第二十六話

 そうして話していると男子が戻ってきた。

 佑太くんと近藤くんと谷崎くんだ。三人は私の姿を認めるなり、「あれ?」といった顔をした。


「なになに? 今日は綾瀬さんも一緒なの?」

「そーそー。今日仲良くなったから誘っちゃったんだよね!」


 近藤くんの質問に小久保さんが軽い調子で答える。


「相変わらずだなー、小久保は。――綾瀬さん、話すの初めてだよね? 俺の名前わかる?」

「谷崎くん……だよね? さすがにクラスメイトだから……」

「お、やりぃ。前から話してみたいと思ってたんだよね。仲良くしてよ」

「……あんた女の子がここに来るたびにそういうこと言うのやめなさいよね。仲良くするのは賛成だけど」


 呆れたような小久保さんの様子に谷崎くんが「ははっ」と軽い調子で笑い飛ばす。

 どうやらこれがいつもの調子らしく、それ以上誰も何も言わない。

 何気なく佑太くんの方へ視線を向けると、何やら少し複雑そうな顔をしていた。


「文栞、大丈夫か?」

「え、あ、うん。大丈夫だよ。みんないい人だし」

「ならいいけど」


 佑太くんはちょっとぶっきらぼうにそう言った。

 珍しいな。なんだか少し不服そう? 私がここに来ない方がよかったのかな?

 そんなことを考えていると、突然、「んんんんん?」と牧田さんが身をずいっと乗り出した。


「なになに? 長瀬と綾瀬さんって仲良いん? 長瀬が女子を名前で呼ぶって珍しいなぁ。他には唯可くらいやろ? もしかして二人、隠れて付き合ってたりするん?」


 牧田さんはにやにやと実に楽しそうな顔をしている。

 慌てて私が否定しようと口を開くと、それよりも早く佑太くんが答えた。


「付き合ってねーよ。でも実は仲良いんだよ、俺たち。な、文栞?」


 別に恥ずかしいことではないはずなのに、私の顔はすっかり赤くなってしまい、黙って頷くだけで精いっぱいだった。その様子を見た牧田さんは「へぇ……?」と目を細めて口の端を楽し気に釣り上げる。


「ふーん……。ま、そういうことにしとくわ。今度じっくり話聞かせてもらおかな、

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