闇夜
いよいよ作戦決行の夜。
月は雲に隠され、辺りは一面闇に包まれていた。
「皆、暗いから足元に気をつけて。……ほら、言ったそばから。」
足元に転がった木に躓いて、危うく転びかけたハンが口を尖らせる。
「ランプ持ってるだろ、ディアナ。もっと明るくしてくれよ!」
「あんた馬鹿なの?これ以上明るくしたら目立つに決まってるじゃない。それくらい考えなさいよ。」
鼻を鳴らし、エリゼが馬鹿にするように言う。
それに苛立ったのか、ハンが語気を強めて言い返した。
「は?んな事分かってるんだよ。ただあともう少しくらいなら良いんじゃないかって思っただけだろ。」
「ちょっとそこ、静かにして。もうすぐ着くんだから。まさか作戦、忘れてないでしょうね。」
「忘れるわけねえだろ! 」
随分機嫌が悪いようで、ハンを落ち着かせようと放たれた言葉にまで突っかかる。
「ならいいけど。」
ディアナは呆れたように首を竦めた。
今回の作戦の要は3つ
1つ目、相手の犯行現場を見つけること
2つ目、相手が爆弾を仕掛けるまで見つからないようにすること
3つ目、相手を爆弾のそばから移動させないようにすること
最後に、戸を塞いだら直ぐに外に逃げて瓦礫に身を隠すこと
これが出発前に確認した内容だ。
「じゃあ、それぞれの役割をもう一度確認するわね。……テレム、あんたが決めたことなんだからちゃんと起きて発表しなさい。」
「……はーい。」
外にいるにも関わらず、テレムは相変わらず眠たげだ。
「相手が爆弾を仕掛けたタイミングでハンとエリゼは態と目立つようにあいつらの前に出て。その隙にディアナとカゼルタは出入り口を塞いでおいてね。僕たち子供が通れるだけの隙間を開けておくことを忘れないで。僕とペーナは近くの建物から指示を出すよ。」
「なんで私が陽動隊なの……」
エリゼが不満げに漏らす。
「ハンの手綱を握れそうなのがエリゼだったんだよ。」
「はぁ?」
「ハンはよく暴走するから。カゼルタじゃ、抑えるどころか一緒になって暴走するだけ。それに、ディアナはカゼルタと組ませた方がいいでしょ。カゼルタも結構色々やるからさ。」
ムッとした様子のエリゼ。
これ以上不和が生まれるのを避けようとディアナがそっと声をかけた。
「そう。だからこれはエリゼにお願いしたいのよ。引き受けてもらえないかな。」
「……まあ、ディアナがそういうのなら。」
エリゼはその言葉に渋々と引き下がった。
「なら、さっさと始めようぜ。ペーナとテレムは先に近くの建物へ行ってろよ。その後俺達が行くからさ。」
「待ちなさいよ、ハン。エリゼの指示をよく聞いてよ?テレムは寝ないでちょうだいね。ペーナは必要以上に焦らないで。カゼルタもちゃんと私の指示を聞いて。分かった?」
「うん!」
「全く、いつも返事だけはいいんだから。」
てんでんばらばらに帰ってきた同意に首を振り、呟いた
星の光が届くとき 紅羽 @Kureha15
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