Wild Turkey

Jack Torrance

ホワイトハウス狂騒曲

11月第4木曜。


人はサンクスギビング デー(感謝祭)と呼んでいる。


もしくは、ターキー デーと…


ホワイトハウス周辺は殺気立っていた。


ホワイトハウスを取り囲むようにテロ特殊部隊が配置され頭上には軍用ヘリUH-72B ラコタが旋回している。


「おい、バイデン、あんた、さっきから俺の話をちゃんと聞いてんのか?もしかしたら、俺のフレンドリーな態度が伝わっていなかったのかな。今日は、こう呼ばせてもらってもいいか、ジョーと…」


アメリカ合衆国第46代大統領ジョーバイデンが両手両足を結束バンドで縛られてホワイトハウス内のウエストウイングにある大統領執務室の床の上で壁に背を預けて座っている。


一羽の七面鳥がワイルドターキーのボトルを片翼に持ちもう一方の片翼にはコルト 41の銃口をバイデンに向けて構えている。


七面鳥は酩酊状態で深く沈んだブラウンの瞳をしていて視点は定まっていない。


まるで、蒸発した妻を探し求めている発狂寸前の男の眼差しだ。


七面鳥の名はマーティン“ルーサー”ピンク。


全米七面鳥組合の組合長で七面鳥界のポルノを牛耳っているドンである。


名は、あのノーベル平和賞を受賞したマーティン“ルーサー”キングに由来している。


マーティンのおふくろでポルノ雌鳥だったエバが七面鳥界とポルノ界の未来を切り開くキングのような存在になってもらいたいという嘱望から名付けられた。


エバはマーティンが2歳の時にオーバードースで死んでしまった。


マーティンの親父はポルノ雄鶏だという事はエバの親友スカラから聞いてはいるがエバの出演作は5000本を超えていて千鳥斬りはゆうに超えているので父親は特定出来なかった。


マーティンが、ふと視線を窓に移す。


俺とした事がと電車を下車する際に忘れ物に気付いて慌てて取りに戻る田吾作のように急に慌ただしくなった。


執務室の机にワイルドターキーとコルト 41を置き窓のブラインドを急いで下ろした。


「フー、危なかったぜ。狙撃手に脳天をぶち抜かれるところだったぜ」


右翼で顔を扇ぐマーティン。


バイデンは気付いたかと心の中でチッと舌打ちした。


もうちょっとで今夜の支援者を招いているパーティー用のターキーは買わずに済んだのになと…


「おい、ジョー、あんた、今心の中で舌打ちしただろ」


バイデンは仏頂面で無言を貫いた。


その表情は前政権のドナルド トランプの不機嫌な時の表情を彷彿させた。


来年の中間選挙で民主党の牙城となるバージニアでの前哨戦知事選挙。


バイデンが推す民主党候補者がトランプが推す共和党候補者に敗れた時はバイデンの表情も表面的には取り繕っていたが裏では不機嫌極まりない表情になっていただろう。


人とは機嫌を損なった時には顔に出るものである。


そして、今眼前で起きている七面鳥のマーティンによるハイジャック。


バイデンは己の身の危険とターキー デーに七面鳥に拉致監禁されるという極限状態に苛立ちを隠し切れなかった。


マーティンがターキーのボトルを呷って机にドンと置いた。


バイデンが普段執務中に座っているクッションの効いたキャスター付きデスクチェアにどっかと座り翼を頭の後ろに組んで足を机に放り出した。


「ジョー、あんたも中国やらロシアやらとのコミュニズム(共産主義)強権国家との外交やら何たらやで忙しいだろ。それに、コロナにタリバンと頭を悩ます毎日なんだろ。それにしても、あんた、忙しいっていっても昼飯はサブウェイのテイクアウトか。いやー、気に入ったぜ。あんたの庶民的なその姿勢が」


机の上には先程、大統領補佐官の部下が買って来たサブウェイの紙袋が置いてある。


「ジョー、あんた、サンドイッチは何が好きなんだ?ちょっと、俺も腹減ってきたから摘ませてくれよ」


ジョーが苦虫を噛み潰したような表情で嫌々口を開いた。


「玉子とハムのサンドイッチとツナサンドはあんたの好みじゃなかろう。食いたい物があるなら外にいる交渉人に運ばせればよかろう」


マーティンは嘴を窄めて口笛を吹いた。


「ヒュゥ~、超ラッキーだぜ。俺、玉子とハム、それに、ツナ。全部、俺の好物じゃねーかよ」


マーティンが紙袋の包みを開けようとした時だった。


「ちょ、ちょっと待て」


バイデンが焦って言った。


「う、嘘をついておった。な、中身はターキー ベーコン エッグとターキーブレストじゃ」


マーティンの目付きが険しくなった。


「ジョー、あんた、そんなにターキーが好きなのか?あんたくらいの歳になったら高脂血症とか動脈硬化なんかに気をつけねーといけねーんじゃねえのかい?ところで、去年のクリスマス何食った?政治家ってのは記憶力が大事だぜ。すぐにてめえに都合が悪くなったら記憶にございませんって言うクソヤローばっかだかんな」


