籠のなかで果実を食むことも、やさしい手が頬に触れることもない

薄青のリボンが揺れる。少年は寝台に身を横たえた。飼い主の拘束は解けている。籠のなかで果実を食むことも、やさしい手が頬に触れることもない。少年は自由を知らなかった。

「君、ひとりかい」

歌うような声が頭上から降ってくる。愛玩標本の手首に絡む鎖が見えた。

「少し僕と遊ばないか。退屈なんだ」


2022/5/13

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