第15話 月光と姉妹
「私も今こうして考えると、何故あんな男の事を慕っていたのかわかりません。顔?ないですね。性格?わかりだかっている事にないです」
我が母ながら流石というべきなのか。あのクソ親父と一緒にいた時よりも少し荒れているのか?
前はあんなにクソ親父の事を悪く言う事は無かったんだが。おそらくあのクソ親父の所為で抑圧されていた性格を解放させたのだろう。
アレが本来の性格?とは思うが前までのクソ親父に媚び、怯える弱々しいのよりは良い。
「美湖様……私は、あの男が……憎いです。そして、あの男の血を引くあの子供も」
怖ェェェェ!?沙霧さん殺気漏れちゃってるよ!俺そういう訓練してないからホントは殺気感じ取れないはずなんだけど、沙霧さんの殺気で俺の身体はガクガクブルブルだよ!
あっ、鳥肌立ってきた。つか寒い!
あれ?あったかいなぁ。下半身じゃないよ?漏らしてないよ?椿さんが抱きしめてくれてるから椿さんの体温で俺の身体が温まってるだけだから。
椿さんの身体、柔らかくて、いい匂いがする。
「沙霧……」
あれ?また寒くなったぞ?今度は椿さんもちょっと震えてる?
「あ〜、これはまずいわね〜」
「……えっ?」
えっ、何がまずいの?椿さん。
「沙霧、あの男を憎むのも恨むのも殺すのも勝手だけど」
あっ、察し。
は、母上がお怒りだぁぁぁぁあああああ!!!!
「私の子供達に手を出したら、どうなるかわかってるわよね?」
喋り方は普通なのに、顔も笑顔なのに!どうしてか怒っている事だけはわかる!?
なんだろう。我が母からまるで大魔王の如き気迫?オーラ?を感じる!禍々しさと母神の様な神々しいオーラを感じる!
「も、申し訳ありません!御子息御息女には決して、手を出しません!」
先程まで放っていた殺気が一気に霧散され、沙霧さんはまるで命乞いをするかの様に頭を下げた。
そして、頭を下げる沙霧の肩に、母さんは優しく手をおいて頭を上げさせると沙霧の頭を自身の胸に抱きしめた。
「沙霧、今まで苦労をかけてごめんね。貴女の声を聞かずに居なくなってごめんね」
母さんは沙霧の頭を撫でてゆっくりと「ごめんね」を繰り返した。
「寂し思いをさせて、一人にしてごめんね」
「っ!?……私は美湖様に、お姉様について行きたかった……!お姉様の横で、ずっと立っていたかった!うあああぁぁぁぁぁぁん!お姉様ー!」
「ごめんね、沙霧」
沙霧さんは母さんの謝罪を聞いて、胸の中に溜めていたもの全てを吐き出すかの様に母さんの胸で叫び、泣き続けた。
そんな母さんと沙霧さんのまるで姉と妹の様な二人に儚く、しかし二人を輝かせる月光に、俺と椿さんは思わず目を湿らせて見守っていた。
俺は二人の姿を見て、『あの二人がいつまでも仲のいい姉妹の関係でありますように、離れ離れになりません様に』となんとかここから見える月に向かって願った。
ーーーーー
そろそろ戦闘シーンを描きたいけどまだ少し先になりそうです。
破滅フラグが一向に俺から離れてくれない!〜俺は主人公でも悪役でもないのに!? トレント @Trent0449
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