身寄りがなく、施設で暮らしている兄と妹。
ある日、二人は手を取り合って施設を抜け出すが――。
生き別れになった兄妹の後日談に、思わず涙が流れます。
二千字にも満たない、とても短い作品。
ですが、あまりにも温かく愛おしい「思い出」が濃厚に描かれています。
施設で暮らす兄と妹の生活は、ままならない日々もあったことでしょう。
ですが、妹の目線で語られる記憶はあくまでも優しく、彼女の体験を追っていくうちにゆっくりと心がほぐれていくのを感じます。
まさに言葉のひとつひとつを丁寧に読みたい作品です。
そして、登場人物たちの愛嬌や、ちょっとマニアックな蘊蓄、「裏アカ」などユーモアを感じる要素もあり、作者様の個性が存分に出ている作品でもあります。
最後の一文は、句点も含めてわずか五文字。
でも、このたった五文字に泣いてしまうのです。
「赤いきつね」を作る待ち時間に、ぴったりの作品。
きっといつもよりもずっと美味しく感じられることでしょう。