第10話

次の休みの日、俺は、再び秋葉に行く事になった。まあ、何で行くのかというと、その町の中にある、喫茶店、ラブ喫茶「アイライク」で働く事になったからである。

朝、いつもの通りに起きて、出かける準備をする、数分で準備が出来て、いざ、出かけようとすると、俺に話しかけて来るものがいた。


「お姉ちゃん? こんな休日の朝から、何所に行くの?」


そう言ったのは、俺の妹の南山亜季だった。


「ちょっと、バイトに行って来るね?」


「お姉ちゃん……バイトって、毎週入れてるの?」


「うん……まあ、一日だけだけど」


「そう……じゃあ、私も一緒に行く!」

何故だ? 別について来ても、構わないのだが……俺についてくる理由が全くと言っていいほど不明なのだが……


「え~と……なんで?」


「だって……私、お姉ちゃんがどこで働いてるか知りたいし、それにお姉ちゃんに近づこうとする者がいたら、それを阻止したいし……ついて行っちゃ駄目……?」


そう、うるうる顔で言って来る。

まあ、別に断る理由もないので、俺はOKする事にした。


「分かったよ、じゃあ、行こうか?」


「うん、行こう」

こうして……妹と二人で、外に出る事になったのであった。二人で歩いて、駅に向かって、電車に乗って、辿り着いた場所はと言うと


「お姉ちゃん……この町で働いてるの……?」


「うん、まあ……」

その町は、秋葉と呼ばれていて、相変わらずの人だかりだった。俺と亜季は、その街中を歩いて、目的の場所へと移動する。

数分後、その場所に辿り着いて、店内に入る。


「おはようございます」


「おっはよ~まこさん、今日はちょっと早いですね」


そう言って来たのは、このお店、ラブ喫茶「アイライク」で、店長をしている、東雲紫さんだった。

「じゃあ、早速着替えて準備してくれるかな? まこさん?」


「はい、分かりました」


「で…………まこさんの隣にいる子は? もしかして……彼女?」


何で彼女って言うんだ? 普通に考えて、そう思わないだろ?


「違いますよ、妹です」


「ほうほう、それは姉妹的な関係なのかなあ?」


「いや、本当に妹……ほら、亜季」


「えっと……南山亜季です……」


「何だ、じゃあ本当に妹さんだったんだ? それにしても、お姉さんと違って、可愛い感じねえ~?まこさんは、かっこいい感じだけどね?」


「あ、ありがとうございます……確かにお姉ちゃんは、かっこいいです……」


……何で、そういう話になる?というかかっこいいって……実の妹にそんな風に言われるのも複雑なのだが……とりあえず俺は、控え室に行って、俺専用の制服に着替える。

このお店は、メイド風な衣装が用意されているのだが、俺のは違っていた。俺のは、ギャルソンとかそういった感じの制服だったりする。

着替え終わって、鏡を見ていたら、誰か入ってきた。


「だ、誰!?」

入ってきた人物は、初めて見る顔だった。


「誰と言われても……えっと、もしかして……貴方がさなさん?」


「あ、はい、桐谷佐奈です、もしかして……貴方が新しく入ってきた、真琴さん?」


「ええ、南山真琴といいます、一週間に一日だけですが、よろしくお願いしますね?」


そう、営業スマイルで言ってみると


「は……はい……」


何故か顔を赤らめてそう言ってきた、何で顔を赤らめたのが疑問なんだが……まあ、軽い挨拶して、控え室から出ると、妹の周りに、店長の紫さんその弟の玲、俺の親友の栗谷美玲が集まっていた。


「お、お姉ちゃん!?」


「あ、まこーおっはよーーうん、今日も似合ってるねえー」


「うん、僕もそう思うよ? まこ先輩」


「さすが、まこさんですね、着こなし抜群です」


「あ、ありがとう」


「じゃあ、全員集まった事だし、今日も元気に働きましょうね?お客様は神様と思って、頑張りましょう」


そう紫さんが言うと、その場にいた全員が元気よく挨拶していた。


「お姉ちゃん……こんな場所で、働いてるの?」


「うん、まあ、そうなるかな……もしかして、嫌だとか?」


「ううん……ちょっと驚いただけ……」


「で、どうする? 亜季、もう自分の仕事場は分かったでしょ?家へ帰る?」


「ううん、お姉ちゃんが終わるまで、ここにいるよ、さっき店長さんと話してたけど、ここの控え室にいていいと言われたから、そこにいるね?」


そう言って、亜季は控え室の中へと入っていった。亜季が控え室に入った後、美玲が話しかけてきた。


「亜季ちゃん、本当にまこの事好きなんだね? なんか羨ましいかな」


「何で、羨ましいの?」


「だって……まこといる時間が多いんでしょ? 私だって、まこと長い時間いたいものだしさ?」


「……」


そんな事言われても、困るのだが……

こうして、俺の二回目のアルバイトが始まった。


「さあ、今日も頑張りましょうね~」


そう店長の紫さんが言うと、アイライクのスタッフが、はいと返事をしていた。

俺も、ここの制服に着替えて返事をする。

ちなみに……ここの制服は、メイド服をイメージして作ってあるが、俺のは違っていて、どっちかと言うとウエイターかギャルソンタイプの格好をしていた。他の皆が言うには、その姿は大変似合ってるらしく、かっこいいとか言われてしまった。うん、自分ではそうは思わないんだけどな……

