vsエンジェル
『分かった?』
『貴方達に補正は渡さない。この物語の未来だって!』
『貴方達の好きにはさせない』
その瞬間、エンジェルの乗った戦闘機からまた光線が放たれる。どんどん博士の護衛が崩されていく。
ああっ、作戦の要が!
「主、ステッキです!」
「え!?」
「お早く、ステッキを!」
「
「そんな所です! このUFO達の壁が完全に崩される前に彼女を何とかしなければ!」
「確かにね!」
マモンの飛翔によって、エンジェルのすぐ傍まで接近。
「えい!」
薙ぐ様に払えば、先端から何かどす黒いきらきらが出てきた。それを浴びた左の銃がボカンと爆発して使い物にならなくなる。
――ん。
「何コレ」
「ファンシー黒魔術!」
何と何を混ぜてんだよ! もう、何というか見てくれから混ぜるなキケンのあれじゃないか!
とはいえこれは使えるな。どうにかして撃ち落とせないかな、あの天使。
しかし滅茶苦茶に振るえばUFOにも当たるし、先の失敗を活かしてエンジェルも逃げ回っている。何ならUFOの近くを陣取ってこちらの攻撃が一歩間違えばUFOに当たるように誘導してきやがる。
クソ。どこまでも策士な奴め。
「どうしますか? 主。ご指示を」
「このステッキってさ、弾の大小は変えられるの?」
「勿論。『強欲』ですから、そこら辺は主の思いのままです」
「ならエンジェルは追いかけ続けて。後ろにピッタリ付くように」
「承知しました」
まるで自分の足で走っているかのようなキレと素早さで逃げ回るエンジェルの後を必死こいてついて行くマモン。
その背中から真っ直ぐステッキを構えた。
「貫け!」
ズドン!!
(さっきからそうなんだけど)宇宙なのによく響く銃声のような音を響かせ、一本のレーザーに集約された力と熱がエンジェルの戦闘機の翼と機体の接合部を貫く。
『きゃ!?』
ガッタン、と派手な音を立てながら取れる翼。バランスが取れなくなった機体は既に制御不能の状態で、ぐるぐる回りながらドンドン向こうの方へと落ちていく。
やった!
――と思ったのに、当然のように生えてくる翼。
直ぐに態勢を立て直し、何事も無かったかのようにまたUFOちゃん達を落としていく。
や、やめろおおおおおおおっ!! 僕らの明るい希望があああああっ!!
「うううー、くそ! もっと近づいて!! 両翼ともメッタメタにしてやる!!」
「それは得策ではないですよ、主」
「何で!!」
「先程の修繕、どう見たって間違いなく『強欲』による作用です。歯向かうだけ無駄なこと」
「む、確かに……」
「それに、これ以上近付けばいつあのマニピュレーターに潰されるか分かりませんよ? それだけは困るでしょう?」
そう言われ、冷静にあちらを見てみると近くのUFOはマニピュレーターでぶおんぶおん薙ぎ払い、遠くのUFOはレーザーでビシバシ撃ち落としている。博士を乗せた船まではあともうちょっとといったところだ。
ひ、ひええ……! いつの間にそんな!
「死んじゃうのはやだ!」
「でしょう? ではもっと考えてみましょう……どうすれば彼女に決定的な一打をぶちかませるのか。科学力による制約が無いのが我々『神仏』が司る魔法の特権。もっと想像力を働かせて」
「う、うーん……魔法よりも物理で生きてきたから分かんない……」
「例えばですが、主の知り合いで魔法を使う人とか、そういうのをヒントにするのもありなのでは」
知り合いかぁ……。
ふーむ。
……。
……、……。
あ。
【アミュレット・アドアステラー!!】
「それえげつない威力の光属性全体攻撃じゃないですか――ギィヤアアアアア!!」
い、言うのが遅いよマモーンッッ!!
ビカーッと激しく輝く胸元のペンダント。お守りとはいえ、主人公補正は僕が持っているので効果は勿論健在。
脆いUFOちゃん達の半分が逝き、周りを取り囲む巨大な戦艦の一つが落ちる落ちる。その癖、同じ光属性のエンジェルには全然効かなかった。
『ありがとね!
くやっしぃいいい!!
アンタに言われると一番ムカつく!!
