第132話 植物迷宮の女帝《エンプレス》 ④
タロットカードにはいくつもの解釈がある。
一説には大アルカナは人の一生を一連の物語として描いたものであるとされる。この解釈では人は様々なアルカナと出会いながら最後にそれぞれの幸福、<
ただ、一度出会い方を間違えたとしてもそれで<
だからこそタロットカードは占いの道具足りえるし、占いのタロットカードの解釈も人によって時によって様々なのだ。
□■□
「じゃあ~、三人で行ける所まで行ってみよう~~」
ブンプクさんの指揮の下、私とレナルドさんの三人はダンジョン<モグイ>へと潜入した。
私がレナルドさんに感じている気味の悪さはぬぐい切れないけれど、ブンプクさん登場のお陰で我慢しようと思える位にはなっている。
私一人だとモグイは地下三階くらいまでは余裕。四階だとちょっと頑張らなくちゃいけなくて、ボスであるドライアードの女王アブダニティアさんの住んでいる五階は長時間の滞在は厳しい感じ。皆さんに助けて貰ってアブダニティアさんを倒したこともあるけれど、ひとりでは無理。大体一、二階は何度も来たので迷うことは少ないけど、三階以降は一人で目的の場所にたどり着くのは無理だし、転移魔法なしでは帰ることもできない。
人数が増えれば深い階層まで行けるかというとそうでもない。モンスター討伐スピードは速くなるし狩りの効率は上がるけど、その分モンスターの
防御や回復に特化した人がいればまた話は違うのだけど、そもそもソロでの活動がメインとなるネオデでは基本的に攻撃力が高い方が有利だ。守りに強いショウスケさんや回復特化のハクイさん、攻撃魔法が使えない師匠などのスキル構成を取っている人はちょっと変わった、もとい貴重な存在なのだ。
ブンプクさんは刀を使うサムライスタイル。細かい違いはあるんだけど私と同じ戦士系の構成で、盾がない分私より攻撃力が高い。
レナルドさんは死霊術を中心としたスキル構成のようだった。強力なアンデットを召喚するにはMPや触媒のコストも高いけれど、召喚とは別に死体を操ることが出来るのでターゲットを決めて同じ場所にとどまって戦うときにはかなり強力。モンスターでもプレイヤーでもその場に死体があれば操れてしまうのだ。つまり狩りを続けるほどに強力な軍勢が出来上がっていくわけだ。
いろいろと制限はあるみたいだけど。だってドラゴンゾンビが十匹、二十匹いたら世界征服が出来てしまうものね。
召喚や死体の操作は強力なスキルではあるんだけど、出てきたアンデットはみんな動きが遅い。魔物使いさんみたいにリダクトケージに入れて連れて歩けるわけでもない。今回のように動きながら戦うのには向いていないのだ。
モンスターを倒しながら進んでみた所三階まではやっぱり余裕がある。レナルドさんはモグイ初めてっぽいし、ここで草に覆われた緑の巨人<グリーンマン>や這いまわる蔦みたいなモンスター<ヴィネリアン>を狩っててもいいんだけど、もう少し手応えのあるやつの方が楽しいかもしれない。
「どうしよっか~~。レナルド君、ここで狩り続けるのと四階行ってみるのとどっちがいいかな? ちょっと手ごわくなるから死んじゃうかもだけど~~」
「えと、四階行ってみたいです」
「了解~~。コヒナちゃんもいいよね~~?」
「はい、大丈夫です」
まあ移動が大変なレナルドさんがそう言うなら。新しいとこって楽しいしね。
「はいは~~い。じゃあもし死んじゃったらレナルド君にゾンビにしてもらおうか~~」
おお、ブンプクさんジョーク。私はスケルトンの方がいいなあ。
「アバターの死体から作ったゾンビはアバターそのものとは無関係になって」
「わかってるよう~~。真面目だなあレナルド君は~~」
「すいません」
「謝んないでよう~~。真面目だなあ~~w」
「すいまs、あっ、すいません」
……。くっ。レナルドさんが謝ったのを謝っている。しかも焦って噛んでいる。
そこまで悪い人じゃないのかな。っていや駄目だめ。師匠の悪口言ったんだから!
許さないけど、折角始めてきたダンジョンなら楽しんで欲しいかな。私も先輩たちにたくさん助けてもらったわけだし。レナルドさんはネオデ歴は私より長いのだろうけどこのダンジョンでは私の方が先輩だ。先輩に受けた恩は後輩に返すものだ。これはお仕事でも部活でも、ネットゲームでも一緒だろう。
少し私も反省するか。あまり冷たい態度は取らないようにしよう。
こうして我々三人はさらにジャングルの、じゃなかったダンジョンの奥へと向かったのだった。
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