第144話 一番楽しいこと④
マッキーさん加入の翌日。アパートの自室からネオデの自室にログインした私はいつも通りギルドチャットに挨拶を送ってみる。今日は誰がいるかな?
コヒナ:『ただいま~』
ダーニン:『ただいまてwwwwww』
ん?
ラムダ:『こんにちは』
え、あれ? 誰? 私何か間違えた?
レナルド:『おかえりなさい』
あ、レナルド君だ。よかった、何が起きたかと思っちゃった。
マッキー:『コヒナさん! ダーニンさんとラムダさんがギルドに入ってくれました!』
え、えっ⁉
部屋から出てみるとギルドハウスの大広間にレナルドさんとマッキーさんの他に初めて会う人が二人もいた。ギルドチャットで挨拶をくれたダーニンさんとラムダさんだ。
「ちわーwwww ギルド入りましたwダーニンですwww」
「こんにちは。ラムダです」
状況がいまいち呑み込めない。いやなんとなくはわかるんだけど。この家の中にいると言うのはそういうことなんだろう。
呑み込めないけどとりあえずはご挨拶だ。
「コヒナです~。初めまして~」
「丁度今お二人加入しまして、自己紹介しようって言う流れだったんです。丁度古参のコヒナさんが来てくれて良かったです」
マッキーさん、私古参じゃないよ。寧ろペーペーだよ。ギルドって言うかこの世界のペーペーだよ。どうしよう誰か本物の古参来てくれないかな。
ダーニンさんは男の人で片手斧に盾持ちの流行のテンプレ戦士スタイル。テンプレという物はそれが強力だからテンプレなのだ。ダーニンさんも強い戦士さんなんだろう。
もう一方ラムダさんも男の人で魔法使い。風系の範囲魔法を得意にしているということだ。
「風範囲って効率悪くねwww」
ラムダさんに向かってダーニンさんが言う。
「すいません」
「いいけどwwwww」
ダーニンさんw多いな。絡みづらい。ラムダさんは逆に大人しい感じで言葉が少なめ。こっちはこっちでとっつきにくいけどダーニンさんよりは話しやすいかな。
ダーニンさんとラムダさんは知り合いというわけではなくマッキーさんが別々に勧誘してきたのだそうだ。新規プレイヤーがほとんどいないネオオデッセイでギルドメンバーを二人も勧誘して来たマッキーさんは凄い。
凄いけどほんとはちょっともやもやする。
でも入隊した以上はギルドの仲間だからね。楽しくいかないと。
「じゃあ折角ですからみんなでどこか行きましょうか~」
「どこかってwww何処wwwww」
ううん。それを決めましょうって言ってるのよね。
「五人もいますからどこかのボス行きましょうか~?」
「なんでボスwwww」
何がおかしいのだろうなダーニンさんは。変なキノコでも食べたのかな? どこかのリンゴさんじゃあるまいし。
ボスのドロップ品は魔法効果が高いものが多いけど、お金や素材を集めるのなら中層階で倒しやすいモンスターをたくさん狩る方が効率がいい。ランダムに魔法効果が付与されるモンスターのドロップ品を狙うよりも、お金を貯めて自分の理想の装備品を別のプレイヤーさんから買った方がいいと言う考え方もわかる。
でもそれならそうしたいって言ってくれればいいのにね。
結局その日はダーニンさんとラムダさん、レナルド君とマッキーさん、それに私の五人で悪魔蔓延るダンジョン、魔封殿ディアボでグレーターデーモンやアークデーモンを狩ろうと言うことになった。
なったんだけど。
「死霊術www 効率悪www」
「なんで範囲wwwww」
ダーニンさんが何かにつけてメンバーにダメ出しをしてきて非常にやりづらい。デーモン族相手だし死霊術や風魔法だと戦いにくいのはしょうがないじゃん。
「ww俺ダメージ受けてんだけどwwww」
うるさいなあ! 自分の回復くらい自分でやれよ!なんでしてもらう前提なんだ。
はっ、私としたことがはしたない。ご自分でなされ。
「回復力低wwwww」
ラムダさんがせっかく掛けてあげた回復魔法にも文句がつく。
他人の回復には別スキルが必要なの! 基本そんなの構成に入れないの! みんな自分の為にゲームやってるんだぞ!
びしびし。イライラしてたら手元が狂ってしまった。グレーターデーモンの強攻撃をもろに食らって結構なダメージをうけてしまう。でもすぐにラムダさんの魔法が飛んできて回復してくれた。
「ありがとうございます!」
「こちらこそ」
あまりしゃべらないラムダさんが返事を返してくれた。ラムダさんは私がラムダさんとレナルド君を守って動いてるの気が付いてくれたんだな。
「wwwこっちもダメージ受けてるんだけどwwww急いでwww」
一人で遠くいくからでしょ! 回復力低いって言ったくせに回復魔法期待しないでよ。
「あ~、大分稼ぎましたし、そろそろ引き上げましょうか?」
マッキーさんが提案してくれた。よかった。誰か言い出さないかな思ってたとこだよ。
「はい! そうしましょう!」
「うん」
「はい」
間髪入れずに答えた私にレナルド君とラムダさんも続いた。
「もう引き返すとか意味wwwwww」
そうですか。意味が分かったらいいんですけどね。
「効率ソロと変わんないwウケるwwwww」
ギルドに戻ってきて戦利品を分ける時もダーニンさんはぶつぶつ文句を言っていた。
「俺<辻ヒーラー>いるっていうから入ったんだけどwwwww」
そうですか。楽しそうで何よりです。無理しないで下さいね。この人ハクイさんに会わせたくないなあ。ハクイさんお仕事で大変なんだよ。
分配が終わった後ダーニンさんは「取り返さないとwwwww」と言ってソロで何処かに向かっていった。向かっていくときに私に「ついて来てもいいよwww」と言っていたが丁重にお断りさせていただきました。
「すいませんでした。パーティー組むの慣れてなくて」
ダーニンさんがいなくなった後ラムダさんが謝ってきた。
「いえいえ~。会ったばかりで合わせるのは難しいですよ~」
「そう言って頂けるとありがたいです」
基本的には一人で戦うより複数で戦う方が効率はいい。でもそうとも言い切れない時もある。スキルの構成によってはお互いの足を引っ張ることにもなるかもしれないし、一緒にいる人が何をしたいのか、何をして欲しいのかを会ったばっかりで判断するのは難しい。
師匠はその辺大得意だけどね。
それと、ラムダさんのスキル構成はちょっと変わっているんだろうな。
それ自体は良いことだと思う。折角のネットゲームだ。好きな楽しみ方をすればいい。やりたいことが出来ないとつまらない。
ダーニンさんみたいなテンプレートのスキル構成だとただ戦っても強い。テンプレート構成とはそういう物だ。かくいう私も剣と盾を使う上でのテンプレートを踏襲している。
でも変わったスキル構成だと独自の戦い方を編み出さなくちゃいけないし、周りにも理解されにくくなる。そこのバランスは難しい。
うちの変人たちはその辺まとめて突っ切ってしまっているけど。
レナルド君とラムダさんは今日はここまででログアウト。二人がいなくなってからマッキーさんがぽそり、といった。
「すいません。お役に立てればと思ったのですが」
ダーニンさんとラムダさんが上手くいかなそうなことに責任を感じているのかな。
「いえ~、そんな~」
悪気があったわけではないし、私としてはしょげているマッキーさんにはそう返すしかない。でも、どうしたものかなあ。
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