あとがき

 今回も短編作品「競輪の神様と非実在の競輪予想師 パート2」を読んでいただき、ありがとうございました。先月、前作を執筆した際に、自分自身で思いの外、面白かったなという想いに駆られて、今回も執筆に至った次第です。

 というワケで、お話は前回と同じ設定。アリサが私たちの世界にやってきて競輪予想をするというお話です。


 今回は、実際に昨晩、小倉競輪場で行われた第63回競輪祭GⅠの決勝戦を予想するというお話でした。劇中で、競輪の神様がと言っていたと思いますが、多くの競輪ファンにとって、夕べの競輪祭GⅠの決勝戦は予想が難しかったと思います。

 昨晩の決勝戦は、所謂『コマ切れ戦』という形でした。競輪は、同じ出身都道府県(ホームバンク)や、同地区の選手とラインと呼ばれる連携をして戦います(無論、例外もありますが)。


 昨晩の決勝戦では、二人組の短いラインが三つ(合計六名)。一人で戦う単騎の選手が三名。この合計九名での決勝戦でした。

 劇中でも少し触れましたが、この九名の中でといえる選手がいませんでした(無論、GⅠの決勝戦ですから、九名全員が強いと言えますが)。

 今の競輪選手でといえる選手が一人います。それが今年の東京五輪・自転車競技日本代表選手でもあった脇本雄太選手です。しかし、彼は体調不調で今回の競輪祭を欠場していました。同じく今年の東京五輪・自転車競技日本代表選手であった新田祐大選手も、決勝戦進出を逃しました。

 そんな中で迎えた決勝戦。私も今回の短編を執筆にあたり、かなり悩みました。誰が今年最後のGⅠを優勝するのか?GⅠ優勝という栄光と共に、12月30日に開催される競輪GP(静岡競輪場)への出場権を得るのは誰か?


 決勝戦メンバー九名の内、注目していた選手がいます。それが地元福岡県の選手である①北津留翼選手、④園田匠選手。そして、今回の優勝者となった⑦吉田拓矢選手の三人です。

 ①北津留選手と④園田選手は、競輪祭の開催地・小倉競輪場をホームバンク(本拠地)とする選手です。二人は準決勝戦でも連携し、見事な勝利で決勝戦へと駒を進めました。二人にとっては、ホームバンクでのGⅠ決勝戦です。否応なしに力が入りますし、何よりも同じ小倉競輪所属の選手同士で迎えた決勝戦。どんなGⅠの決勝戦よりも強い想いだったでしょう。目の前にやってきた『優勝』の二文字に対するこだわりは、他の選手以上に大きかったと思います。


 そして、もう一人私が注目したのは⑦吉田拓矢選手です。彼は茨城県の選手で、今年26歳。関東地方の若手選手では、デビュー以来注目を浴びていました。彼は先行型選手で、その強さは他地区の選手からも認められる逸材でした。

 しかし、先行型選手は、吉田選手に限らずラインの先頭で走るという宿命を抱えています。それゆえ、ただ単にというレベルでは、そう簡単には特別競輪(GⅠやGⅡ)での優勝ができません。先行選手は圧倒的な力がない限り、逃げ切って勝つことはできないのです。ちなみに、それを今回欠場した脇本雄太選手でした。

 ⑦吉田選手は、ラインを組まない、一人で戦うでのレースでした。しかし、私が彼に注目したのは、このであった点と、決勝戦前のコメントでした。

 単騎で戦うのは、選手自身の裁量で自由に戦えます。それはラインが形成されないので、。その分、ラインからの援護がないので不利な面もありますが。

 ですが、今回、吉田選手が単騎で戦うことはプラスになると私は読みました。ラインを気にしなくていいということは、自分の優勝だけを考えればいいということでもあるのです。関東地区からの優出は、⑦吉田選手だけでした。それだけに自分だけが勝ち上がってしまったという想いもあったかもしれません。しかし、決勝戦前のインタビューで、吉田選手の優勝にかける想いが、他の選手のそれよりも強く感じたのです。私は、彼の優勝はあるかもしれないと、ここで感じました。

 アリサの予想では本命が、二車単BOXで①②④⑦の4名。穴目予想で、二車単BOXで④⑤⑦⑧の4名。そして、優勝選手は、④園田匠選手としました。他の選手も実力、実績がありますが、優勝はこの中からだろうと最終的に判断しました。


 そして、迎えた運命の20時40分。私はテレビ画面に張り付いておりました。結果は⑦吉田拓矢選手の優勝。アリサと同様に、私も歓喜しました。予想が当たった以上に、⑦吉田選手の苦労が報われた瞬間でもあったからです。2015年7月のデビュー以来、ラインの先頭で走ってきた吉田選手。それはラインの後方で走る選手の勝利への貢献でもありました。それゆえ、彼自身が特別競輪で優勝することは、想像以上に近くて遠いことでもあったのです。

 今年最後のGⅠ決勝戦。いいレースでした。そして、優勝者・吉田拓矢選手にとっては、競輪選手にとって最高ランクS級S班のスタートでもあります。ここから関東地区のみならず、東日本を代表する選手に飛躍するスタートとなることを願います。

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