美玲だった。
「見たって……これ?」
「そう、今の子って、東雲玲君じゃん」
「東雲玲……? 知ってるの? 美玲」
「知ってるも何も、新入生の中で大人気の彼だよ? ちなみに何故大人気なのかと言うとね?同姓に大人気なんだよ?ああーーあの子にあのコスプレさせて愛でて見たいわ……」
そう言って、何かしらの妄想をしているようであった。ふむ……同姓に人気と言う事は……東雲玲と言う人物は、男なのに男に告白されてるって事か?うん……何だろう、他人のような気がしないのは気のせいか……?
「で、まこ? その手紙って、中身なんなの?」
「さあ……」
「もしかして、まこの事が好きで、手紙を書いたとか? 今時手紙って……もっと他にやりようがあると思うんだけどね?」
今時と言われても、俺は過去にその手紙を受け取ったのだよ、まだ返事はしてないけど
「で、見ないの?」
「あとでみるよ……」
俺はそう言って、鞄の中に手紙をしまって、校舎の中へと入っていった。
「あ、おいてかないでよーーまこーー」
そう言って、美玲も後ろからその後をついてくる。そしてキーンコーンがなる前に、無事に教室に辿り着き、早速手紙の内容を見てみると……「今日の放課後、音楽室で待ってます」だった。
なんか近視感デジャブを感じるんだが……前に貰った手紙とほとんど同じじゃないか?
それに流行ってるのか?呼び出しが音楽室って……校舎の裏とか、屋上とかじゃあなくて……俺は、そう思いながら、キーンコーンと鳴ったので、授業を受けて、放課後、音楽室に行く事にしたのであった。
そして、時間はいつもどおりに過ぎていき、放課後。俺は、教室を出て、南校舎3階にある、音楽室へと足を運んだ。
うん、今回もなんかどきどきしてきた感じがする。前回と同じく、告白だったらどうしようかな……とか、思っていたのである。
まあ考えたって仕方がないので、俺は音楽室の扉を開けた。中に入ると、既に後輩の東雲玲がいて、俺に話しかけてきた。
「待ってました、南山真琴さん」
「何で、自分の名前を……?」
確か、俺は自分の名前を名乗っていない気がするんだが?
「色々と調べたんです、姉さんに言われたので」
「お姉さんに?」
一体、何で俺の事が調べられてるんだ?
「あの、この写真、先輩ですよね?」
そう言って、東雲玲は一枚の写真を、俺に見せた。
「これ……」
そこに映っていたのは、前に親友の栗谷美鈴に連れられて、辿り着いた場所、ラブ喫茶「アイライク」で天空カイザーのキャラのコスプレをした、俺の姿が映っていた。な、何で持ってるんだ……? こいつが?
「確かに……自分だけど……これをどこで?」
「姉さんに渡されたんです、じゃあ、これ……先輩に間違いないんですね?」
「う、うん、間違いじゃないよ」
「よかった、実は、僕が手紙を出したのは姉さんに言われたからなんです「この写真に写ってる人物を探し出して」って? 美玲先輩が連れてきた人らしいので、同じ学校に美玲先輩がいたから、もしかしたらと思ってたら……先輩がいたので、手紙を出したんです」
「そ、そう……じゃあ、何で音楽室に?」
「あ、それはこういったのは秘密なのがいいかな? と思って、音楽室にしたんですけど、何かまずかったですかね?」
まずいも何も、同じ内容の手紙をもらったので、二回目? と思ってしまったんだが?
