第24話ニートと女神


 迷いの森の中にある、光の出入り口をくぐり、保管庫と呼ばれる、白く広い部屋にやってきた。

 相変わらずなにもない空間が広がっている。

 寝太郎は、念の為、刀を二本帯刀し、コロナを引き連れて来ていた。

 例の機械を破壊したところまで行くことにした。

 コロナに言わせると、あの機械を壊したのは、思わずだったらしい。

 今となっては、それがむしろ、森に滞在する理屈になっており、良かったのかもしれない。

 魔王ルクスリアに言われた通り、詐欺師であり女神であるというのなら、気を引き締めてかからないといけないと言えた。

 壊したはずの機械は、そこに完全な形で存在していた。

 早速、寝太郎はキーボードと画面に向き合う。

 最後にこの部屋にやって来たのは確か、爆弾を投げ込んで以来である。

「怒ってなきゃいいんだが」

 ログイン画面からの起動まで一連は同じ動作であり、緑の背景画面の右端より現れたのはイルカであった。

 しかし、現れたはいいが、黙っており、質問を受け付けようとしない。

 打ち込んでも何も反応しない。

「おい、どうした? 壊れたか?」

 画面が少しかすれたように見えた。

 が、画面に異常は無い。代わりに、イルカの色が、黒く染まっていた。 

『まさかここまで役に立たないとは』

 イルカは一切の質問を受け取らずに淡々とそう述べた。

『処分しよう』

 そんな物騒な言葉を述べる。

 何も起きないな、と思っていると、コロナが横で、ぐるぐると音を鳴らして唸っている。

「コロナ?」

 様子がおかしい。目が血走っているとさえ言えた。

 寝太郎は、がばっと抱きしめつつ、全身をバタバタと動かして、コロナを撫で回した。

「ほーら、落ち着け落ち着け」

『ううううう、うぅぅぅ、うふふふ、うふふふふ』

 コロナの気分が落ち着き一安心となる。

 また壊れされたのではたまったものではない。 

 再び、寝太郎は、画面に映る黒イルカと向き合った。

『馬鹿な……中に何かいる……測定不能』

「さっきから何一人で語ってるんだ。少しはこっちの質問に答えろ」

 がちゃがちゃとキーボードに打ち込んだが、うんとすんとも答えない。

 おしまいには、

『質問の意味がわかりません』

 と表示されたので、さすがにブチギレてしまい、コロナに命じて破壊させた。

 コロナは待ってましたとばかりにバリバリと噛み砕いた。

「結局何だったんだか」

 完全な消化不良。コロナにまたがりながら、悩んだが、外から刺すような冷たさを感じる。

 光をかいくぐったとき、冷たさと、激しい吹雪に晒された。

 木は枯れ、降り積もった一面の白い景色、これは雪の絨毯だ。

 そこは、寝太郎たちのいたはずの森ではなかった。

 

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帰らずの森の住人 @dameOG3

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