花、一輪、二形。

────愛されたいから、傷を抱く。

 あなたはいつもそうやって、自分を殺して生きてきた。

 周りの誰かに迎合して、継いで接いで繕って。

 あなたの水面に油を垂らして、誰にもその内側を知られないように。

 差し伸べられた手は払わない。向けられた剣は掴み取る。

 あなたは笑って生きてきた。あなたは死んで生きてきた。

 誰かに乞われて受け入れられて、あなたじゃないあなたは笑顔で立ち上がる。

 ゆっくり歩いて遠ざかっていく、あなたは。



────嫌われたいから、空を見上げる。

 あなたはいつもそうやって、自分を殺して生きてきた。

 隅に隠れて帳を下ろして、独り笑って根を張って。

 見える景色は青の色。空飛ぶ鳥に憧れた。

 視界の外の話し声は、閉ざされた耳には入らない。

 いつしか雨が降った時、あなたは歩き出すのでしょう。

 手に余る大きな傘の下、一滴も濡れることはない。

 いつしか雲が泣き止んで、虹の橋が架かっても。

 あなたはきっと空に涙を描いたまま。下ろすことない両手の傘に、照りつける陽光の彩を願う。

 濡れたままのベンチに腰を下ろして、また上ばかりを見続ける、あなたは。




 いつか、いつの日か分かるのでしょうか?

 あなたわたしの解答。わたしあなたの正解。

 蕾は芽吹いて閉じたまま、花は香って美しく。

 どうすればよかったかなんて、きっといつまでも分からない。

 だからわたしは今を生きる。答えはどこにもないのだから、不正解もきっとない。

 希望に縋って糸を掴んで、絶望からは目を逸らす。


 きっとそれが、わたしだけの咲き方だから。




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