第三十五話
文化祭二日目。
今日は唯可たち三人と一緒だ。
朝から色々回っているんだけど、特に唯可と沙苗の元気がすごい。
特に外に出てからは「次はあれ食べよー!」とあれこれ見つけては二人で走って行ってしまう。
私と志保は半ば苦笑しつつ、その後ろをゆっくりと追いかけることを繰り返している。
「そんなに食べてお腹いっぱいにならない?」
「模擬店は別腹でしょ! このお祭りよりもさらに安っぽい味がいいよねー!」
「そ、そう?」
「あとほら、誘われたとこは全部回らなきゃでしょ?」
「まぁそやなぁ。うちはそんなないけど、唯可どのくらい声かけられてたん?」
「えーっと……」
唯可が思い出すように空を見ながら右手の指を折って数えていくけど……二回は折り返さなかった? と思ったら、指を折るのをやめて首を傾げた。
「わかんないけど同学年は大体全部! あと部活の先輩と後輩のとこ!」
知り合いが多いとは思っていたけれど、そんなになんだ……と私が面を食らっている隣で、沙苗は「ほとんど全部やん」とお腹を抱えて笑っていた。
「まぁでも全部が全部食べ物屋さんじゃないからね。お化け屋敷とかモザイクアートとかプラネタリウムとかもあったし」
「時間かかりそうなのは初日に終わらせといて正解やったな。二日目になったら大体どこも慣れてスムーズやし」
「そうそう。そうじゃないと回れなかったよ。――っと今さらだけど文栞は佑太と回んなくて良かったの?」
「うん、いいの。それにちょっと私も……その……心の準備が」
「準備?」
「えっと……実は後夜祭、一緒に行くことになったから」
実は昨日家に帰ってからメッセージでやり取りして決まったのだ。
文化祭が終了した後、教室の片づけを終えた後で落ち合うことになっている。
そして私がそれを言った途端、三人が動きを止めて顔を見合わせ、にやーっと悪そうな……ううん、楽しそうな笑みを作った。
「そっか! ついに長瀬くん、告白するのかな?」
「さすがにするやろー。これで何もなかったら、うち怒鳴りこむかもしれんわ」
「だよね。後夜祭で告白って定番だし……これは期待してもいいんじゃない?」
みんな「良かったね」といった様子で私の方を見る。
だけど――。
「違うの。誘われてないの。――私から誘ったから」
三人とも予想外だったのか、虚を突かれたような顔をしている。
「私もそろそろ、ちょっと頑張ってみようかと思って。だからもし上手くいっても、いかなくても、後で話聞いてね?」
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