主人を失った僕には、標本たちの識別番号を解読する資格がない

少年の名は聞き取れなかった。主人を失った僕には、標本たちの識別番号を解読する資格がない。

「まあ、いいや。野良と呼んでよ」

「……ノラ」

淡青色の睛に菫の影がうつる。

「君、ご主人様はどうしたの。近くにいるの」

「逃げ出してきたんだ。環境が劣悪でね。君こそ、妙な標本だな。首輪はどうしたの」


2022/5/14

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