第116話 魔術師の勘違い ①
お詫びと訂正
ナゴミヤさん(お師匠さん)と毒リンゴさんの最初の出会いですが
<ジャスティス・キューティー>ではナゴミヤさんから声をかけてきたことに
<ある日空から女の子が降ってきた>ではリンゴさんから声を掛けたことになっています。
プロットの管理ミスによるものです。
流れとしては
最初の出会いは町で。ナゴミヤさんから声を掛けています。リンゴさんの服が可愛かったのが気になったためです。
褒められて気を良くしたリンゴさんは対人可能なダンジョン内でナゴミヤさんを見かけてつい襲い掛かります。
ナゴミヤさんはリンゴさんから逃げおおせますが、この時襲ってきたのはリンゴさんだと思っていませんでした。再び町で会った時にリンゴさんの方から声をかけて来て気が付くという流れです。
2023/05/02時点で両方のお話を修正しています。ご了承くださいませ。
もう一点
ナゴミヤさんの真面目バージョンの服装ですが正しくは「紫色のローブと紫のマギハット」です。
場所によって紫だったり紺だったりバンダナだったりとなっています。これはプロット上は赤いローブだったのですが書いてる時にリンゴさんの頭巾もバルキリーコヒナも赤だな、変えよ。と安直に変えてしまって色をあやふやに覚えていたせいです。何でバンダナになってたのかはわかんないです。バンダナはNPCモードの時の服装です。
申し訳ございません。こちらも修正しております。
それでは本編をどうぞ。
■□■
「師匠師匠、師匠はうちにアレが出たら助けに来てくれますか?」
ナゴミヤの弟子のコヒナには少々危ういところがある。
彼女はくいっと懐に入るように急に距離を縮めてくるのだ。チャットで会話し、表情が読み取れないネットゲームの世界では誤解や勘違い起きやすい。師匠としては少々心配だ。
□■□
クリスマスの数日前。いつものメンバーでコヒナが占い屋を出すにあたって服装をどうするべきかと話し合っていた。
「んじゃ俺が占い師用の服作ろうか」
そういうナゴミヤにいつもの食い気味の返事が返ってきた。
「いいんですかっ、師匠! ありがとうございます!」
ブンプクの分析によるとコヒナが食い気味の反応をするのはコヒナの頭の回転が速すぎるからだという。のんびりしているように見えて時に鋭い考察を見せるブンプクの言うことだ。多分正しいのだろう。確かにコヒナは頭がいいというのはナゴミヤも感じるところだ。
でもそれだけではない気がする。頭の回転では説明できないような反応をすることがある。会話だけではなくゲームの中でモンスターを退治している時にも。
占い師―。いやいや。リアルの頭を軽く振って馬鹿な妄想を追い出した。
「材料あれば服作るくらい時間かかるものでもないからね。作るの好きだし。占い師か~。どんな感じにするかなあ」
「あ、師匠! それなら一つお願いが。ちょっと待ってて下さい!」
そういうとコヒナはナゴミヤの家の中にある自分の部屋へと走っていった。
「これを使って頂きたいです!」
「お、この帽子か。懐かしい」
持ってきたのは以前ダンジョン内で発見したマギハット。コヒナが「おったから~、おったから~♪」と非常に気に入って自分の部屋に飾っていたものだ。
「色は……。この緑とかどう? エメラルドサンドっていうんだけど」
「綺麗だと思います!」
エメラルドサンドはネオデ世界に存在する染料の名前だ。エメラルドと名が付くがリアルの染料としてはエメラルドグリーンよりもパリスグリーンに近い。やや青みがかった明るい緑で大変美しい色だ。元々のパリスグリーンやこれを使ったドレスにはリンゴが好みそうな話があるが、もちろん現在のパリスグリーンの染料には危険なものは使われていない。
この世界の染料は素材の質感も変えてしまう。エメラルドサンドは染めたものにこの美しい緑と共に絹のような光沢を与える。まるで―。まるであのドレスの生地のようになるのだ。
「可愛い! 綺麗です!」
エメラルドサンドに染まった帽子を被り、コヒナが嬉しそうに叫んだ。
「んじゃ、それと合わせてっと」
やはりあのドレスが思い浮かぶ。しかしあれはウエディング用だ。作るのは占い師が占いの際に着るドレス。華やか過ぎてはいけない。それに着るのはコヒナだ。占いは座ってするとしてもウエディングドレスのように動くときに邪魔になるようではいけない。いつも元気で良く動く彼女の個性を殺してはいけない。そしてコヒナの宝物のつばの大きなマギハットに合う物。
神秘的。
言葉にすればそれだけのことだが、そうあれと物を作るのはやはり難しく……楽しい。
施す装飾は目立たせずされど繊細に。布地を多くし肌の露出はさげるが野暮ったくはならないように。このバランスが肝心だ。
ここはゲームの中の世界。リアルのドレスのデザインとは違いできることは限られている。しかし逆にここだからできることもある。重さも素材の性質も価格だって気にせずに、ただただ全力で美しいと思うものを作ればいい。
出来上がったドレスはしかしと言うべきかやはりと言うべきか、どこかあのドレスに似ていた。リアルという制限を取り払ってもここまで。ゲームの制限の中でここまで。嬉しいような寂しいような感覚。
ただ、このドレスは占いをするコヒナによく似合うだろう。
「よし、これでどうかな?」
「ありがとうございます!着替えてきます!」
ドレスを受け取るとコヒナはまた嬉しそうに自室へと駆け込んでいった。
「じゃじゃーん!」
ドレスを纏い、部屋から飛び出してきたコヒナはたくさんのアクセサリーを付けていた。大きなピアス。腕輪にブローチ。そして全ての指に付けられた指輪。
見た目だけで選ばれたアクセサリの持つ効果はめちゃくちゃ。互いに打ち消しあって付けない方がマシなくらいだ。まるで自分が付けているNPCになるための指輪のように。
「師匠師匠、どうですか? 神秘的ですか? 」
宝石とドレスに身を包んだ弟子が嬉しそうにくるくると踊る。
「おーすごいすごい。神秘的神秘的」
「どうですか? どうですか? 占い師っぽいですか?」
踊りながらそう聞く彼女は残念ながらお世辞にも神秘的には見えない。しかし占いを始め彼女自身が神秘を纏った時、このドレスはきっと真価を発揮するはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます