シャッター通りのクリスマス

@ramia294

第1話

 ここは、奈良のシャッター通り商店街。


 駅からほんの少しだけ離れているだけなのに、シャッター通り商店街。


 そんな商店街にも、人気店がありました。

 商店街のほぼ中央、お鍋屋さんは、大人気。いつもお客が、絶えません。


 しかし、新型コロナの影響は、この人気店にも色濃く現れました。

 元々、新鮮で、良い材料を使い、美味しいお鍋を提供しているこのお店。


 外食を控える世間の風に、お客の数がとても減り、仕入れた物が、余ります。


 お店で出せない材料を泣く泣く捨てるお鍋屋さん。その時、キツネとタヌキが、声かけました。


「もしもし、美味しいと評判のお鍋屋さん。見ればとても美味しそうなお肉に魚、アワビにエビ。野菜もとってもみずみずしい。どうして捨てているのです?」


 突然キツネとタヌキに話しかけられた、お鍋屋さんは驚きましたが、ここは、奈良市。

 街中には、シカが、ウロウロ。イノシシだってすぐ近くの山で、のんびり過ごしています。

 キツネやタヌキに話しかけられても、不思議も何もないところ。


「実は、世間のコロナ禍で、お客さんが大激減。仕入れの数が難しく。せっかくの美味しい材料を捨てる事になりました」


 キツネとタヌキは、おずおずとお鍋屋さんに、言いました。


「もしも捨ててしまうなら、僕たちに分けてくれません。近くの河原で、子供たち。お腹が空いたと、待ってます」


 お鍋屋さんには、美味しい食材を捨てる事が、悲しい事だったので、キツネとタヌキの申し出に、とても笑顔になりました。


「少し、待ってて下さいね」


 お鍋屋さんは、お店からハンカチと紐を持って来て、咥えて運びやすい包みを二つ作りました。


 キツネとタヌキは、大喜び。

 嬉しそうに、咥えて帰りました。


 それからお鍋屋さんは、お店の外に、タヌキさん用、キツネさん用と書いた包みを余った食材で作り、キツネとタヌキが、咥えて行きやすいよう、置いておきました。


 キツネとタヌキは、毎日のように、お店を訪ね、嬉しそうに咥えて帰りました。


 秋が過ぎ、冬が来て、やっとコロナは、下火になって、お客さんは、増えてきました。

 仕入れの量も元の忙しかった頃に戻ってきました。


 しかし、お鍋屋さんは、キツネとタヌキのために、ほんの少し仕入れを多くして、相変わらず、彼らのための包みを作っています。


 年末も間近に控えたある日、キツネとタヌキは、相談しました。


 お鍋屋さんに何かお礼が、出来ないか。


 キツネとタヌキの出来る事。僕たち何が出来るでしょう?


 今日は、聖夜のクリスマス。

 キツネとタヌキは、お鍋屋さんの店の前。


 キツネは、赤い服のサンタに化けました。タヌキは、鮮やかな緑のクリスマスツリーに化けました。


 赤いキツネが、呼びかけます。

「今夜は、聖夜のクリスマス。美味しいお鍋は、いかがです」


 緑のタヌキが、呼びかけます。

「今夜は、聖夜のクリスマス。楽しい夜を過ごしましょう」


 タヌキとキツネの呼びかけに、次々とお客さんが入り、お店は、とても賑やかです。


 お客さんの笑顔の話題は、お店の外のサンタにツリー。みんなとっても嬉しそう。


 閉店時間が過ぎました。お鍋屋さんは、サンタキツネとツリータヌキをお店に迎え入れました。


 今度は、お鍋屋さんのサプライズ。

 こっそりキツネの家族とタヌキの家族を招待していました。


 今夜は、お店でごちそうです。キツネとタヌキのパーティーです。


 みんなとっても嬉しそう。お鍋屋さんも嬉しそう。


 その夜は、お店からいつまでも灯りが消えませんでした。



         終わり




 

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