「い、いや、じゃあ自分を呼び出したのって」
「はい、先輩に行って欲しい所があるんです、知ってますよね? ラブ喫茶「アイライク」と言う場所」
「うん、知ってる、美玲に連れられてそこに行ったから」
「姉さんが来てほしいっていってるんです、今度の休みの日に、顔を出して下さいませんか?」
「休みの日ね……」
休みの日は、予定があるのかと聞かれたら、全くないのである。まあ、やる事もないし、なんで呼び出したか気になるし……
俺は、Okする事にした。
「ま、まあいいかな」
「ありがとうございます、じゃあ、僕は行きますね?」
そう言って、東雲玲は、音楽室から去って行く。ふむ……東雲のお姉さんね……一体、どんな人物なんだ……? と思いながら、次の休みの日、ラブ喫茶「アイライク」に行く事に決めたのであった。
そして……休日の日になった。
俺は、早速出かける事にした。
何故出かけるのかというと、俺に手紙を送った人物、後輩の東雲玲が「ラブ喫茶アイライクに来て下さい」と、言ってきたからである。
ちなみにこの、ラブ喫茶アイライクは、前に一度、俺の親友、栗谷美玲に誘われて、行った場所であるから、迷う事は無いだろうと思っていた。朝早くに起きて、動きやすい軽装な恰好をして、家をでる。
家の中に俺の母親と妹の亜季がいたが、声をかける事無く、そ~っと出かけて行ったのである。まあ、行く場所が、そのラブ喫茶アイライクがある。秋葉なので、普通は言えないなあ……と思っていたのであった。
そして電車に乗り、数分後、俺は再び秋葉の町に着く。
うん……前来た時と変わらず、大変にぎわっているな……とそう感じた。
通行人をよく見てみると、アニメかなんかのイラストが描かれたTシャツを来ていたり、アニメのキャラのイラストが書かれた紙袋を持って歩いている人物もいる。
うん、ホントに自由だな……と言うか……恥ずかしくないのか? そう、思ってしまった。
まあ、とにかく俺は、その秋葉の町中にある喫茶店、ラブ喫茶「アイライク」に向かう事にしたのである。数分後、ラブ喫茶「アイライク」にたどり着いて、中に入ると[いらっしゃいませ~お嬢様」と言ってきた。
うん、確かに俺は女だし、お嬢様と言うのも分かるけど、そう呼ばれるのはなんか恥ずかしいな……と思っていたら、喫茶店の奥の従業員部屋から、一人出てきてこう言ってきた。
「待ってました、真琴さん」
そう言ってきたのは、ここの喫茶店のイメージ制服なのか、やたら可愛い格好をした人であった。あれ? でも、どっかで見た事あるよ~な?
「あきらちゃんーー注文おねが~い」
「は~い、ただいまうかがいますぅ~」
あきらと呼ばれた人物は、客の座っている座席に注文を取りに行く。注文を受け終わって、再び俺の所まで来てこう言った。
「じゃあ、こっちに来て下さい」
「う、うん」
俺は、そう言って言われたとおりに、スタッフの控室に入る。中に入ると、もう既に一人いた。
「待ってました、真琴さん、私が店長の東雲紫です」
「店長さん? あれ? じゃあ、さっきあきらって呼ばれてたのって……」
「う、うん、僕だよ……先輩」
そう言ってウィッグを取ると、現れたのは……
学校で会った、東雲玲だった。
「え~と……女だったの?」
「違うよ!? これは姉さんに無理矢理やらされて……」
「別にいいじゃない? 玲、人気あるし? 嬉しいでしょ?」
「嬉しくないよ!? それにここで働いてからか、異様に男から告白されるんだけど!?」
「あら、リアルでBL? 私は家に彼氏紹介されてもOKよ~」
「嫌だ!誰が彼氏なんか紹介するもんか~!」
……なんか凄い姉弟だな……というか、外見からして姉妹に見えるんだけど?
「……で、自分が呼び出された理由って……」
「あーーそうでした、実は……南山さん、ここで働いてくれませんか? 実はお客様から、先日、天空カイザーショーをやったその後「レキ役をやってた人はいないんですか?」とかが、大量に言って来まして、私たちアイライクスタッフは、お客様のご要望をなるべく答えようと思うんです、南山さん、引き受けて下さいませんか?」
そう言ってきた、さて、どうしよう?別に働く事はOKだし、まあ……学校があるから休日しか出来ないかと思われる。それに美鈴も働いてるし?
「ちなみに、給料ってどれくらいかと……?」
「貴方なら、これくらいですかね?」
そう言って、金額を提示してきた、うわ、かなり多くない!?俺は引き受けようか、迷ったが、別にいいかな? と思って、承諾する事にした。
「じゃあ、一日だけならOKですかね?」
「それで構いません、じゃあ仕事の内容を教えますので、来週の休日に来てくれますね?」
「はい、よろしくです」
「あと、ここでの名前を決めましょうか?美鈴さんはれいれい、弟の玲は、あきら、南山さん、ここででの呼び名は、どうします?」
「じゃあ、美玲がいつも言ってるので、まこでお願いします」
「了解しました、これからもよろしくね? まこさん」
「姉さん?まこ先輩が入ったから、僕、抜けてもいい?」
「あら、駄目よ? 貴方は人気なんだから、それは却下ね」
「そうなんだ……はあ……」
こうして俺は、休日の一日だけ、ラブ喫茶「アイライク」で働く事にしたのであった。
秋葉に行って、次の日になった。
いつものように起きて、いつものように着替えて、いつものように高校へと向かう。
まあ、そんな当たり前の日々、でも、今日はそのいつものような事とは、少し違っていた。
何故かというと……
「おはようございます、まこ先輩」
そう俺に話しかけた者がいた、話しかけたのは、俺に手紙を送った人物でもある、東雲玲だったのである。
「おはよう」
「まこ先輩、昨日は姉さんの頼みを聞いてくれて、ありがとうございました」
「いや、お礼を言われるほどじゃあないかなと」
「それでもです、お店では、困った事があったら言ってくださいね? なるべく対応するので」
「わかった」
「じゃあ、今週の休みからよろしくです、では、僕は先に行きますね?」
そう言って、玲は先に行く。
ちなみに頼みというのは、東雲玲の姉の東雲紫から「バイトしませんか」と誘われて、俺は一日だけだけど、OKしたのである。
まあ、休日にいつもやる事とかなかったし、まあいいかな?と思って、引き受けたのであった。玲と別れた後、俺もゆっくりと歩いて、数分後、俺の通っている山野辺高校に辿りつく、校舎の中に入り、教室の中に入って、自分の席に着くと
「おっはよ~まこ~」
そう俺に話しかけてきたのは、俺の親友でもある栗谷美玲だった。
「おはよう」
「昨日はどうしたの?」
「昨日って?」
「昨日、まこの家に行ったらさ? 亜季ちゃんが出てきて「お姉ちゃんは、いません」って、言ってたんだ、昨日、何所に行ってたの?」
「昨日は、秋葉に行ってたかな」
「え……な、なんで誘ってくれないの? まこー私、まこを連れてそこに行こうとしてたんだよ?」
何で、俺を連れてそこに行こうとしてたんだ?
