第118話 メメント・モリ Memento mori

 危機に瀕した時、大滝をつき動かすのは思考でも戦術でもない。体内の細胞に組みこまれた原初からの命の衝動だ。生き延びんとする強烈な本能に突き動かされ、訓練と経験で身につけた戦闘技能を十全に発揮して状況を打開してきた。

 ところが今回はまるで勝手が違った。琉球空手家でもある父親の言葉が、だしぬけに脳裏に蘇ったのだ。


光法みつのり、よく覚えておくんだ。勝ち続けることなど誰にもできない。生き延びた者などかつて一人としていないんだ」


 俺はまだ子供で空手の訓練に夢中だった。時折り聞かされる小難しい蘊蓄うんちくは聞き流していたが、なぜか親父の言葉はどれも胸に残っている・・・だが、この状況で思い出す言葉がこれか?要はメメントモリだ。汝もまた死ぬことを知れか・・・

 汗と埃にまみれた黒い精悍な顔に笑みが浮かんだ。狂暴な戦士の不敵な笑いではない。およそ大滝らしからぬアルカイックスマイルだった。

 馬鹿げた衝動に駆られ、あろうことか敵方の人間を救い出そうと、灼熱の狭苦しい空間に這いこんだ。世界最高峰の特殊部隊のエリートともあろう者が、スラム街の埃っぽい広場で、地元のごろつきの手にかかってくたばるのか?

 窮地に陥った自分を自分で笑えてきたのだ。

 この状況はかなり滑稽だ・・・

 突然、戦闘の高揚感とはかけ離れた清澄せいちょうな心境に陥る。己を客観的に眺める別の自分が立ち現れ、思考がぷっつり途切れ心地よい浮遊感さえ覚える。次の瞬間、大滝は無意識に動いていた。行動の主体は消え去り、すべてが自動で様を観照する意識だけが存在していた。


 狭い空間にうつ伏せになったまま、眠りこんだ男の両足を掴んで引き寄せる。男の上衣から搬入口のリモコンを取り出した後、ズルズルと斜め後方へ這いずった。身体を回転させて、サイバードッグが待ち受ける通路に無防備に転がり出た。

 CK9は間髪を入れず反応した。生身の犬そのままに低く身構えて大滝を見据える。機能AIが警戒態勢を取らせたのだ。寝返りを打ってうつ伏せになったところで視線が交錯した。表情のない電子の眼がじっとこちらを注視している。バスカービルは戦闘ロボットだ。自らに危険が及ぶと判断すれば、武器系統の手動操作をAIがオーバーライドする。

 またも戦慄の一瞬だったが、大滝の心は鏡のように静まり返っていた。平然と立ち上がり、男の両足を掴んでゆっくり蓄電池の下から引きずり出した。敵などいないかのように振舞う。実際、まったく動揺していなかった。置物でも見たかのようにロボット犬を無視して、引きずり出した男の身体を肩に担ぎ上げて悠々と歩き出した。

 極度に緊張して然るべき状況なのだが、公園を散歩しているようにリラックスしている。楽しいと言っても良いぐらいだ。


 攻撃性を示す身体シグナルを微塵も見せない大滝に、バスカービルは通路を後ずさりして道を譲った。動物と異なり戸惑ったりなどしないが、敵味方の識別ができない戦況ではファジィ推論に基づき、アサルト・ロボットのAIは攻撃を抑制する。友軍相撃ゆうぐんそうげきを避けるためだ。

 大滝は開けた通路を左に折れて通用門へ向かった。ホログラスの背景映像には、十メートルほど後方を追尾するバスカービルが映っている。

 悠然と歩きながらも、潜在意識は距離を正確に見定めていた。出口まで十数メートルを歩んだところで、右手で懐から手榴弾を取り出した。サイバードッグの視野に入らないよう、身体の前でグリップを握り口元に持って行く。歯を使ってピンを抜き、下手投げから左肩越しに後方へ高く投げ上げた。硬式野球ボールの三倍は重量があるが、楽々と投げ上げた。