ジョー バイデン政治家生命を賭けた一世一代の思案の為所。


バイデンは認知症の老人が昨晩の夕食をテストで尋ねられゆっくり思い出しながら答えるように答えた。


「うーん、あの晩は何を食ったかのう?キャセロールを食べた。あれは、確かじゃがいものキャセロールじゃった。ほくほくのじゃがいもとチーズ、ブラックペッパーがマッチした実に美味いキャセロールじゃった。妻のジルは、よく出来た家内でな。ファーストレディとしても申し分無しじゃよ。去年のクリスマスは選挙でゴタゴタしてたけど感慨深いクリスマスじゃったな。それから、ジンジャーブレッドクッキーも食ったな。いやー、去年のクリスマスは楽しかったよ」


バイデンは蟀谷が引き攣ったような笑いを見せながら返答した。


マーティンがサブウェイのターキー ベーコン エッグとターキーブレストをゴミ箱に投げ入れてバイデンに尋ねた。


「おい、ジョー、えらい小食だな。ほんとにそんだけか?ほら、メインにドーンと食い応えがあって腹に溜るもんを忘れちゃいやしねーか」


バイデンが白々しい演技を見せた。


「あっ、忘れておった。あれは、確かローストビーフじゃなかったかのう」


マーティンがターキーを一口呷って聞いた。


「よし、そっか。じゃあ、俺は今からあんたのかみさんに電話して聞いてみるとすっか。確か、ジルだったよな」


マーティンは受話器を取ってダイヤルをプッシュしようとした。


バイデンが焦った。


「い、いや、ちょっと待て。わしの記憶違いだったようじゃ。あ、あの日は、た、確かターキーのスタッフィングのクランベリーソース掛けだった。ありゃあ、美味かったなあ」


バイデンが去年のクリスマスディナーを思い出し口一杯に唾が溢れる。


マーティンの目付きが厳しくなった。


マーティンがターキーのボトルに翼を伸ばそうとした時だった。


トゥルルルルトゥルルルル


執務室の電話が鳴った。


マーティンはもう一方の翼で受話器を取り、もう一方の翼でターキーを呷った。


「もしもし」


受話口から男の声がした。


「グァッ」


マーティンは開嘴一番ゲップをした。


バイデンは酒臭い臭気にヘドが出そうだったが結束バンドで監禁されている為に抗う事は出来なかった。


「もしもし、私はワシントン市警のネゴシエーター、ジョセフィン スコットだ。大統領はご無事でいらっしゃるんだな。スピーカーに切り替えて大統領の声を聞かせてもらえないか」


「ああ、そんくらいならお安い御用だぜ」


マーティンは電話に付いているスピーカーのボタンを押した。


スコットが言った。


「大統領閣下、ご無事でございますか?」


「ああ、私は大丈夫だ。分かっておるだろうな。我がアメリカ合衆国は如何なるテロリストとも交渉はせん。それを肝に銘じるんだ」


マーティンがけたたましく笑った。


「ジョー、そんなら、あんた今日死んじまうぜ。悪い事は言わねー。大人しく俺の指示に従えって。おっと、なんか薬が切れて来たみてえだ。冷や汗が出て来ちまったぜ。ターキーがコールド ターキー(麻薬の禁断症状で見受けられる症状として現れる鳥肌が調理前に羽を毟った七面鳥の肌のようである事から禁断症状を示唆するスラングとして定着)なんて洒落になんねーからな。ちょいと一発決めさせてもらうぜ」


そう言ってマーティンは羽の中からパケを取り出し机の上に一筋作って思いっきり吸引した。


「キャッホー、これだよこれ。頭ん中がクリーンになってきたぜ」


バイデンが憐れなジャンキーを見るように目を瞑って首を横に振った。


「嘆かわしいジャンキーターキーじゃな」


スコットがマーティンに呼び掛けた。


「おい、あんた、名は何て言うんだ。要求は何なんだ?」


「俺の事はミスター ピンクと呼んでくれ。『レザボア ドッグス』のスティーヴ ブシェミみてーでかっこいいだろ。『レザボア ドッグス』はマイケル マドセンやクリス ペンなんて渋い役者も見所だぜ。中でもブシェミは最高の役者だぜ。あんた、コーエン兄弟の『ファーゴ』と『ビッグ リボウスキー』観たか?ありゃ、最高の映画だぜ」


マーティンがブシェミの素晴らしさを語っていたら男が割り込んできた。


「あー、うるさい、うるさい、うるさい、お前は何様だ」


マーティンがこの言葉にむっとした。


「あんた、誰だ?」


「私はテロ特殊部隊を指揮しているコナン ベルナード大佐だ。お前にたいな七面鳥のクズは俺がこの手で抹殺してやる」


マーティンが、また嘴を窄めて口笛を吹いた。


「ヒュゥ~、あんた、気に入ったぜ。スコットと代わんな。交渉と行こうじゃねえか」


ベルナードがスコットに代わった。


「ミスター ピンク、私だ。じゃあ、要求を言ってくれ」


「スコット、あんたにとっても悪い条件じゃねーぜ。スコット、あんたのチンポコをベルナードにしゃぶらせてCNNで俺が見られるように中継しな」


スコットの顔面が蒼白になり、それをスピーカーで聞いていたベルナードが鬼畜の形相で電話をスコットから奪い取り怒鳴り散らした。


「お前、なめてんのか。絶対にお前を八つ裂きにして今夜のディナーにしてやるからな」


マーティンがコルト 41を翼に握りバイデンの蟀谷に押し当てて言った。


「ジョー、あんたの口から言ってやんな」


バイデンがスピーカー越しに引き攣った声で言った。


「たった今から我がアメリカ合衆国は方針転換する。テロには屈しないというスタンスを頑なに貫いて来たがテロリストとの交渉は許容範囲内で交渉する。そう言う事だ。ベルナード大佐、済まないがスコット交渉人の逸物をしゃぶってくれたまえ」