「や、ガチのお馬鹿ですか貴方は! 私もちょっと食らっちゃったじゃないですか!! 悪魔の天敵は光属性なんですからね!」
「寧ろこの近さで喰らってその程度で居れるのが凄い」
全く! と頬を膨らませながら麩菓子を二、三本ばりばり食べるマモン。
「で、でも……僕これ位しか思いつかなくって……」
「これ位というのはさっきのえげつない光属性全体攻撃のことですか」
「ほ、他には……その……例えば炎を出すとか敵を凍らせるとか雷だとか……」
「でも攻撃した所で
「やっぱ意味、ない?」
「というか、さっきのが一番意味ないですね」
がーん。
分かってはいたけれど、改めて言葉にされるとちょっと辛辣だよ……。
そう言ってしゅーんとなっているとマモンが小っちゃく溜息を吐きながらこちらをちらりと見て語り掛けてきた。
「良いですか? 主。何も魔法は攻撃だけに特化したものではありません」
僕の手からステッキを取りながらエンジェルの乗る戦闘機を見据えるマモン。
「防御、錯乱、回復……そして補助も魔法でまかなえるものの一つ。例えば――」
【雲!】
唱えた瞬間エンジェルの周りを取り囲む濃いマシュマロみたいな雲。どんなに進んでも取れず、難儀している。マニピュレーターでも上手く取れないみたい。
おー。ワンチャン、龍の巣とかだったりしないか? あの雲。
「からの――」
【蛙の雨!!】
『キャアアアア!!』
おおおー! クソキモイ!
「とまあ、このように」
そう言い、ほいっとステッキを返してくるマモン。
「こういった一見風変わりないたずら魔法も戦場においては立派な手段の一つです」
「ほうほう」
「それぞれの魔法にはそれ相応の魔力を消費するので余りに大きなことは出来ませんが、小さな工夫の積み重ねで大きな結果を生むこともあるんですよ」
「なるほど……」
「分かりましたか?」
「勝手は分かってきた気がする」
ほうほうなるほど。魔法とはそうやる物なのか。
よし。
「それじゃあ僕が撃ち落とした哀れなUFOの残骸近くまで行ってくれる?」
「承知しました」
かなり酷いことになっているUFO軍団。エンジェル(+僕の作戦ミス)のせいで半分以上ゴリッゴリに削られている。
そこに。
【復活!】
「強欲」の特性を十分に活かし、目の前のUFOの残骸を元の姿に戻す。
そして――。
【範囲指定、からの襲撃!】
パソコンのお絵描きみたいなワード出しつつ、先程復旧させたUFO達を一気にエンジェルの元に突っ込ませる。
『んなっ!? カエルの次は何よ!』
よしよし、怯んでる!
その隙に!
「マモン!」
「ほいきた」
その隙に無事だった一機のUFOに近付き、そっと敵の補正を奪い取る。
『○△×※?!』
何やら言いながら落ちてった。
……よーし。
ふと見れば僕の生成したUFOちゃん達は殆ど破壊された後。
だがそれは想定範囲内! この補正を手に入れた今! このUFOちゃん軍団は僕らの手足!!
「いけっ!! UFOちゃん達! たっくさんの嫌がらせ弾をお見舞いしてやれ!!」
命令を下した瞬間くるりと向こうを向く銃口。
生産力だけはバッチバチに凄いこちら敵軍。果たして彼らはやってのけた。
『なっ、何よ何なのよ!』
ここに書くには余りに嫌すぎる「アレ」の雨を浴びせかけるUFOちゃん達。
そこに駄目押し!
【アリンコの逆襲!】
『何よそれえええっ!! きゃああああ!!』
さっきまでは戦闘機の窓に貼り付いたり、ぶつかったりだけだったが今度はコックピットに侵入である。
流石にそこまでされると堪らないらしく、戦闘機がいきなりフラフラしだした。
良いぞ良いぞ……! そのままアレこい!!
感覚を研ぎ澄まし、じっとチャンスが来るのを待つ。
……。
……、……。
それは一瞬の時。刹那の間。
――、――。
――今だ!!
瞬間、エンジェルの注意が逸れたコックピットの操縦桿の操縦権を「強欲」の力で奪い取ってやる。
「やった!!」
『しまった!』
ふっふっふー。
後悔しても遅いぞぉ!!
「ほぉら、ぶっ飛べぇぇえええええ!!」
ステッキを彼女の宇宙戦闘機に見立てて投げる真似をする。すると彼女の戦闘機も合わせるようにぐおんと遥か遠くまで吹っ飛ばされていった。
『コノー!! 覚えていなさああぁぁ……』
捨て台詞を吐きつつ、ギャグマンガみたいなぶっ飛び方をしているエンジェル。
そのままきらりーんと星になってしまった。
暫くの静寂。宇宙の本来の姿。
「ひとまず……終了?」
「よくやりました、流石は我が主! 飲み込みが早くてマモンはただただ嬉しゅう御座います!」
「褒めるなよ」
もうこんな事が起きないようにと、この滅茶苦茶目立つ船団はステッキの魔法で隠しておいた。駆逐されてぼろぼろになったUFOちゃん達も一応復活させておく。
さあ。こっからがようやく本番だ。
(つづく)
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