脳内ラジオ

カゼタ

親友の倒れた日/記念すべき放送初日!いきなりのアシスタント遅刻!どーなるスタートダッシュ!

♪〜マイトガイのテーマソング〜♪

マ「皆さんこんばんは‼︎糖尿病と高血圧・高脂血症に脂肪肝というダイナマイトを腹に巻き、うつ病という導火線で暖を取っている漢(おとこ)、マイトガイ・カゼタです!絶賛入院中ですが、20分前にちょっと病室から拉致されて、今、多分札幌市内の何処からか、喋っております!本日2021年11月26日、午後11時42分という、とんでもなく中途半端な時間からですが、とうとう本日からお送りする運びとなりまして、めでたく初放送を迎える運びとなりました‼︎イェイッ‼︎」やる気のないパラパラとした拍手

マ「さぁ、こうして迎えためでたい初放送ですが、私、マイトガイ・カゼタの日々の何でもない出来事を語ったり、私が愛してやまない70年代フォークソングの弾き語りを突然始めたりと、驚いた事にまだ番組のコンセプトについての会議が始まる前に、電波に乗ってしまったという、自由極まりない番組です!なんせ、私も15分前に企画聞いて、白紙台本渡されて、気付いたらマイク前でオンエア5秒前だったと言うね?番組のケツの時間も決まってなくて、プロデューサーさんも、『マイトさんの匙加減でイイっすよ!』って丸投げで…ぶっちゃけると、番組スポンサーもまだ付いてないらしくてね、いわゆるギャランティのハナシとか、放送終了後に私が無事に病室へ帰れるかも決まってなくて、後でね、ちょっと色々話合わないといけないんですけどもね…」スタッフの爆笑が入る

マ「まぁ大人の事情はともかく、スタッフとスタジオと、あと、やたらお高そうなマイクとヘッドフォン用意されちゃあ、あとはもう、楽しく番組をお送りしていくしかないので、ガンバリマス‼︎」拍手が入る

マ「さ、切り替えて…まずは私、マイトガイ・カゼタですけども、15分前に聞いた話じゃ、本日は相方と2人でね、自己紹介し合いながら番組スタートの予定だったんですけども、相方のイーグルアイ★那須原が、ちょっとまだ企画すら聞いてないというか、今名古屋行ってるらしくてwww」スタッフのoh…という声が出て入る

マ「もうね、全てが適当なのでね、自己紹介と相方紹介は次回!ねッ!もう、それまでに台本お願いしといて…」スタッフ、笑いながらカンペをかざす

マ「え?不定期なの?この番組?もしかしたら次回は明日かもしれない?…あー、そうなのねぇ…うん…那須原間に合うのかな?まぁいいやwさ、イーグルアイ★那須原氏とはね、もう3歳の時からの付き合いでね、いわゆる幼馴染、腐れ縁で…そこら辺も、次回に回しますね!」スタッフのカンペがまた上がる

マ「あ、なんか指示が来ましたよ?…小話を一つして締めろ?案外自由じゃなかったなぁ…それじゃあ病院ネタでひとつ…あの、すんごいどーでも良い話なんですけれど、昨日、用を足しにトイレに入ると、少し湯気の立った黄色い液体を、なみなみと半透明なマグカップに入れたまま出てきたお爺さんと入口ですれ違って、思わず二度見しちゃったのね?

あ、ホントに「飲○療法」をやる人って居るんだなぁ‼︎って。んで、今日なんですけど、ウチの病院って無料でほうじ茶が飲めるんですよ。しかも、熱いのと冷たいの、わざわざ2種類も用意してくれてて…色も麦茶くらいのね?

ありがたい話で、コレのおかげで、大分飲料代が浮いて、助かってるワケです。私は猫舌ですんで、熱いの半分、冷たいの半分で、ちょっと湯気が立つくらいが良いんですね。熱いのが出るボタン押して、冷たいのが出るボタン押して。自動で出るので、カンペキに毎回、ちょっと湯気が立つくらいで、今日も程よいほうじ茶をもって、部屋へ帰ろうとしたら…

ちょっと用を足して帰りたくなっちゃって、まぁ、横着しちゃってね。ほうじ茶と連れ立ってトイレに入って、済ませて、手を洗って。出口でちょうど、その時のお爺さんとすれ違って。なんか、凄い勢いで振り返って二度見されたんですよ、手元のほうじ茶をこう、ガン見して。釣られて私も見てみたら…まぁなんと、いつもは焦茶色のほうじ茶が、キレイな山吹色の液体に見えるじゃありませんか!

すまし顔で部屋に帰って、冷静に見てみると、どうやらいつの間にか、ほうじ茶の種類が変わっていたらしく、より薄い黄金色の物になっていたみたいなんですね?

多分トイレでの反応を見るに、私が「○尿療法を実践する爺さん」だと思った爺さんも猫舌で、半々がお好みだったって事と、私の事を「飲○療法を実践するあんちゃん」だと思った事は間違いないでしょうね。しかも、ほうじ茶が変わったことにあの爺さん、気付かないだろうから、私の方の誤解は解けないんだろうなぁ…というお話でしたw」

〜♪マイトガイのテーマソング♪〜

「さぁ、不思議な始まり方をしたこのラジオですが、不定期でのお送りとなります。毎回、何も知らされない私、マイトガイ・カゼタが体当たりで挑むという事ですので、どうなるかわかりませんが、どうか、よろしくお願いします!お相手は、マイトガイ・カゼタでした〜〜おやすみ‼︎」


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 夕方15時にオレが駆け付けた時には、既にアイツは色んな点滴や電極に繋がれて、虚ろな目を開いたり、閉じたりしながらも、昏睡状態に陥っていた。傍らにはよく見知ったアイツのおじさん、おばさん、妹が、皆固唾を飲んで見守っている。みんなと黙礼を交わして、アイツの近くに用意された椅子に座り、顔を覗く。


 昨日までは、ちゃんと意識もあって、しっかりと意思疎通もできて、普通に歩き、院内のジムで運動までしていた。確かにうつ病で入院していたし、糖尿病や高血圧、高脂血症に脂肪肝なんかも患いながらも、少しずつ数値は良くなっていたという。


 昨夜だって、オレと下らない電話をして、深夜ラジオのDJなんてやってみてぇなぁ、なんて、ゲラゲラ笑いながら、消灯時間まで話していた。たった12時間前だ。


 今朝5時半、アイツの妹から、錯乱しかけた状態で、アイツが突然、酷い昏睡状態に陥ったと電話があった。一時的に脳波が止まる程の、危ない状態だと。


 オレは取るものもとりあえず、その日朝一番の飛行機をとって、名古屋から北海道に駆け付けた。生憎の吹雪に阻まれて、大きく予定が狂ってしまったが、事態が悪化する前に、こうして親友の横に駆け付けられたんだ。


 今朝方4時前、アイツは病室の前で倒れている所を発見された。白目を剥いて、泡を吹きながら、ラジオ、ラジオ…と呟き、動かなくなったという。


 あらゆる検査やデータを精査した医師陣にも、アイツの置かれた状況は医学的に、昏睡状態、としか説明できないという。ただ、一度止まった脳波が動き出して、通常ではあり得ない波形を描いているという事だった。


 アイツの横で、ただ何も出来ない、もどかしい時間が流れてゆく。

 

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