ベルナードが雪山でイエティを目撃して「エー、マジですかー!」といったような驚愕と恐怖が入り交じったような表情になった。


しかし、そこは数々の修羅場を潜り抜けてきた千軍万馬の兵(つわもの)であり不屈の精神を持つ屈強な男、コナン ベルナード大佐、46歳。


ベルナードは己を取り戻し侃侃諤諤とバイデンに述べた。


「し、失礼ですが、大統領閣下。私にも故郷に両親兄弟、そして結婚18年になる妻と16と14になる息子もいます。公衆の面前、それもカメラを前にしてそのような恥ずべき行為は致しかねます」


バイデンの表情が険しくなった。


「ベルナード大佐、君の面子とプライド。それと、世界のトップを走り続け世界を牽引しているアメリカ合衆国大統領の命を天秤に掛けた時にどちらが重たいと思うのかね?答えてみたまえ、ベルナード大佐」


ベルナードは声を詰まらせながら言った。


「そ、そ、それは、む、無論、大統領閣下の命であります。自分のプライドなどは蟻のような小さな存在のような物であります」


ベルナードはホワイトハウスに向かって敬礼した。


バイデンは見上げた男だという感嘆の表情でベルナードを誉めそやした。


「よくぞ言った、ベルナード大佐。それでこそ、我がアメリカ合衆国が世界に誇る士官の鏡だ。さあ、ベルナード大佐、スコット交渉人のベルトを緩めてジッパーダウンするんだ」


ベルナードが再敬礼して言った。

「イエッサー、大統領閣下」


スコットがバイデンとベルナードの会話に割って入った。


「大統領閣下、私にも妻と11歳になる娘がいるのですが…それに、私にも羞恥心というものがございまして」


バイデンがスコットに尋ねた。


「スコット交渉人、君の逸物はそんなに小さいのかね?」


「い、いいえ、大統領閣下、人並み、いいぇ、ちょっと語弊がありました。う、馬並みはあろうかと…」


バイデンの顔が綻んだ。


「スコット交渉人、それならば胸を張ってテレビの前の視聴者に君のそのバカでかい逸物を拝ませてやればよいではないか。君は、ただそこに立って気持ち良く射精するだけでいいんだよ」


マーティンがバイデン、スコット、ベルナードのやり取りから機が熟したと見てしゃしゃり出て来た。


「よし、カメラ、スタンバったか。俺の本業はポルノで飯食ってっから注文はうっせーぞ。よし、始めっぞ。カチンコ切ってくれ。よーし、アクション」


見つめ合うスーツ姿のスコットと軍服姿のベルナード。


ベルナードがヘルメットを脱いでスコットの股間の位置に顔を持ってきた。


マーティンが羽からメガホンを奇術師のように取り出し指示を送る。


「手際よくバックル外してジッパーダウンしたらスラックスとブリーフは同時にストンだ。そっから即尺だ。私、これに飢えてたんですってゆー迫真の演技でむしゃぶりつくんだ、ベルナード、分かったか?」


カメラ目線でとろんとした目付きでベルナードの口淫が始まった。


そそり立つスコットの馬並みの逸物。


スコットにもベルナードにも伸し掛かる大統領を救うという重責。


多くの面前だけでなくテレビで生中継されているという緊張感。


拭い去れない恥辱。


ワシントン市警の同僚や戦友や部下の前でのオーラルセックス。


スコットとベルナードの胸中に複雑な思いが入り交じる。


ベルナードがエンパイア ステート ビルディングのように高くそびえ立ち合金工具鋼鋼材のように硬くなった逸物をぎこちなく口に含んだ。


そして、ぎこちなく首を動かした。


「カ~ット、カット、カット、カット」


マーティンの怒号が大統領執務室のスピーカーを通してポルノ撮影現場と化したスコットとベルナードに届く。


一時、口淫がストップしてベルナードがカメラ越しに元ポルノ現ハリウッド女優サーシャ グレイよろしく!


監督、あたし、今の演技不味かったですか?といったような表情でカメラのファインダーを覗き込んだ。


「ベルナード、フェラは究極の愛情表現の一つだ。愛おしい物を慈しむようにしゃぶるんだ。足の裏で大地を感じるように舌先でスコットのでかい馬並みのチンポコを感じるんだ。そして、鳩が餌を啄むようにしなやかに首を振るんだ。分かったか?よーし、んじゃあ、テイク2、カチンコ切ってー、アクション」


ベルナードは自身を奮い立たせスコットの隆起した逸物を口に含む。


得も言われぬ恍惚な表情を内心に抱えている羞恥心とは裏腹に見せるスコット。


マーティンの怒号が、また飛んだ。


「カ~ット、カット、カット、カット。ベルナード、ポルノで重要なのはヴィジュアルだ。人間つーのは90%くらいの情報を視覚から感じるんだ。もっと、頬を窄ませてディープスロートするんだ。もっと、淫らな音を立てて吸って吸って吸いまくるんだ。そして、スコットのセミナル(精液)を吸い尽くすんだ。分かったか、ベルナード。よーし、テイク3、カチンコ入るよー、アクショ~ン」


ベルナードがマーティンの演技指導に忠実に口淫を再現させた。


天にも昇りそうな恍惚な表情を浮かべるスコット。


バイデンが目を輝かせて興奮気味にマーティンに言った。


「わ、わしも喋ってもいいかのう」


マーティンがお好きなようにというウインクをバイデンに投げて寄越した。


「ス、スコット交渉人、き、気持ちいいかね?」


「は、はい、大統領閣下、天にも昇る気分であります」


マーティンが目を細めてベルナードの献身的な奉仕をチェックしている。


スコットが声にならない声で叫んだ。


「か、監督、あっ、間違えた。ミスター ピンク、もう果てそうだ。だ、出してもいいか?」


マーティンがメガホンを嘴に当てて吠えた。


「よし、スコット、イッていいぞ。ベルナード、あんたは、そのままゴックンだ」


スコットが昇天した。


ベルナードの咽喉に苦味のある白濁のドロドロの液体が迸った。


そして、ベルナードの喉仏がそれお呑み込んだのを示唆した。


マーティンが悦に入った表情でメガホン越しに叫んだ。


「は~い、オッケー。みんな、ご苦労さん。はい、撤収~。いやー、ベルナード、あんた、良い演技だったよ。俺が撮った中で三本の指に入る名演だったぜ。スコット、あんた、相当気持ち良さそうだったな。一体、何日溜めてたんだ」


スコットが恥ずかしそうにジッパーを上げながら言った。


「いやー、最近は、ちょっと忙しかったもんでね。先週の地下鉄立て籠もり事件とかバスジャックとかでさ。10日くらいかなー」


ベルナードは国の為、そして、崇敬する大統領閣下の為に従臣したという感無量な気持ちで充足感に浸り静かにアスファルトの上に転がっていたヘルメットを被った。


この任務を終えたら今夜は妻に私が口淫してもらおうと心に誓って…


スコットがYシャツをスラックスにたくし込んでタイの結び目を直して何事も無かったかのようにマーティンに喋り掛けた。


「ミスター ピンク、お望みは叶っただろう。大統領閣下を解放してもらえるだろうね。その為に私とベルナード大佐はミスター ピンクのお遊びに付き合ったんだ。私も、そりゃあ、楽しませてもらったがね」


ベルナードが頬をピンクに染めた。


マーティンが、さも愉快そうに言った。


「スコット、あんたとベルナードには充分楽しませてもらったぜ。でもな、こっから先は俺とジョーとの議論であって、あんた達に介入する余地はねー。まあ、そういうこった。じゃあ、暫く通信はストップだ。強硬突入なんて考えんじゃねーぞ。ジョーの命がどーなっても知んねーからな。ベルナードに伝えてくれ。あんた、良いしゃぶりっぷりだったぜってな」


マーティンは、そう言って一方的に交渉を中断させた。


マーティンがバイデンの方へ歩み寄り言った。


「どうだった、あんたも楽しめただろう」


バイデンはハイスクールとカレッジで夢中になって取り組んだアメフトで活躍した時のような活き活きとした表情で答えた。


「いやー、名演出じゃったよ。わしの知り合いにも男色家がおるからDVD化した際には10枚ばかし送ってくれんかのう」


「それは、こっから先の俺とあんたの交渉次第だ。ジョー、ところで、あんた、今日の晩飯は何だ?」


バイデンは悪びれもせずに言った。


「そりゃあ、無論、ターキーのローストじゃよ。わしは皮の部分を北京ダックのようにカリカリにして食うのが好きなんじゃよ。今から涎が出て来そうじゃ」


マーティンが、また奇術師のように羽からマルボロとジッポを取り出し一本銜えて火を点けた。


煙を吸い込みフーと吐き出すとバイデンを一瞥して机のデスクチェアに身を預けた。


「あんた、昨日は七面鳥に恩赦を与えておいて舌の根の乾かぬうちに今日は七面鳥をペロリってか。去年、俺の幼馴染でポルノ雄鶏だったブレッカーが殺られちまってスーパーの食肉売り場に並んじまった。ブレッカーは、そりゃあ、でかいチンポコと肝っ玉の持ち主だったぜ」


バイデンは七面倒臭い七面鳥めがと内心でまた不機嫌になりながらも平静を装って聞いていた。


「わしにどうしろと言うんじゃね?」


マーティンが吸い止しのマルボロをバイデンが飲みかけのコーヒーが入ったマグに入れた。


ジュゥ


火種が消える音が虚しく執務室に響いた。


「食物連鎖つー観点から言ったら動物にも肉食がいるし虫を食う鳥もいる。魚も同じ魚類でありながら天敵もいる。だから、あんたら人間が家畜を食らうつーのも理に適ってるつー訳なんだけど、あんたら人間は俺ら七面鳥にとって天敵なんだ。だから、そこんとこもうちょい考えちゃもらえねーだろうか。ほら、鮪や鯨なんかの漁獲量を制限するみてーにさ」


バイデンは目を瞑りマーティンの声に耳を傾けていた。


「分かった。今度、国際連合食糧農業機関(FAO)の議題に取り上げる事を約束しよう」


マーティンの表情が明るくなった。


「おい、マジかよ。ジョー、やっぱ、あんたは話せば分かる人だと思ってたぜ。いやー、何かスッゲー気分がいいな」


そう言って、マーティンはハリー フーディーニよろしく!


