終幕 Curtain call
Curtain call
* * *
「さて、皆様。ここまでお読み頂きありがとうございました」
白銀のモノクルを付けた座敷童の少年が閉じた幕の前に登場し、ぺこりとおじぎをする。モノクルに付いた綺麗な宝石がスポットライトを反射してちらちら光った。
「如何でした、でしょうか」
「今回皆様にお読み頂きましたこの物語はマモンが遺した『設定資料』を基に物語として新たに組み直し、七話構成の物語として完成させたものです」
「きっかけは僕の大きな大きな我が儘でした。彼の物語をどうしても忘れたくなくて忘れて欲しくなくて、また、読者である皆様にもどうしても彼のことを知って頂きたくて。それで色んな人に無茶なお願いを沢山して無理も沢山言って。それでやっと実現できたものです」
「苦節……えー、一年でしょうか。気付けばこんなにも長い時間が経っていました。この物語が多くの人にお届けでき、また、一緒に喜び悲しみを分け合えましたこと本当に嬉しく思うと同時に皆様に対する感謝の念で胸がいっぱいです」
「本当にありがとうございました」
「また、著すにあたり色々助言をくださった父・ファートムにもここで感謝の辞を述べさせて頂きます、本当にありがとうございました」
「我が儘沢山言っちゃってごめんね。でもとっても愛してます」
「また一緒に夜なべとかして、物語のために心血を注いだりしたいね」
「……なのでれいれいさんのサンドイッチを今度は忘れずに貰ってきてください」
「もう『あ、忘れちゃった』とかいう言い訳は通用しませんのでよろしくお願いします。これで六度目です」
「ついでに言うと可愛い顔作戦、全く効果ないので覚えておいてください」
「次から罰金五万円です」
……。
「――さて、一通り父の悪事を暴露し終わったところで」
「ちょっと『本』にまつわる問いを立ててみましょう」
「本って一体何のためにあるのでしょうか」
「僕らのようなキャラクタ目線でいえば間違いなく『生きるため』です」
「キャラクタの住むストリテラは――まあ、ここは厳密には『本』ではありませんが――本の中にあります。そして読者の皆様の『目』があることで生かされている。と、すれば『本』という皆様と僕達を繋ぐ媒体がなければ間違いなく僕らは死んでしまうでしょう。これは最早自明の理ともいえます」
「唯、皆様のような『人間』という立場の方々にとっては少し話が変わってきます」
「現在、書店はだんだん少なくなってきており、出版業界も厳しいとかなんとか。国語には学ぶ価値が無いだなんだという言葉も残念ながらよく耳にするようになりました。……ストリテラ、単純にピンチです」
「そう、今や時代は人工知能! 人工知能を扱える人にはとんでもない額の初任給が渡されたり小説も絵も人工知能が書いたり。また、『人工知能』に限らずとも例えばコミュニケーションの場が対面からオンラインへと少しずつ変わってきているのも正に時代の変化といえるでしょうし、紙の本も少しずつ電子に吸い込まれてきています。これはコンピュータの話ですね。『今や時代は構文』が使える物の一つであると言えそうです」
「……だからこそ。そして日本語を幼い内から多くの人が話せるからこそ、『国語』を学ぶ意味とは何なのだろうと考えたりするのかもしれませんね。今は数字を読める方が直接的に価値に繋がりやすいですし」
「要らないと思う理由も様々あるのでしょう」
「でも本は、物語は、言葉はそれでもあり続けます」
「数字で僕らは『愛してる』をまだ表現できないからです」
「全人類がときめく数式を僕らはまだ知りません。隣の子をどうにか振り向かせるコードもまだ開発されていませんし、家族を労うための数字もまだ見つかっていない」
「数字ではまだ魔法の国を見つけることはできません。『3.14』という数を知っててもそれを用いて描いた魔法陣に効力を持たせることも残念ながらまだ出来ない」
「そんな遠く遠くの話に限らなくても、直ぐ傍にある日常……例えばあの日見た海の青さを誰かに伝えることさえ数式ではまだ出来ません。というかそもそもコンピュータが使う言語で僕らはまだまだ日常会話を話せない」
「でも言葉ならできる。物語なら、本ならできる」
