最終話、もうメイドはこりごりです。

次の日、俺こと市倉優希は嬉しかった。

何故なら……姉貴の代役は、今日で最後だからである。今日の夜に姉貴が帰ってくるので、姉貴の代役として働く事は今日で、最後になりそうだった。ま……今日が終わったら、姉貴の格好をしなくてすむし、ほんと嬉しいぜ……って、感じだった。

とりあえず、今日も学校があるので、制服に着替えて、朝食を取ってから、学校へと向かった。

学校に辿り着き、クラスの中に入り、自分の席につく。席に着くと、俺に話しかけてきたのが


「よ、優希」

そう話しかけてきたのは、真吾だった。


「よう、一体なんだ?」


「実はな……今日、学校終わったら、一緒に遊びに行こうとおもってな? どうだ?」


「遊びにか……すまん、バイトだ」


「バイト? おまえ、一体何所でバイトしてるんだよ?」


「それは、内緒だ、ほら……チャイム鳴るぜ」

真吾には、俺のバイト先と言うのは教えられないよな? うん。俺がそう言うと、真吾は


「ま、いっか」

そう言って、自分の席に戻っていき、チャイムが鳴って、普通の授業が始まった。授業内容はそれほど難しくなく、あっという間に時間が過ぎていって、放課後。

俺は、真っ直ぐ家に帰り、自分の部屋に入ってから、着ている学生服を脱いで、私服に着替えてから、ウィッグを装着、そして声を姉貴の声にして、お袋に見つからないように家を出る事にした。家に出る事は、何とか成功して、バイト先の喫茶店、マイ・ドリームに辿りつき、店内に入る。

店内に入ると、ちびっこ店長の麻衣が


「あ、由紀ちゃん、いらっしゃいー」

そんな事を言って来たので、俺は、姉貴の声で


「すいません、今日で代役が終わりになります」


そう言って見ると、このちびっ子店長は


「およ? と言う事は……優希君だっけ? 今日で終わりって事なのかな?」


「はい、そう言う事になります」


「そっか……じゃあ今日一日頑張ってね? 着替えてきてね~」


「はい」

良し、これで終わりと言う事は告げたし、大丈夫だと思う。この店長と離れた後、俺は控え室の中に入り、誰も入って来ないように、しっかりと施錠する。施錠してから、ロッカーからメイド服を出して、それに着替える事にした。

着替え終わった後、身だしなみをチェックし、控え室から出ると


「あ、お姉様、おはようございます」


そう言ってきたのが、俺=姉貴の事をお姉様と呼んでいる萌だった。萌の姿は、私服姿で、まだメイド服に着替えてないみたいだった。


「おはよう、じゃあ私は仕事に専念するから」


「あ、はい、私もすぐに着替えてきます」


萌が控え室の中に入っていく。

俺はそれを確認した後、ホールに出て、接客をする事にした。店内にいるのは、相変わらず男ばっかりで、女性客がほとんどいなく、気持ち悪い声色で、店員を呼んでいたりしている。


「ユキちゅわーーん」

とか聞こえてきたので、とりあえず作り笑顔で「はい」と言った後、呼んだ客の所に向かった。呼んだ客は、凄く太った男で、汗が額やら首筋やら、てかてかと光っている。

うわ……めっちゃ暑苦しくないか? こいつ……これでも一応お客なので、俺は


「ご注文は何でしょうか? ご主人様」

そう言うと


「じゃ、じゃあ……この魅惑のパッションフルーツをた、頼むぞな」


「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」


ぞなって何だよ……って突っ込みたかったが、まあ……これでも客なので、気にしない事にして、厨房に行き、注文を言って、数分後、品物が出てきたので、お盆の上に載せて、さっきの客の所に持っていく。


「お待たせ致しました、魅惑のパッションフルーツとなります」


「あ、ありがと……そ、その食べさせてくれないかな?」


「…………かしこまりました」

内心嫌だったが、俺はスプーンを持って


「ご主人様、あーん」


自分で言ってて寒気がしそうな感じの声で言ってやると、男がキモイ顔で「あーん」とかやっていた。こいつ……絶対に彼女とかいなそうな感じがするな……そんな地獄のような時間が過ぎていき、ちびっ子店長の麻衣が


「由紀ちゃん、もうあがっていいよー今までありがとね?」

と言ってきたので、俺は「おつかれさまでした」と言って、控え室に入り、私服に着替える。着替え終わった後、マネージャーの志保さんと麻衣に


「今までありがとうございました」

そう言って見ると


「ねえねえ? また由紀ちゃんが仕事できなかったら、またやってみるのもいいんじゃなーい?」


「店長……それは言わない方がいいかと、思いますよ?」


「だってーここまで由紀ちゃんに似てるって、結構凄い事だよ~?」


「それはそうですが……あの、優希君? また、代役としてやりたいと思ってますか?」


「いや…………出来ればやりたくないですね」


「そうですか……ほら、優希君もこう言ってますし、店長の言う事は却下されましたよ」


「ちぇー……ま、いいかぁ……それじゃあ、今日までありがとね?」


「はい、では、さようならです」

そう言って俺は、店を出て、家に戻る事にした。家の中に入り、自分の部屋に入ってから、ウィッグを取る。声を普通に戻して、姉貴が帰ってくるのを待つ事にした。

一時間後、「ただいまー」と言う声がして、姉貴が帰ってきたみたいだった。俺は、姉貴に


「はい、これ」


と、ウィッグを渡すと、姉貴が


「今までありがとね? 優希、あ、何だったらまたやってみる? これ装着してさ? 美人姉妹として、やるのもありかもよ?」


「何自分で美人とか言ってるんだ? 姉貴」

「んー? なにか言ったかしら?」


「いや……とにかく、俺はもう金輪際、やらないからな!」


「ええー?」

こうして、俺の姉貴の代役としての活動が終わったのであった……



後日


「なあ、優希」


「何だよ? 真吾」


「俺さ? 前に行ったメイド喫茶に行ってみたんだけどさ……で、好きな子を見ていたんだけど……なーんか雰囲気が違っていたんだよな……なんていうか……別人?って感じでさ? もしかしてさ……双子の妹とかが代役でやってたんじゃないかと思うんだ、優希はどう思う」


「んな事俺が知るかぁぁぁ!!」



~FIN~

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俺がメイドで、マジですか? レイド @reidsann

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