羽の中からアルコールランプ、スプーン、注射器、駆血帯のゴム、蒸留水、スピードボールを取り出した。


アルコールランプでスプーンの上に置いたスピードボールに蒸留水を加えて熱し液状にして注射器で吸い取る。


駆血帯で翼を縛って静脈にマーティンはきついのを一発ぶち込んだ。


何かを成し遂げた達成感とスピードボールで得られる漲る活力。


神が乗り移ったかのような神々しい表情を湛えるマーティン。


「フー、ウッ」


その瞬間、マーティンは注射器が刺さったまま机に突っ伏した。


おふくろのエバと同じ享年7歳。


死因も同じくオーバードース。


バイデンは嘆かわしい一生を送ったターキーじゃったなと回想し結束バンドで縛られている体を起こしピョンピョンと跳ねながら電話の元に行った。


机にピョンと尻から乗って首を捻って背後に縛られた両手で器用に受話器を外した。


リダイヤルのボタンをプッシュしスピーカーのボタンも押してスピーカーで通話出来るようにした。


1コールでスコットが出た。


「もしもし、ミスター ピンク、そっちはどうなっているんだ?」


「スコット交渉人、私だ」


スコットはマーティンからだと思っていたので少し面食らった。


「大統領閣下、ご無事でございますか?」


「ああ、私は大丈夫だ。すぐにコックをここに寄越してくれたまえ。君達は私が呼ぶまでそこに待機しておいてくれたまえ」


大統領専任料理人で曽(かつ)ては最高級ホテル、フォーシーズンズ ホテル ニューヨークで料理長を務めていたエヴァン マクラウスがスコットから連絡を受けてダッシュで大統領執務室に向かった。


マクラウスが部屋に勢いよく飛び込んだ。


「大統領閣下、ご無事でございますか?」


「エヴァン、来てくれたか。これを外してくれたまえ」


マクラウスがバイデンの両手両足を縛っていた結束バンドを外してやるとバイデンは手首を摩りながら言った。


「エヴァン、このターキーの羽を毟って丸焼きのローストにして首にリボンを掛けて今夜のパーティーに運んでくれたまえ」


マクラウスは翼に刺さっている注射器を見て唖然としたがそれを顔には出さなかった。


「は、はい、大統領閣下、畏まりました」


マクラウスはマーティンの亡骸と注射器やアルコールランプ、その他諸々のマーテンの私物などを撤収していた。


「エヴァン、私達家族のターキーはどうなっておる?」


「先程、絞めたばかりのターキーが空輸で届いておりますが…」


バイデンが解っているなエヴァンというレーザービームを鋭い眼光から照射した。


マクラウスが無言でマーティンやその他諸々の私物を撤収して立ち去った。


再び受話器を取りリダイヤルするバイデン。


またしても1コールでスコットが出た。


「スコット交渉人、私だ。ベルナード大佐を伴って執務室まで来てくれたまえ」


「はい、大統領閣下、すぐにお伺い致します」


5分後 大統領執務室


慌ただしく大統領執務室に雪崩込んで来たスコット、ベルナード、そして、テロ特殊部隊の面々。


ベルナードと部下達がバイデンに敬礼する。


「大統領閣下、ご無事でなによりです。ロッシ、スケアホルム、クロード、爆弾などが無いかチェックしろ」


ベルナードが部下に的確な指令を出す。


「イエッサー」


執務室を隈なく爆発物探知機で探す部下達。


スコットがマーティンがいないのを不審に思いバイデンに問い質す。


「大統領閣下、テロリストは何処に?」


バイデンが首を振りながら言った。


「彼なら心不全で死んだよ。君らの過激なプレイにどうやら興奮したらしい。七面鳥の事ならコックが詳しいと思ってね。だから、すぐにコックに来るように君に電話したんだよ。心肺蘇生を試したが駄目だった」


そう言って、バイデンは悲嘆に暮れた表情を演じてみせた。


尚もスコットが問い質す。


「それで、遺体はどうなされたんですか?」


バイデンがこれも神の思し召しだと言わんばかりに鎮痛な面持ちで言った。


「今日はターキー デーだ。食べ物を粗末にしてはならん。最近では食料廃棄が大きな問題として取り沙汰されているからな。今夜は支援者を招いてパーティーをする予定だったんだ。そこで、趣旨をちょっと変えて世話になったスコット交渉人、ベルナード大佐とその部下達を今夜の細やかだが君達に感謝の意を込めたパーティーを催して招待したいと思ってるんだが来てくれるね。文字通りの感謝祭だよ。私からの謝意を込めた」