「愛してる。その五文字で僕はあなたに愛を伝えられる。ちょっと待っての一言で君が振り向くかもしれない。お疲れ様の言葉と笑顔でふっと報われたような気分になることがある」
「魔法物語を書き著せばあなたの意識はドラゴンやゴーレムの目の前までワープする。描いた魔法陣から神秘的な美少女が現れ、あなたの家来にしてくださいとお願いしてくる。それには言葉とちょっとした想像力が必要です」
「また、お喋りやお話はあなたの脳裏にあの日の思い出を想起させます。唯のたんぽぽがその過程で特別なものになったりする。温泉でもない、唯のお風呂でさえ物語が加わるだけで特別なものになったりする」
「――『マモン』のたった三文字が、数字の力では解明できない『言葉や物語の力』によって僕達の中で特別なものとなったように」
「このようにして遥か遠くの先人達から僕らは言葉や物語を受け取り、また、新たに多くの事柄や感情を載せて遥か遠く先の後輩達へと渡すべく僕らはこの作品のように言葉や物語を残してきました」
「そして伝えるために必要な媒体は矢張りここでも『本』だった。僕らがマモンと読者様を繋ぐためには『本』が必要だった――以上だと主語が少し大きすぎるのでちょっと言い換えてみれば、僕らが『愛してる』を伝えるのに『本』という媒体も一方で必要だった」
「これだけなんです。でも、これ『が』必要なんです」
「マモンとの思い出を一寸の狂いなく、皆様にお届けするためには」
「……どうやら僕らは数字で『愛してる』が言えるようになるまでは当分、何かを残すために言葉や物語や本を使っていかなければならないみたいですね」
「そしてそれは僕らが使える唯一の魔法、罪な発明品とも思っています」
「使わないなんて、不要だなんて勿体ない! 上手く活用すれば鬼の心も武者の心も僕達が震わせられる」
「それこそ貪欲に、強欲に使っていかなければ」
「皆様の『言葉の世界』では。『本』の世界では」
「あなたの心の中の『ストリテラ』ではどうですか?」
――。
「――さて! それではそろそろ良い時間なので最後のお楽しみと参りましょう!」
「Curtain call!!」
「これまでの物語で登場した役者達をひとりずつ簡単に登場順で、ご紹介致します」
「皆様、ここまで本当に!」
――ありがとうございました!!
* * *
*第一話 「人形館」とマモン
毎日毎日大量のブラックコーヒーを飲むのでいい加減彼女に心配されている。
運命神・ファートム
今日も元気に働く運命神の子ども達。実は話の前半と後半で呼び方が変わっています。
運命管理局局員達
夫の一男さんがどうしても家事を手伝ってくれないので包丁投げを始めてみました。効果は抜群です! 皆さんも試してみてください! byかおる
今村かおる
良いかい凡太郎君。将来家庭を持ったらね、妻を怒らせるようなことだけはしちゃ駄目だよ。また江戸川乱歩の作品について語ろう。by一男
西田一男
あの後何だかんだあって金造としょっちゅう会う仲に。本人は早くやめたいとか言ってるが内心満更でもない。
伊治尉二太
尉二太を心の中で独身友達と勝手に思っている。
金田金造
今日も誰かを何かに巻き込んだ。ふふ……。
黒山虹
あんなになっても虹が好き! と言い張る娘を見る警部の背中の哀愁。
畑中警部
息子の金造がいつまで経っても結婚しないな、と思ってるだけ。
金田有蔵
読者の皆様は覚えていますか? 作者は名前も忘れていました。
記者の田村さん
ベネノは今からでも自分の息子に出来ると本気で考えている。
悪魔王・ディアブロ
*第二話 「魔王」か「王様」か
ベネノと今度の日曜に旅することが遂に決定! 二人で新世界を探検しに行く。
ジャック
最近は皆で畑の野菜を育ててます。得意料理は特製野菜カレー。
魔王の臣下のモンスター達
遂に「七つの大罪」が全滅した! 遂に俺様の時代だ! と思ってたのに直ぐに「新・七つの大罪」作りがスタートしたという噂を聞いてしまった。
仮称・悪魔くん
目を離すとすぐどっか行く。
フレディ
あの時はマジで死んだかと思いました。(実際物語から退場してました)
牢屋番のゴーレムとその他大勢
出番が無い時はモンスター達の畑に水をやってます。これに臣下達は大喜び!