「何で?」
「だって、午後からバイト入ってたし、午前中から行って、遊ぼうと思ってたんだよ?」
「バイトって、あのラブ喫茶「アイライク」?」
「そうだよ」
ふむ、実は俺もそこで働く事にしたんだと、言ってやろうか?でも、自分から言うのもなんだしな……まあ、黙ってるか……
「ふ~ん……じゃあ、次の日の休みもバイト入れてるの?」
「うん、毎週学校が休みの日は入れてるよ」
「そう」
「??まこ? 何でそんな事聞くの?」
「いや……なんでもない、気にしないで」
「そう?」
そう話していると、チャイムが鳴ったので、話すのをやめて、授業に集中する事にした。
そして、時が過ぎ、昼休み。
俺は亜季に作ってもらったお弁当を持って、教室から出る事にした。何故教室から出て行くのかと言うと、教室の中に俺に手紙を送った人物、汐崎美咲とそのファンクラブ、MKFCのメンバーが美咲に向って「一緒にお弁当食べましょう」と言っていたからである。
じゃあ何故俺が、教室から出て行くのかと言うと、その場にいたら呼び止められるかと思ったからである。実際に俺の方を見ていて、声をかけようと動こうとしているのが見えたからであった。まあ……その美咲の周りをファンクラブメンバーが囲っていて、その場から移動させないようにさせてるみたいなので、俺は助かっていたりするのであった。
そんな訳で、俺は屋上でお弁当食べる事にした。屋上に出ると、何やら声が聞こえてきたので、なんの話をしてるのか、気になったので隠れて聞いてみることにした。
「来てくれて、さんきゅうな?」
「なんです? 僕に一体……」
「実は……お前が好きだ! 嫁に来てくれ!」
「言ってる事おかしいよ!? それに……僕は、男だあ!」
「それでも構わん!さあ、俺の胸に飛び込んでこい、マイハニー!」
「誰がマイハニーだ!」
うん……聞いちゃいけない内容だったな……内容からにして「男が男に告白してる」って事か……うん、ここはバレナイヨウに退散しよう……そう決めて、屋上から離れようとすると
「……あ!まこ先輩!」
そう言って、俺の所にやって来たのは、朝に出会った、玲であった。
「見つかった? じゃあ、自分はお邪魔みたいなので」
そう言って、立ち去ろうとすると
「ぼ、僕、まこ先輩が好きだから、貴方とは付き合えないです! じゃあ、さよなら!行こう、まこ先輩!」
「な、何だと!?」
おい!? なんか爆弾発言してない!?それに無理矢理、手を握られてというか引っ張られて、何所に行くんだ!? 玲に引っ張られて、屋上から離れると、玲はこう言った。
「すいません、まこ先輩」
「……いいから、手を離してくれると助かる」
「あ、すいません」
そう言って手を離す。
「え~っと……さっきのは?」
「呼び出されたんです……で、屋上に行ってみたら、あの男の人がいて、それで……」
「そう、なんか似てるな……」
「似てると言うと?」
「自分も何故か同姓にモテテルから……」
「そうですか……お互い大変ですね、あ、さっきはあんな事言ってすいません、さすがにああ言わないと、あきらめてくれそうになかったので……じゃあ、僕は教室に戻りますね?では、まこ先輩、さよならです」
そう言って、玲は去っていった。
うん……やっぱり話してて思ったのが、童顔なのか、かわいい女の子みたいだし、ウィッグつけたら、女装完璧だな……と思ったのである。
俺は、とりあえず、亜季の作ったお弁当を食べて、教室に戻る事にしたのだった。
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