第70話 ギルド<なごみ家>へ、ようこそ! 5
「んじゃ、最後ハクイさん」
ハクイさんは真っ白な四角いミトラ帽にこれまた白のワンピース。看護師さんだね。白衣の天使ハクイさんだ。
実際の看護師さんはミトラ帽被ってないらしいけど。小学校以来病院行ってないから、今は何被ってるのかわからない。
「ハクイです。このギルドではまともな方です」
みんな言うなそれ。もう騙されないぞ、今度は何が出てくるんだ。
「趣味は回復と蘇生です。安心して怪我してください」
うん、普通……かな?
回復と蘇生をメインにしたスキル構成なら、攻撃力は落ちるとしてもアリ……、いや、待った。
ログを確認して気が付く。この人、スキル構成の話してなかった。趣味って言ってる。回復と蘇生が趣味だって言ってる! よし、変な人だ! もう安心。
「ハクイさんはね、辻ヒーラーだよ」
「辻ヒーラー?」
「うん。すれ違う全ての人のHPを回復していくよ。ハクイさんに救われた人は敬意をこめてハクイさんを<辻ヒーラー>と呼ぶんだ」
ほほう、結構なご趣味ですな。
「それに魔法とスキル合わせて蘇生方法三つ持ってるから、三人同時に蘇生できるんだよ」
「それは凄い!」
まてよ。すごいのかな? 一つで十分じゃないかな? わかんないや。でも回復と蘇生に特化した人なら逆に攻撃に特化した人と組めば凄いことになりそうだ。
「じゃあ、ヴァンクさんとのコンビは最強ですね!」
思ったままにパンツの<狂戦士>ヴァンクさんの名前を出してみたのだけれど。
「あ」
「あっ!」
「あ~~」
「あはは」
当の二人以外の四人が何やら不思議な反応を示す。
「冗談じゃねえ! 攻撃手段はゴーレムだけ、なんてヤツとコンビ組めるか!!」
「こっちのセリフだわ! 戦って!やられて!もう少しで倒せたのに、ってところで回復するのがいいの! 美しいの! アンタみたいに死んだ!ガハハ!ってのはなんか違うの!」
「ガハハ、なんて言わねえよ!」
「存在がガハハって言ってるのよ!」
あ~なるほど、こうなるのか。やっちゃったんだな私。
「コヒナさん、この二人に今のフリをしてはいけないよ。良くパーティー組んでるコンビなんだけどねえ」
痴話げんかなのか。ふうん。なんかちょっと。
いいな、それ。
「ハイ静まってー!」
師匠が言いながら杖を振る。ぱぱぱん、と痴話げんかをしている二人とリンゴさんに雷の魔法が落ちた。
「ぐあっ」
「きゃあ」
「えっ!? 何でボクも!?」
予想外の雷にリンゴさんから苦情がでる。
「初対面の人に毒物を振舞った罰だよ」
「そんな! ボクは心からの歓迎を込めて!」
「ハイハイ」
ぴかんとリンゴさんにもう一回雷が落ちる。
「ぐはあっ」
再びの雷撃にリンゴさんは机に突っ伏した。
「あれ? 味方に雷魔法?」
プレイヤー同士は攻撃できないんだと思っていた。前に試しに師匠に攻撃してみようとしたけどできなかったし。
「同じギルドだとアバター同士で対戦できるよ。ふつうはリンゴさんの毒入りりんごとか食べても何ともないんだけど、同じギルドだと毒を受ける」
ギルドが同じだと同士討ちしてしまうってことか。
「なんだか微妙に迷惑なシステムですね?」
パーティー組んだ時には味方に当てないように気を付けないといけなくなる。
「ギルドで設定も出来るんだけどね。元はPvP戦闘の練習用だったんだけど。今あんまり行く人いないからつっこみ用かな? 雷の魔法は出が速くてエフェクトも大きいから便利なんだ」
つっこみ用て。もう少し有効利用できないものだろうか。
でも師匠の魔法の威力だとなあ。雷撃魔法を受けた人たちもエフェクトが出ただけでほとんどダメージを受けてない。肩コリとかには効くかな?
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