そして、俺のバイトが始まった。

ここのバイトは、喫茶店なので、お客様の呼び出しに答えて、注文をとり、出来たら持っていくという、普通の喫茶店と同じような感じだった。ただ違うというのは、何故か俺を呼ぶ客が、女性ばっかりだったのである。

男性客もいるのに、男性客は「あきらちゃん~」と言って、玲を呼んでいたりする。

中身が同じ同姓だと言うのに、知らないということは恐ろしいって感じだな……と、俺は思っていた。そう思っていると、まこさん~と呼ばれたので、お客の所に行く


「ご注文は、おきまりでしょうか? お嬢様」


そう、営業スマイルで言うと、お客は顔を赤らめながら「こ、これ、お願いします」とか言ってきたので俺は「かしこまりました」と言って、厨房に入る。そして、出された物をお客様の所に持っていた。


「お待たせしました、天使の微笑みです」


「あ、ありがとうございます」


「いえ、では、ごゆっくり」


そういった感じのが、何回かあって、休憩時間になったので、俺は控室に向かった。

中に入ると、一緒に来ていた妹の亜季が、ジュースを飲みながら、ぼ~っとしていた。


「亜季? 退屈だったら帰っていいよ?」

俺がそう言うと、亜季はと言うと


「ううん、お姉ちゃんが終わるまで、待ってるよ? それにしても……お姉ちゃんに声かけるの、女子ばっかだね……凄いね……お姉ちゃん」


「……凄いかどうかは、微妙なんだけど……」


そう話していると、控室に佐奈さんと玲が入ってきた。


「お疲れ様です、まこさん」


「お疲れ様、まこ先輩」


「お疲れ様、あれ?美玲は?」


「れいれいなら、まだ休憩時間じゃないので、ホールですよ」


「それにしてもまこ先輩、人気が凄い上がってますよ? まあ、女子限定なんだけど……」


「そうよね、あきらちゃんは、男に人気あるものね?」


「さなさん、それ、しゃれになってないです……はっきり言って嫌ですよ……」


「え? あの中に付き合いたいな? とか思うのいないの?」


「いません」


即答しました、まあ玲はね……? 実情を知らないのかな?佐奈さん……休憩時間も終わり、再びホールに戻ると、さっそく呼び出しがかかって、その場に行くと


「今日もあなたに会いたくて、来ちゃいました……」


そう言ったのは、先週も来た、お客様だった。


「えっと……とりあえずありがとうと言っておきますね、で、お客様、ご注文は?」 


「お客様じゃなくて、私、汐崎茜と言いますので、だから……あかねって言ってください」


汐崎茜?なんか同じ名字の人物を一人知っているんだけど……


「えっと、ちょっと聞いていいでしょうか? 汐崎美咲さんという方、知ってます?」


「知ってるも何も、私の従姉妹ですけど……美咲は……? でもなんで、美咲の事知ってるんですか?」


「同じクラスなので」


「へ~じゃあ、美咲と同じクラスなんだ? じゃあ、高校生ですね? 私は社会人だから、美咲のお姉ちゃん的な存在になる感じかな」


「そうなんですか……あ、茜さん、ご注文お願いします」


「そうね、じゃあこれね?」


「かしこまりました、すぐにお持ちしますね」


そう言って、俺は注文を受け取ったので、厨房に入る。数分後、注文を受け取って、茜さんの所に行く。


「お待たせしました、魅惑のフルーツ載せです」


そう言って、魅惑のフルーツ載せ=フルーツパフェをテーブルに置く。


「ありがとう、それにしても……本当にかっこいいですね」


そう、茜さんが言う、なんか毎回毎回そんな事言われてないか? 俺……


「は、はあ、ありがとうございます……」


「ほんとよ? よし、決めました」


「何をですか?」


「貴方を題材に漫画を描きます、私、一応漫画家志望でしてね? だから、この街にネタ探しに来たけど、貴方を主人公にした漫画でも描いて見る事にします、ね、いいですか?」


漫画?俺を主人公に?なんか、恥ずかしいんだが……断る理由もないので


「はい、OKですよ」


「ありがとう、じゃあさっそく家に帰って、描かなくちゃ、それでは」


そう言って、茜さんは、お金を払って、店から出て行ったのであった。

そして時間が過ぎ、バイト終了時刻になったので、店長にあがらせてもらいますと言い、控室に入りいつもの服装に着替えて、亜季と一緒に、家へと帰って行ったのであった。

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