第14話 ご褒美です!

 俺も風呂から上がると出入り口の外でタオルを持って待機していた椿さんに捕まり、全身隈なく水気を拭き取られた。


「あれ?沙霧さんは?」


 俺は沙霧さんを風呂から出てから一度も見ていない事に気づき、椿さんに質問してみた。


 後になって別の仕事に行ったんだろうと思った。


「さっちゃんなら、当主様に『自分のしたい事をしなさい』って言われてどこか行っちゃいました〜。護助くんは椿お姉さんだけと一緒は嫌〜?」


「いいえ、全く!椿お姉さん、美人で可愛いので!」


「わ〜、嬉しい〜。護助君素直で可愛くて、お姉さん護助君のこと大好き〜」


 そんなこんなで、俺は美人な椿さんに身体を拭いてもらい、服まで着せて貰った。えっ、『羞恥心とかないわけ?』?


 美人のお姉さんに身体を拭いてもらうのはご褒美です!






「今度は一緒にお風呂に入ろっか〜?」


「はい!お願いします!」


 服を着て、風呂場から離れた俺は椿さんに母さん達が寝ている部屋まで廊下を手を繋いで案内して貰っていた。


 いやあ、子供の姿は得だね。母さんに対しては肉親としての感情しか湧かなかったからオシメを変えられたりお風呂を一緒に入ってる時は全く興奮できなかったけど、こんな美人になら興奮するな!


 まぁ、まだ身体は子供だから我が子は興奮しないけどね。これはあれだ。ちびっ子が綺麗なお姉さんやカッコいいお兄さんを見て好きになるアレだね。


 そう言えばこれはは初恋と言えるのだろうか?


 そんな事を考えていると大きな中庭のある廊下に出てきた、その時。


「ーーどうしてなんですか!」


 月光が注がれる池の側、幻想的な光景を作っている中庭の方からそんな叫び声が聞こえた。


「どうして、あんな男について行ってしまったんですか!?どうしてあんな男の子共など……!あの男が最低クズ野郎なくらい、貴女なら気づけた筈です!どうしてーー」


 こっそり廊下から中庭を見てみると、そこには風呂場からいなくなっていた沙霧さんが俺の母さんに詰問していた。


「貴女には人を見る目があった!貴女の目ならあの男の本性もわかったはずです!私でも初めてあの男を見て月門家に不幸を呼ぶ存在だと分かった!貴女ほどの方がどうして!?」


「沙霧ちゃん……」


 どうやら沙霧さんはうちの母さんとかなり何やら因縁がありそうな雰囲気だ。


「さっちゃん、昔は美湖様の侍女だったんだよ〜。護助君のお父さん、蛇口が美湖様を連れて行くまではずっと仲の良い友達でもあったんだ〜」


 椿さんから昔、俺が生まれる少し前の事を教えてくれた。


 あのクソ親父が母さんを誑かしてこの家を乗っ取ろうと襲撃したが返り討ち。母さんは傷を負ったクソ親父とその女達と一緒にこの家を出て行った。

 

 沙霧さんさんはそんなクソ親父について行く母さんを止めようとしたが、母さんは聞く耳を持たず、沙霧さんは置いていかれた。


 一時期沙霧さんは少し荒れていたそうだ。化け物を退治できる才能を持っていた沙霧さんは周辺の化け物を八つ当たりをするかの様に狩り尽くし、その姿はまるで般若の様だったとか。


 そして、そんな沙霧さんは当然母さんを誑かしたクソ親父を憎んでいるし、そのクソ親父の子である俺と妹の美玲を少なからず憎んでいる。


 あんな美人に憎まれるとか、あんのクソ親父め!禿げろ!

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