 一瞬間を置いてから、全力疾走にかかった。


 CK9はピタリと立ち止まり、半秒ほど上方を見上げたが、すぐさま前方に視線を転じる。逃走する大滝を捕捉したが、次の瞬間、反転して右後方の蓄電池の陰に身を躍らせた。脅威を正確に識別したのだ。直後にグリネードが地面に落下して転がった。

 男を担いで疾走しながら、その様子をホログラスでわずかに視認した。サイバードッグが突進して追尾するか、退避するかの賭けには勝ったが、70キロほどある人体を抱えて走るのは、大滝にとっても容易なことではない。搬入口を抜け抜けるや、リモコンを取り出して「閉じる」ボタンを押した。

 二枚扉がスライドしてロックがかかった直後、ズズーンという爆発音と共に、一瞬大地が揺れ動いた。扉の向こう側に、茶色がかった白煙が立ち昇る様子がホログラスに映った。旧式の破片型手榴弾の威力は、内部で爆発すれば小型のビルを倒壊させるほど強力だが、十五メートル以上離れた通用門の扉は爆風と飛散する破片に耐えた。


 意志を介在することなく無意識にすべてをこなしたにもかかわらず、計算は驚くほど正確だった。搬入口は電磁波圏外に収まりリモコンが機能した。

 サイバードッグが後方に下がり、オペレーターは通信を復旧したはずだ。だが、電磁波圏内に移動させると再び交信は途絶する。どちらにせよ、バスカービルはネットフェンスなら楽々と登れるが、広場に設置された角パイプの鉄柵を登るのは無理だ・・・

 ロボット犬が隘路へ取って返して追って来たとしても、余裕で逃げ切れると認識した瞬間、日常の思考がどっと押し寄せて来た。

 早足で歩きながら、イヤーモジュールで軍曹を呼び出した。

「フリオ、搬入口へ車を寄越してくれ」

「すぐに着きます」

「頼んだぞ」

 通話を終えた大滝は、男を肩に抱えたまま人気のない大通りを歩き出した。

 どういう訳か、身体が勝手に動いてCK9をやり過ごせた。そして、また時が止まった・・・俺の中で何かが決定的に変わりつつあるようだ・・・

 柄にもなく思いを巡らせたその時、背後で聞き覚えのある金属音が響いた。大滝はビクッとして後ろを振り向いた。


 扉が開いたッ!まさか、広場にはブレーカーがあったか?送電が止まり電磁波が途切れる!

 爆発で蓄電池が損傷して漏電探知機が作動したらしい。慌ててリモコンの「閉じる」を押したが反応しない。

 非常時開放だ!

 施設を制御するAIが緊急避難モードを起動させたと悟り、大滝は蒼ざめた。煙が薄らいで視界が開けたが最後、オペレーターが通信機能を回復した今、ほんの一瞬でもサイバードッグの視線に留まれば、瞬時にレーザーか実弾の餌食になる。

「門が開いた。急げ!バスカービルに追われるッ!」

 軍曹の返事も待たず、死に物狂いで駆け出した。最前とは打って変わり生存本能に激しく突き動かされたが、男を投げ出して逃げるという考えは、微塵も思い浮かばない。

 ホログラスの背面画像に、広場にたなびく煙が緩やかに流れ去るのが見えた。銀色の影が煙越しにこちらに向かって来る。前方からはエアカーが急接近して来た。


 大滝は猛然とラストスパートをかけた。メカマニアの軍曹は、熟練のレーシングドライバーでもある。急制動をかけると、すれ違うタイミングを計り、エアカーを右へ急反転させた。車体が大きく傾き、路面を擦った右側面から火花を盛大にまき散らしながら、センターラインを跨いで横向きに停止した。

 大滝は車の陰に身を寄せ、男の身体を車体にもたせ掛けるように座らせた。辛うじて間に合った、と思ったのも束の間、ビシッ、ビシッと異音を発してエアカーの左側面に着弾した。立て続けに不気味な音が続く。

「実弾です!ホバーを狙っています!」

 運転席に身を屈めて、ロペス軍曹が叫んだ。その間も、バスカービルは疾走しながら、前後のホバーに実弾を撃ちこみ続けた。両肩に格納された銃身が左右に小刻みに動く。正確無比の射撃だ。

 ホバーをやられたら逃れる術はなくなる!

「着地しろッ!」

 大滝が叫ぶや軍曹がエアカーを着地させた。サイバードッグの頭部は、地上一メートルほどに位置する。走りながら地面と車体の隙間を狙い撃ってホバーに命中させるのはさすがに難しい。

 だが、頑丈なホバーはまだしも、市販の軽量エアカーの車体はひとたまりもない。小火器の高収束レーザーは車体を貫通しないが、オペレーターがその気になれば、車内の人間を実弾で射殺するのはいともたやすい。


 この状態では逃げ切れない!

 軍曹は咄嗟にパネルを操作して後部座席のドアを開き、切羽詰まった声を出した。

「波動砲がありますッ!」

「使えるのかッ?」

 大滝の目に獰猛な輝きが宿った。

「充電済みです!」

「よしッ!」

 大滝は身を屈めたまま、波動砲を座席から引きずり出した。スイッチを起動するや、ウィーンと振動音が響き、青いランプが点灯した。

 CK9が目前に迫っている。勝負は一瞬だ。ヤツが俺を視認する前に撃つ!

「うおおおッ!」

 重量挙げさながら気合のこもった唸り声を張り上げ、百キロ以上ある波動砲を両手で抱えて立ち上がりざま、エアカーのトランクの上に乗せ上げて即座に引き金を引いた。その刹那、千分の一秒で反応したCK9の銃撃が、波動砲に命中して火花がパッとパッと散ったが、重量のある砲身の慣性がまさった。金属音を発して跳弾が耳元を掠めて通過したが、戦場で身につけたくそ度胸で瞬きひとつしなかった。ずんぐりした丸形砲に身体が隠れると計算済みだ。

 発射の猛烈な反動を後ろに二、三歩たたらを踏んで持ちこたえる。モビールスーツ用に開発された重器だ。常人なら波動砲が身体にめりこみ後方に突き飛ばされるほどの衝撃を、大滝は頑強な四肢で食い止めた。

 筒状に伸びる振動波が故に、精密な照準が必要ないのが波動砲の強みだ。わずか十数メートルの距離では、軽量ロボット犬の超速反応を以てしてもかわすのは不可能だった。サイバードッグは、唸りを上げる衝撃波をまともに浴びた。文字通り宙を舞って二十メートル以上後方へ吹き飛び、乾いた金属音を立てて路上に落下した。


 軽量化したロボット犬は、電子機器の耐衝撃機能が脆弱だ。こと切れたバスカービルは、死体さながらの哀れをもよおす姿で路面に横たわっていた。大滝は軍曹に向かって親指を立てて白い歯を見せて笑った。

「助かったぞ、フリオ!地獄で仏とはお前のことだ。プラウドと警察が来る前に撤退だ。この男を米軍病院に連れて行く」

 軍曹は言葉もなくうなずいて、ほっと安堵のため息をついた。穏やかな日曜日のドライブのはずが、銃撃を受けた上に、市街地で波動砲を発射するとは思いもよらぬ展開だった。



 二時間後、男をメガロポリス米軍病院に任せて二人は帰路に着いた。車体に十数発の銃弾を受けたが、幸いホバーの駆動系統は無傷だった。病院では事件性を疑われ、在日米軍憲兵隊の事情聴取を受ける羽目になったものの、大滝の身元が極秘扱いと判明した時点で、聴取は即座に打ち切られた。車を調べられることもなかった。

 穏やかな夏の西日を浴びながら、エアカーは中国自動車道を滑るよう進んだ。

「フリオ、お前が波動砲を持ち出したおかげで、厄介ごとに巻きこまれずにすんだ」

 大滝は例によって泰然自若としていた。

「いえ・・・運が良かっただけです」

 大尉にすれば、今日の出来事は厄介ごとの範疇に入らないらしい・・・

 神経症の軍曹には到底理解しがたいメンタリティだ。厄介ごとどころか、九死に一生を得た、というのが正直な心境だった。

 事態が推移している最中は、不思議と集中して冷静に行動できる。ところが、事が終わると途端に心配性の自分に戻ってしまうのが、ロペス軍曹の悩みの種だった。

 戦場のような心構えも装備も計画もなく乗り切れたのは、運が良かったとしか言いようがない!

 大尉が一瞬のチャンスをものにしたが、波動砲を後部座席に載せたのは、とりわけ幸運なめぐり合わせだった、と思う。

 あの場面でトランクを開け波動砲を取り出そうとしたら、バスカービルは易々と大尉に照準を合わせて、殺さずとも行動不能にできた・・・生け捕りを狙ったのか、サイバードッグのオペレーターも殺戮モードを起動しなかった。起動されたら最後、車はハチの巣になり、あの男もろ共大尉も自分も絶命していた。裏組織は殺害隠蔽に手慣れている・・・警察が乗り出す前に三人の死体を運び出し、すべてを闇に葬ることもできたはずだ。大尉の正体に勘づいてアメリカ政府の報復を恐れたか、それとも他に理由があるのか?

 日常に戻るや、深く物事を詮索せずにはいられない軍曹の性癖が頭をもたげた。

 

「ところで、あのタオという軍属だが妙だと思わんか?」

 大滝が言った。病院で素顔を見た瞬間、イワクニ基地で働く新入りの従業員だと気づいたのだ。

「思います」

「虎部隊が米軍基地のジャニターに扮しているのも妙だが・・・」

「あの男は武器を持ち歩いていました。ラガマフィンと素手で渡り合う必要はなかったはずです」

 軍曹が後を継いで言った。事件のあらましを病院で聞いていたから、阿吽の呼吸で会話が弾む。

「そうだ。武器を使って連中を翻弄すれば、易々と逃げおおせた。サイバードッグに襲われる前にな」

タオという名の男の戦いぶりを目にした時、大滝は何かを振り払うかのような情念を感じ取ったのだ。

 戦士の魂を感じた。だから、ヤツを放っておけなかった。

 大滝には馴染みのない自己分析だったが、正鵠を射ていると直感が教えた。むろん、尾行者の正体を突き止めたいという動機もあったが、大滝を突き動かしたのは、男に抱いた敬意だったのである。

 戦士は何かを守るため命を張る・・・闘争好きの暴力人間とは根本的に異なる。


 と、大滝の心中を推し量ったように軍曹が言った。

「大尉、レッドマンデー事件を知ってますか?」

「いや。何だそれは?」

「これを見てください」

 軍曹はエアカーの前部モニターに動画を映し出した。二十年以上前の事件を、ドキュメンタリータッチで描いた民放の番組だ。先日の燃焼爆弾抗争を受けて組まれた特番だった。大滝はしばし食い入るように画面に見入った。

 日中政府が隠蔽したスパイ容疑を取り上げた番組は、虎部隊が以前から日本に侵入していると示唆する内容だった。

 五十人以上の地元自警団と徒手空拳で戦い、すんでのところで力尽きた中国のミュータント兵士の逸話か。さては、燃焼爆弾事件の裏に気づいたか?日本の民放も捨てたもんじゃないな・・・

 当の虎部隊アジトを粉砕した当事者として、いささか感銘を受けた大滝は左拳で顎を擦った。考えこむときの癖である。

 軍曹がすかさず説明した。

「テレビ局は仮名かめいにしていますが、虎部隊員の本名は李振藩リージャンファンです。タオの本名は李道栄リータオイェイです」

「親子か・・・なるほどな」

 徒手空拳で戦う姿にメッセージ性を感じたが、ラガマフィンに殺された父親の弔い合戦なら納得がいく。大滝は神妙な顔で二、三度うなずいた。

「おそらく、そうです」

 軍曹も重々しい声を出した。大滝と異なり格闘家の心理にはうとい。むしろ、虎部隊が在日米軍基地に潜入している、と国防総省に報告しなければならないのが気がかりだった。

 大尉の関与も、波動砲を持ち出したことも明るみに出る・・・


 と、今度は大滝が軍曹の機先を制した。

「あの男は少林拳を使った。虎部隊なら効率の良い戦闘術を使う。身体が覚えこんでいるからな。咄嗟には切り替えが効かないものだ」

 軍曹は驚いて目を見張った。

「すると、虎部隊員ではないのですか?」

「いや、今日まで気づかなかったが、ヤツには見覚えがある。アジト急襲の時に見かけた。今日の動きも人間の運動神経ではない。ミュータントなのは間違いなさそうだが、どうも解せない。たとえ長年の私怨絡みでも、虎部隊員が尾行をおっぽりだして、民間自警団と戦うか?しかも、奴は単独行動だった」

「では、何か裏があるのですか?」

「まだ分からん。だがな、イワクニ基地に潜入したのが、機動スーツの機密情報狙いなら、俺を尾行するか?留守の間に地下室を狙うはずだ」

 地下室へ続く唯一の通路は、基地の機密システムと警備兵が昼夜を問わず厳重に守っている。万が一の侵入や侵攻に備えて、基地を管理する海兵隊は、地下室に自爆装置まで設置する念の入れようだ。わざわざ基地本部から離れた格納庫の直下を選んだのは、何も人払いだけが目的ではない。抜け目のない米軍上層部は、証拠隠滅に都合が良い場所を抜かりなく選んでいたのだ。

 仕掛けられたGPS発信機には、そもそも盗聴機能はなかった。しかも、基地内で起動させた日には、たちまち警報システムに引っかかる。大滝も軍曹も機密盗難はまず起こり得ないと承知していた。


「すると、あの男の目的は大尉の監視ですか?」

 大滝はうなずいた。

「おそらくな」

「では、あの男は米軍に任せて静観しますか?」

「そうだ。奴が基地に戻るかどうか分からないが、正体を探ってくれ。俺たちがGPSに気づいたとは知らないはずだ。泳がせる」

「わかりました」

 軍曹は快諾した。病院側に「たまたま道路脇で見つけて助けた」と伝えた時点で、軍曹には大滝の意図が半ば読めてもいた。大滝は男が虎部隊とはおくびにも出さなかったし、むろん、病院側は男に軍の機密である救助者の身元を知らせることもない。大滝が尾行者を助けた理由は判然としなかったが、ともあれ厄介な報告書に頭を悩まさず済む、とロペス軍曹は内心救われた気分だった。

 とんだ拾い物を病院に送り届ける羽目になったが、今日は他にも大きな拾い物があった・・・


 軍曹が口を開こうとした矢先、大滝が言った。

「フリオ。聞きたいことがある」

「どうやって検問を抜けて、スラム街に入ったかですね?」

 軍曹が生真面目な顔で尋ねた。

 鋭い奴だ・・・

 大滝はニンマリ笑ってうなずいた。

 基地の汎用エアカーは民間のレンタル車だ。海兵隊のナンバープレートは付いてない。となると、ラガマフィンはトランクまで調べる。座席に載せた波動砲を見逃したのはなぜだ?

 車両ナンバーは車体固有番号と連携しているから簡単に偽造できない。だが、軍のIDなら模造品が山ほど出回っている。ラガマフィンはIDを信用しない。となると、フリオはどうやって検問を抜けた?何か離れ業を使ったに違いない。おまけに、波動砲には新品のバッテリーまで付いていた。

 大滝は興味津々だった。


 軍曹は不意に改まった口調に代わり、真顔で切り出した。

「その件ですが、重要な話があります・・・」

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ニュークリア・オプション The Nuclear Option 深山 驚 @miharumiyama

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