魔王フルーフ
出番は実は鍵開けだけで終了してました。
間者の皆さん
魔王城花火大会の主役。王子を花火玉に詰めようとしていたのを止められた過去を持つ。
四天王中堅・チフ嬢
ジャックの目の前で当時パーシーだったベネノを倒したことを今でも覚えている。
四天王次鋒・ノーチェ様
最初の自分の挨拶、日曜19時からやってるあのアニメみたいだったなとずっと思ってた。今も思ってて、何なら眠れない。
四天王大将・ツァイト氏
今も物語では相変わらずチフ嬢に爆破され、相変わらず一番最初にやられ、相変わらず「あいつは四天王の中でも最弱……」と言われている。でも何故か最後に必ず無傷で登場。
四天王先鋒・ローサ王子
ちょっと前、Raymondが寝てる自分の顔に落書きしてきたのでLIARに「彼のへそくりの隠し場所」を教えてやった。泣いて謝ってきて面白かった。
魔導士デヒム
実はデヒムのことは最初から怪しいと思っていたのだよ! (本人談)
大臣
……あの少年達は将来大物になる筈だ。(本人談)
大将クラスの騎馬兵
ジャックとアドアステラ親子が大好き!
世界のドラゴン達
出番が一瞬だったことは気にしていませんよ。嘘じゃないですよ。(本人談)
城下町を守る竜騎兵と狙撃手達
ゲコゲコッ!! ゲェーコゲコ!! (判読不明)
ラーナ国王
*第三話 ベネノ、マドンナを目指す
困っている自分の相談に乗ってくれたぐうたらマイペース男が真逆今の彼氏になるとはその時は思ってもみなかった。
アネモイ(神風フウ)
告白はするべきか否か、実はちょっと迷ってる。――ちょ、ちょっと! 奴に言いに行かないでよ!
野上千草(富士子)
あれは全部補正が悪いんだ!! 補正のせいなんだ!! ――いや、マジで!
藤森悠人
マモンが倒れたことで感情が戻ったことにベネノはまだ気付いていない。
エンジェル
そのひょっとこ面の下にあるのはイケメン顔という説が一番濃厚だが本人は依然何も言わない。
闇カフェ店主・ひょっとこ面
最近LIARにへそくりの隠し場所がバレて鬱。
小沢怜
相棒にレトロテレビというのがいる。いつか彼を故郷まで迎えに行くのと、店主の黒耀が好きなバタークッキーの味を知るのが夢。
レトロカメラ
急な高額収入に心がほくほく。
神代木霊
ナンパという名のスカウト。ようこそ犯罪予備防止委員会へ。
渋沢大輝
*第四話 「神仏」対「科学」
今日も勘だけで何とかしていく予定。
北の守護天使・テラリィ
代々南の守護天使を輩出する家の出。ライネルという名の弟がいる。
南の守護天使・エクラ
父親は実は大神様。守護天使のきっかけはカルドがくれた。
東の守護天使・トゥルエノ
今は亡き彼女セレナと一緒に守護天使になる筈だった。毒舌だが守護天使の中で一番優しい。
西の守護天使・カルド
実は違う名前で他作品にて既に登場済み。どこに出たか分かるかな。
フィロ
兵器開発はとても楽しかったので叶うことならまたやりたい。今度は自作コンピューターウイルス「ぴよちゃん」を忍ばせてみようと思ってる。
古川修平
好きな女の子の前では饒舌になる無口な局員。
竹下海生
社会性の高い宇宙移民族に見えるがその実、個々の「心」は全てマザーコンピューターに収められており、殆どが考えるということを知らない。
宇宙人の皆さん・レダヴの民
シンニュウシャ! シンニュウシャ!
