仰向けに寝転んで、閉じた瞼と天井の二枚の壁を透かした先の、遙か真黒い宙の一面に、粉砂糖を零したような星空を浮かべて。


 その白い青い赤い星々が、ひとつ、またひとつと、固まった蜂蜜を熱したように、どろりと歪んで堕ちてくる。


 わたしは投げ出した両の腕の先、天を向けたふたつの掌でそれを掬い取り、融けた鉄の熱さと重さを感じて、次の刹那にそれは桃色の花弁となって、わたしの下へと溢れて落ちて、終わりのない虚空へと風に乗って消えていく。


 ひとたび瞼を開ければ、それら全てが何処かへと過ぎ去ってしまって、次にみずからを暗闇に委ねたとき、そこにあるのは全く違う世界であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

断片世界 もやし @binsp

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