捉えがたい不安。

一人でいたいのに一人にはなりたくない。きっと誰しもが孤独に耐えながらも生きている。この作品にはそんな葛藤を『矛盾』と題しているが、誰しもが抱いている二律背反の感情なのだろう。それゆえに他人事とは思えないのだ。

柵を乗り越えてしまうことは容易い。相反する感情を飲み込めず、許してあげることができない者が行き着く先は決まっているのかもしれない。捉えがたい不安を抱えながら、涙を流すこともなく落ちていくしかないのだ。

自分のことがわからない……、他人のことはわかるのに……。

その言葉が異様な鋭さをもって心に刺さった。寂しさと悲しさを抱きながら生きることは辛いものなのだ。それでも生きようとも考える。柵を乗り越えるのは容易いのだから。