スコットが目を丸くして言った。


「大統領閣下、お招き頂き光栄に思います」


ベルナードと部下達が敬礼してベルナードが畏まって言った。


「大統領閣下、そのような名誉を賜り恐悦至極に存じます」


バイデンがにこやかな表情になりスコットとベルナード達に言った。

「じゃあ、今夜20時にイーストルームに来てくれたまえ」


バイデンはスコットとベルナード、そして、部下達一人一人と握手を交わし別れた。


午後20時 ホワイトハウス イーストルームにて


スコットは自分が持っている中で最も上等なポール スチュアートの濃紺のスーツにダナ キャランのシルクで無地の淡いブルーのタイ。


足下はクロケット&ジョーンズの革靴で装いをドレスコードしてやって来た。


ベルナードと部下達もアメリカ合衆国陸軍から支給されている礼服で一様に正装して緊張した面持ちでやって来た。


ベルナードの左胸にはイラク戦争で受勲した銀星章が光っている。


ラルフ ローレンのシックなダークグレーのスーツにダンヒルのYシャツ。


ノータイでラフに着飾り足元はグッチの革靴。


主催者として年齢差がかなりある来賓に対してラフで気さくに話しやすい大統領を演出したバイデンはスコットやベルナード達を快く歓待した。


「よく来てくれたね」


バイデンが一人ずつまた握手を交わし声を掛けていく。


スコットとベルナードが最後に声を掛けられた。


「スコット交渉人、いやー、誰だか分らなかったよ。ハリウッドスターのような出で立ちだったからね。昼の草臥れた安物のリクルートスーツで逸物をしゃぶられていた時は訪問販売のセールスマンかと思ったよ。それはそれで、昼下がりの人妻との情事を匂わせてリアリティに富んでて実に良かったりもするんだけどね」


スコットが照れ笑いを浮かべた。


「いやー、お恥ずかしいです、大統領閣下」


「いやー、ベルナード大佐、君は銀星章を受勲していたんだね。受勲の理由は部隊全員の逸物をしゃぶって士気を高めたのが功績として認められたからかね?」


「大統領閣下、そんな他愛も無い事で我が国に利益が齎されるのでしたら私はその任務を厭いません」


「いやー、君は士官の鏡だよ。君にちょっと頼みたい事があってね…」


そう言って、バイデンはベルナードに耳打ちした。


「実はね、ベルナード大佐、私の支援者にかなりの資産を有している男色家のお方が何人かいらっしゃってね。今度、相手をしてもらえると助かるんだが…勿論、その暁には君の出世に助力は惜しまんがね、コナン ベルナード陸軍参謀総長」


ベルナードは恐悦し襟を正して敬礼した。


「イ、イエッサー、大統領閣下」


一通り挨拶を済ましターキーのローストに合うシャルドネのムルソーが皆に振る舞われる。


パーティーは立食スタイルでカップに取り分けられたベビーリーフとチキンのマリネ、キャビアを載せたカナッペ、ローストビーフのピンチョスなどがマクラウスの手腕によって芸術の高見へと昇華されて振る舞われた。


そして、メインディッシュ。


マクラウスがワゴンに乗せて運んで来た。


正しく、羽を毟られて鳥肌全開と代わり映えしてしまい丸焼きのローストターキーとなってしまった七面鳥界のポルノを牛耳っていたマーティン“ルーサー”ピンク。


首に結ばれた黄色ではなくピンクのリボンが何処か故鳥を偲んでいるようで物悲しい。


黄色いリボンはベトナム戦争中に出征兵士を忘れないように木に結び付けられていた。


そして、今。


コールドターキー改め日焼けしたモデル級のビーチバレーの選手のようにこんがりと褐色に焼きあがったホットターキーとなったマーティンの首にピンクのリボンが結び付けられている。


従軍しているベルナードは思う。


このピンクのリボンは監督を忘れないようにする為の戒めだと…


これは、たまたま偶然でこの前の誕生日に貰ったプレゼントに結わえ付けられていたピンクのリボンをマクラウスが後生大事に取っておいた物である。


マクラウスが器用にナイフを使ってマーティンの亡骸を損壊していく。


翌日の朝刊の見出し。


〈七面鳥バラバラ殺鳥事件〉


バイデンの脳内を不謹慎な妄想が支配する。


マクラウスは切り分けたマーティンの肉片をローズマリーを添えて皿に盛り付け皆に配る。


残った肉片はオリーブオイル、黒コショウ、ドライタイム、ドライローズマリー、ぱぷりかぱうだーで馴染ませてレタスと一緒に耳を落としたパンで挟んでターキーサンドとして振る舞った。


舌鼓を撃ちながらスコットは思う。


ミスター ピンク、あんたの演技指導でベルナード大佐のフェラテクは数段向上したぜ!


ありがとう、ミスター ピンク。


あんたのお陰で気持ち良く射精させてもらって。


ベルナードも舌鼓を撃ちながら思う。


監督、あんたのお陰で俺は陸軍参謀総長になれるかも知れない。


その為にだったら後、数本銜えることだって厭わない。


何だったら尻の穴だって開発してもらっても構わない。


ありがとう、監督、家でディルドを使って特訓するぜ!


俺にとって監督の遺作に出演出来た事は一生の宝物だぜ!


マーティン、スコット、ベルナードの間にあの撮影を通して一種独特なケミストリーが生まれていた。


スコットが気付いた。


「大統領閣下、ローストターキーとターキーサンドをお口になされていないようですが…ミスター ピンク、あっ、失礼致しました。あのテロリストの肉は中中の美味ですが…」


ベルナードはスコットのでかい馬並みの肉棒とマーティンの情熱的な演出を思い出して口淫の時のようにローストターキーとターキーサンドにむしゃぶりついていた。


スコットの一言で初めてバイデンがマーティンを口にしていない事に気付いた。


バイデンがばつが悪そうに言った。


「いや、このターキーが私を監禁していたテロリストだと思うと食欲が失せてしまってね。美味そうだが喉を通りそうにないんだ」


スコットが同情して言った。


「大統領閣下、そのお気持ち察するに胸が痛みます」


ベルナードも続く。


「大統領閣下、今日の事は早くお忘れになられて我々の為に国をより良い方向へと導いてくださる事を私は信じています」


バイデンが頷いた。


「ありがとう、スコット交渉人、ベルナード大佐」


バイデンは内心で毒づいていた。


誰が薬物で汚染されたターキーなど口にするものかと…


バイデンは己の理想と民主党の素晴らしさを皆にアピールしながら各人と談笑して回った。


宴も酣となったところでパーティーはお開きとなった。


バイデンが来賓の皆と熱い抱擁と固い握手を交わし最後に大統領救出の一番の功労者であるスコットとベルナードの順番になった。


「スコット交渉人、今日は本当にありがとう。君の活躍をこれからも期待してるよ。君ほどの逸物の持ち主ならば警察の職を辞してもポルノ業界が放っておく筈がないよ」


「大統領閣下、今日はお招きいただき我が人生において身に余る光栄でした。交渉人という職も神経をすり減らし体力勝負なので私も転職の際には大統領閣下のお言葉を思い出しポルノ業界でトップクラスの男優を目指したいと思います」


「ベルナード大佐、今日は本当にありがとう。これからも我がアメリカ合衆国にとって君のような人材は宝であり必要不可欠な士官であると痛感したよ。これからも国の為に頑張ってくれたまえ。後、例の件はまた後日に連絡させてもらうよ」


ベルナードが敬礼した。


「大統領閣下、今日はお招きいただきありがとうございました。我が軍隊人生27年間の中で最良の日であります。もし、私のような者でも大統領閣下のお役に立てるのでしたらいつでもお呼び立てください」


バイデンはスコットとベルナードと熱い抱擁と固い握手を交わして別れた。


時刻は22時をちょっと回ったくらいだった。


ホワイトハウスの玄関を出てスコットがベルナードに駆け寄った。


「ベルナード大佐、よかったらもうちょっと一緒に飲まないか?大統領の前で緊張しちまって飲んだ気にならなかったんだ。今夜はいい月だな。俺の行付けのバーがあるんだ。よければ付き合ってくれよ」


「スコット交渉人、俺もあんたと同じで緊張しちまって全然飲んだ気にならなかった。俺も帰る前にもう何杯かひっかけて帰ろうと思ってたんだ」


スコットが白い歯を覗かせて言った。


「そっか、俺の行付けのバーはここから16ブロックくらい離れているからタクシーを呼んで行こう」


この時、パーティーでマーティンを食した来賓客は長年の彼のコカイン、ヘロイン、スピードボールなどの常習で血となり肉となった薬物で汚染された肉片のお陰でハイになっていた。


スコットもベルナードも大統領にパーティーに招かれたという喜びもあったが、汚染されたマーティンの肉片のお陰でいつもより気分が高揚していた。


スコットとベルナードは行き擦りのタクシーを捕まえバーにタクシーを横付けした。


バーの名はターキー チェイス(七面鳥狩り)


73年に上映されたサム ペキンパー監督の『パット ギャレット アンド ビリー ザ キッド』でボブ ディランが書き下ろした曲の名だ。


店に入るなりベルナードが言った。


「いい雰囲気の店だな」


「ああ、そうだろ。ベルナード大佐にも気に入ってもらえると思ったぜ。俺の事はジョセフィンって呼んでくれ。そっちの方が肩を張らずにいいだろ」


ベルナードが笑って言った。


「それなら俺の事もコナンって呼んでくれ」


二人はマホガニーで誂えられたバーカウンターに座った。


「マスター、俺はターキーのオン ザ ロックを頼む。コナン、あんたは?」


「俺も同じのでいい」


スコットとベルナードは家族や仕事の話をして打ち解け合っていた。


店内にはビッグ“ママ”ソーントンの『バッド ラック ゴッド マイ マン』が流れていた。


ベルナードがぽつりと言った。


「それにしても、俺達、今日はバッド ラックな一日だったな」


スコットがグラスの酒を一気に飲み干した。


「ああ、あんたはおしゃぶり、俺は逸物をお披露目。それもCNNで全国ネットだ。忘れるしかないよな」


其の頃 ホワイトハウス 大統領官邸


バイデンはマクラウスに内線で電話していた。


「エヴァン、私だ。ターキーはもう出来ているかね。家内も君の料理を首を長くして待っておるよ。実際に首が長くなっている人を見掛けたらびっくりするだろうがね。首長族とかね、ハハハハハ。エヴァン、楽しみに待っているよ」


「はい、大統領閣下。やはり、先程の薬漬けのターキーとは比べ物になりません。最高級のターキーで作っていると思うと私も興奮してしまいました。先程の大統領閣下を監禁していた不届きなターキーも私の腕でどうにか美味しく出来たようなものです。身はパサパサで肉に締まりが無く脂の乗りといい決して褒められた代物じゃありませんでした。七面鳥じゃなくてダチョウ(駄鳥)でした。失礼しました、大統領閣下。つい調子に乗ってしまいました。それに比べて空輸で届いたターキーは大統領閣下の口に運ばれる為に雛の時から厳選された餌で餌付けされていますのでターキーのキングと呼ぶに相応しいターキーであります。今から官邸にお持ち致します」


