第30話 女教皇の憂鬱 2
ルリマキは最近になってギンエイは<吟遊詩人ギンエイの詩集め>という動画の投稿を休止したことを知った。色々と理由はあるようだが、ギンエイの仲間であるリザードマンの白騎士がリアル事情で引退したというのが決め手になったらしい。確かに彼の代わりを探すのは難しいだろう。とても残念だがリアル事情はどうしようもないことだ。
ギンエイ自身は今も活動中だという。そのギンエイに会えるかもしれないというのを聞いてルリマキはすぐにゴウのいる場所に向った。道すがらゴウはフレンドメッセージでこの奇妙なクエストについての説明をしてくれた。
『俺の友達でメルロンてのがいるんだけどさ。そいつがギンエイに弟子入りしたんだよ』
『!?』
『あ~、うん。残念ながらギンエイが普通に弟子とったりしてるわけではない、と思う』
ゴウはルリマキがギンエイに憧れてