第2話 モンスター狩り


 ダンジョンに潜るには、ギルドの会員カードが必要であり、ない場合は例外なく潜ることが出来ない。

 ダンジョン自体にカードを読み込む機能はなく、ギルドの門番がカードを認識して通すようになっている。


「さらに言うと、1人で潜ろうとすると警告されて、実力が伴っていないと認識されたら追い出されることになるのさ」


 聞いてもいないことをペラペラと言うが、その知識は知らないことが多く、役立っている。


「うわ、すっげぇ」


 カードを古代の機械に読み込ませると、ダンジョンに潜る人数と目的を入力しろと言われた。

 どうやら、非常事態が起きてダンジョンに閉じ込められた時に使われる情報だとか。


「人数は2人、目的は金稼ぎ、と」


 それだけ入力すると、ダンジョンへの扉が開かれた。意外と呆気ないものだ。


「さて、行くか」


「楽しみだね……あれ、そう言えば名前を聞いてないね?」


 そりゃお前を信頼してないからな。


「そのうち分かるんじゃないか?」


「……そうだね」


 イケメンが口元を歪ませていたことに俺が気付くことはなかった。



 ♦

 ダンジョンと言うから石のようなものを想像していたのだが、実際は森だった。


「どうなってるんだ、これ」


 ダンジョンに潜る前は石造りの建物にしか見えなかったのに、なんで太陽がある??


「ダンジョンの中は異界に繋がっているのさ。詳しいことはよく分からないけど、今までの常識は通用しないと思った方がいいね」


「そうか……うわっ!」


 足が何かにひっかかり、転びそうになった。これは……枝か?


「見てわかる通り、この森はたくさんの木々が生い茂っている。戦闘中に転んで死ぬことだって良くある話だよ」


「戦いづらいな……ん?あれ、モンスターじゃないか?」


 木の間から見える僅かな光景に、人間とは思えない異形が見えた気がした。


「よく見つけたね、目がいいのかな?うん、ちょうど1体みたいだし、やってみようか」


 ダンジョンに潜って初めての戦闘、モンスターと呼ばれる化け物はどのぐらい強いのだろうか。

 ワクワクしてきた。早くやり合いたい。


「やる気満々みたいだね。僕が注意を引くから、攻撃は君に任せるよ。これも経験と思って頑張ってね」


「あぁ、頼んだ」


 狩りは、終わる時はあっけなく終わる。だからこそ、どれだけ深く集中できるかが大事となってくる。


 イケメンがいつの間にか持っていた笛を吹くと、異形がこちらに猛突進してきた。

 さっきはよく見えなかったが、今なら分かる。


「猪……?」


 猪に似ているが、八つ足だったり怪物らしさが出ている。雰囲気があるとでも言うべきか。


 俺は戦う時に、まず敵の動きを頭に入れてから攻撃に入る。今回もそうだ。

 イケメンには悪いが耐えてもらおう。


 猪の攻撃は数秒のための後の突進、回転体当たり、牙による噛みつき、とシンプルなものだが八つ足が動きの予測を困難にしている。

 なんだあの動き……キモッ!


「初めてのモンスターだ、観察するのは分かるがそろそろ攻撃してくれないかな!?」


 イケメンの方も限界が近そうだ。動きも分かったし、弱点も予想はついた。やるか。


 猪がためを作り始めた1.5秒、俺は走り出した。動きを変えることが出来ない絶妙なタイミング。

 イケメンに突進する猪だが、上手く受け流されて地面に落ちる。

 咄嗟に起き上がろうとした時にはもう、俺の準備は終わっている。


「貫けぇぇ!!」




 そして、俺の手は猪の弱点を穿った。


 猪はピクリとも動かなくなると塵になって消えていった。


『イノシシモンスターLv.1討伐』


『経験値を1取得しました』


 これがダンジョンの声ってやつか。聞きなれない声だな。


「凄いな……まさか一撃で倒すとは思わなかった。手であの威力が出るなんて化け物かい?」


 冗談交じりに言うイケメンだが、目は笑っていなかった。


「技術さえあれば誰でもできる」


 一体の猪なら勝てる事が分かったので、しばらく狩りを続けているとレベルが上がった。


『猪モンスターLv.1討伐』


『経験値を1取得しました』


『―――がLv.2になりました』


 それと同時に、


「イケメン、この揺れはなんだ?」


「来たか。タイミングが良いな」


「……何が起こってるんだ?」


 イケメンは不気味な間を作って言った。


「モンスターの大暴走、スタンピードだよ」

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ローグライクの世界でとんでもないバグを発見しました 小者 @zyouki

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