レダヴの民・警備ロボット
Raymond、また生身の体で会えたら良いね。
アンドリューシェリング博士(Schelling)
クライシスマン・祖父とかも作ってみたかったですね。
クライシスマン家族
今年もレトロカメラと一緒に仕事しながら年を越しました。あけましておめでとうございます。(白目)
黒耀(ナナシ)
生まれ変わったらカルド達守護天使とピクニックがしたい。エンジェルにも会いたい! ベネノにも、マモンにも……。やりたいことたくさん。
セレナ
*第五話 神殿裁判
怜と自分とでは恋愛観が真逆なので、いつかアイツに女の子の可愛がり方をレクチャーしてやりたい今日この頃。
死神幹部・斧繡鬼
将来の夢は斧繡鬼と剣俠鬼と結婚すゆこと! ――と言っていた幼い姫様の言葉だけを頼りに今を生きている。
死神幹部・剣俠鬼
今頃天国みたいな場所でマモンをぎゅーっと抱き締めて、一緒にお茶してるかもしれない。
七つの大罪「暴食」ベルゼブブ様
別の世界線では発明の神になった、そんな裏話があります。(Special Thanks 高校時代の友人)
七つの大罪「怠惰」ベルフェゴール
本能的でのほほんとしている天使の世界は自分に合わなかった。実は顔の右半分を覆う鉄仮面を付けているという裏話があります。
七つの大罪「憤怒」サタン
元々は六枚の羽を生やす大天使だった。女の子でポニーテール。
七つの大罪「傲慢」ルシファー
色欲で槍……。暴走しがちな堕天使の中では落ち着いている方です。
七つの大罪「色欲」アスモデウス
別の世界線ではカタカナで喋っていたんですよ。
七つの大罪「嫉妬」レヴィアタン
別世界線では斧を振るう無口な大男。感情を奪ったり植えつけたり出来ました。過去マモン最後のシーンはこの設定からちょっと拝借。
先代のマモン
別世界線でも一言も発することなく亡くなっています。可哀想に……。
先代悪魔王・シヴァ様
可愛い私の弟。美しい私の女神。
ベゼッセンハイト
実はベルフェゴールの妹。
慈愛の女神・へーリオス様
*第六話 「天使の隠し子」と「悪魔の愛し子」
れいれいさんとベネノと杉田先生と(以下略)で手作りコロッケパーティをした! とっても楽しかった。れいれいさんは何にも付けない派だった。節約って言ってた。
山草和樹
今日も金花が可愛い。
河童のトッカ
今日もトッカいじりが捗る。ナナシと仲良し。
天狗の夢丸
*第七話 『約束の向こう側』
今回の世界崩壊にあたって、初めて姫ひとりで家臣達に指示を出せた。シュウとキョウに褒めてもらえたことが本当に嬉しくて胸がぽかぽか!
*全編を通して……
この度未来の運命神候補「語り部」に就任しました。ありがとうございます、一生懸命頑張ります。
名前も自由に変えられるとのことなので胸糞わ……じゃなくって今までお世話になったお名前とお別れして、心機一転以下の名前に変更です。
チコ(ベネノ・平 凡太郎・パーシー・太郎(仮))
僕の大事な大事な相棒、僕の影。
読者の皆様、彼の物語を読んで頂き誠にありがとうございました。
――「読者の目はキャラクタを生かす」とはよく言ったものです。
嗚呼、皆様の心の中でマモンが永遠に生き続けますように。
永遠に、温かく笑っていられますように。
七つの大罪「強欲」マモン
――そして、ここまで読んでくださった素敵な読者様に、大きな感謝とありったけの拍手を!
僕らと冒険してくださった皆様はもう、この物語の役者の立派な一員です!
Super Special Thanks!!
* * *
最後に
全ての読者様と
全ての物語と
全てのキャラクタ達に。
今、感謝の辞を!
そりでは!
Bonum nocte.
良い夢を。
* * *
以上で『猛毒少年にご用心』全本編エピソードは終了となります。
皆様、気を付けてご自身の「ストリテラ」へとお帰りください。
本日は本当に、ありがとうございました。
――、――。
(2023.1.09)
すっかり役者のはけた薄暗い物語に、ノイズの混じった音声が響く。
『読者の皆様。沢山のご閲覧、誠にありがとうございます』
『隠し目安としていたPV1500の達成を確認しましたので、隠しエピソード「encore」の公開を解禁いたします』
『どうぞ、席についたままのその状態で暫くお待ちください』
(隠しエピソード「encore」につづく)
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