バイデンの口に唾液が溢れ口角から涎となって滴が垂れた。


手の甲で涎を拭いバイデンがマクラウスを急かした。


「エヴァン、すぐに頼むよ。私は昼に食いっぱぐれておるからな。無論、君の料理とサブウェイでは比較にならんがな」


「大統領閣下、有り難きお言葉。感無量でございます。すぐにお届けに上ります」


その頃 バーを出ようとしていたスコットとベルナード


スコットとベルナードは互いにワイルドターキーのオン ザ ロックを3杯ずつ空にしてバーを出ようとしていた。


二人ともすっかり打ち解け合い互いの連絡先を交換するまでになっていた。


酒とは人を荒くれさせる時もあるが、良い酒を酌み交わせば人とはいとも簡単に結び付くものである。


「ジョセフィン、今日は俺に払わせてくれ」


ベルナードが気さくに言った。


「いや、俺が誘ったんだから俺に払わせてくれ、コナン」


勘定書きをベルナードの手から奪おうとするスコット。


ベルナードはそれを制止しポール スミスのミドルウォレットからチップも含めて20ドル紙幣を二枚と10ドル紙幣を一枚マホガニーのバーカウンターに置いた。


「今度は俺に払わせてくれよ、コナン」


スコットが拳でベルナードの二の腕を小突いた。


「ああ、ジョセフィン、今度はあんたが奢ってくれ」


そう言って、ベルナードはスコットにサムズアップして二人はターキー チェイスを出た。


二人で夜気に当たり酔いを覚ましながら歩いていた。


「明日が非番で良かったよ。こうやって、コナンと飲めたんだからな」


スコットが独り言のようにぼそりと言った。


「ああ、俺も明日は非番なんだ。まあ、俺もジョセフィンも仕事柄、急遽呼び出しが掛かれば休日返上になるんだけどな」


ベルナードが月を見上げながら言った。


人影が無い路地裏に入った。


ビルとビルに挟まれた細い暗闇の中へスコットがベルナードの袖を引いて引っ張り込んだ。


ベルナードは一瞬、呆気に取られた。


スコットは行き成りベルナードの唇に唇を重ね舌を捩じ込んできた。


スコットの早まる息遣い。


実はスコットはバイセクシュアルだったのである。


スコットが興奮して言った。


「今からホテルに行ってあんたのポコチンをしゃぶらせてくれないか。そして俺のケツの穴にぶっとい注射をしてお仕置きしてくれ。俺は昼間、あんたにしゃぶられていた時にあんたのポコチンが膨らんでいるのを見てピ~ンと来たんだ。コナン ベルナード大佐にもバイセクシュアルのイデオロギーが流れているってね。俺はコナンのような屈強な男に豚のようにファックして欲しかったんだ。俺へのお仕置きが終わった後は攻守交替だ。俺はリバーシブルなんだ。今度は俺のポコチンをしゃぶってもらってあんたのケツの穴にぶっとい馬並みの注射をお見舞いしてやるぜ。俺に開発された奴らは最初は痛がるけど次からは哀願して入れてくれって言って来るんだぜ。心配すんなって、コナン。きっと、あんたもそうなるって確約するぜ!」


ベルナードは目をとろんとさせ27年前の入隊した時を思い出した。


「よろしく頼む、ジョセフィン。俺の鬼軍曹になってくれ」


スコットとベルナードは近くのホテル、ジョージ ワシントンにチェックインした。


初代大統領ジョージ ワシントンに因んで名付けられたホテルでベルナードは初めての男性を相手にした情事にトライするのである。


一緒に風呂に入り洗いっこするスコットとベルナード。


風呂場でもテンションは上がり、いざベッドイン。


ディープキスをし耳たぶを甘噛みするスコット。


舌先は首から乳首、腹へと蛞蝓のように這い回り到頭ベルナードのそそり立つ逸物へと到達する。


その頃 あの世でのマーティン


現場用のキャンピングチェアでメガホンを持ち食い入るようにスコットとベルナードのネッキングを見守るマーティン。


メガホンを嘴に当てて熱弁を振るう。


「いいよー、スコット。あんた、伊達にバイセクシュアルでリバーシブルつーだけの事はあんな。ベルナードのチンポコがあんたのネッキングでビンビンになっちまってるじゃねーかよ。そうだ、そのまんまパクッといっちまいな。根元までズッポリ銜えちまえ。そうだ、スコット、いいぞ。ベルナード、あんたは悶絶しそーな顔で今にも私イッちゃいそーですっていう恍惚な表情を浮かべるんだ。でも、絶対にイクんじゃねーぞ。イク寸前でフェラはストップ。今度はあんたがスコットをネッキングしてチンポコはクールダウンだ。クールダウン終了後にそっからアナルへ挿入だ。スコットは開発済みだからワセリンはちょこっとでいいぞ。攻守交代の時はあんたは未開発だから念入りにワセリン塗りたくってスコットに開発してもらえ。スコットのでかい馬並みのチンポコだと最初はスッゲー痛えかも知んねーけど次からは病み付き必至に違いねーぜ。ヒャッホー、あんた達、良い演技してんぞー」


燃え上がるスコットとベルナード。


今朝のワシントンポストの一面


見出しは〈我がアメリカ合衆国大統領の命を救った二人の英雄〉


スコットとベルナードに挟まれたバイデンが二人の肩に手を回し三人揃って満面の笑を湛えている写真が掲載されていた…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Wild Turkey Jack Torrance @John-D

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