第二十五話
手近な机を寄せ、四人で四角に席を固めた。
すると席に着くなり、気さくな様子で牧田さんが話しかけてくる。
「てか唯可と綾瀬さん急に仲良さげやよね。どしたん?」
「ふっふっふ。実は今日の朝、話しかけて仲良くなったんだよ!」
「は? それでいきなりお昼誘ったん? 相変わらずやねー」
こういうことは日常茶飯事なのか、牧田さんは呆れた様子だ。牧田さんは中学まで別の地方に住んでいたようで、言葉に少し訛りがある。いつもちょっと気怠そうな……というか力の抜けた感じで、一見怖そうだけど、話してみるとそうでもない。以前に一度だけ用事があって話しかけたときも、なんだかんだ面倒見よく相手をしてくれた。
ちなみに唯可というのは小久保さんのことだ。
「唯可ちゃん、仲良くなるの上手だからね。私のときと一緒だ」
「だって仲良くなりたいっ! って思ったら我慢できなくない? 不可抗力だよ!」
「私はそんなの無理だなぁ。唯可ちゃんのそういうところ、すごくいいと思うよ」
少しおっとりした様子の鈴見さん。グループ内では珍しく、大人しめなタイプ。
でも私みたいにおどおどはしていない。芯が通ってて、いつも堂々として見える。そういうの、ちょっと憧れる。
「お、綾瀬さんのお弁当美味しそうやね」
「そ、そうかな。……ありがとう」
「ん? その反応、もしかして手作りだったりする?」
「うん、一応……」
「マジ? 綾瀬さんといい、志保といい、なんかきっちりしてるよねー。うちらも見習わんとな、唯可」
「沙苗と一緒にするなし! 私だって……まー、大学生くらいになれば? 手料理の一つや二つくらい」
「それって今は作れんってことやろ? やっぱりうちと一緒やーん」
牧田さんがお腹を抱えてげらげらと笑う。
ちなみに沙苗というのは牧田さん。志保というのは鈴見さんだ。
会話から察するに鈴見さんもお弁当を作ってきてるみたい。そちらに目をやると、とても美味しそうなおかずが敷き詰められていた。
「わ、鈴見さんのお弁当美味しそうだね」
「私のはほとんど夕飯の残りつめてるだけだよ。そういう綾瀬さんのお弁当こそ、すごく美味しそう。その内容だと、ほとんど朝に作ってるんじゃない?」
「私こそ朝食作るついでに作ってるだけだよー。夕飯は弟がいっぱい食べるから余らないんだよね」
「……なぁ、唯可。うちらの女子力、低すぎん? 会話が異次元すぎて全くついていけないんやけど」
「……ちょっと私も思ってた。――志保、綾瀬さん、今度料理教えてよー! 私も作れるようになりたい!」
「えぇ?! 教えられるほど、大したもの作れないよ?」
「私は最初から怪しいからね。今までは作ってきてるの志保だけだったからあんまり気にしなかったけど、綾瀬さんも来たら危機感覚えてきた」
「あ、じゃあうちも便乗するー! なぁなぁ、いいやろ?」
そんな感じで会話しながら、ご飯を食べていく。ここまで賑やかなお昼は高校に入ってから初めてかもしれない。なんなら、少し楽しさも感じている。
初めはどうなることかと思ったが、意外となんとかやれそうだ。
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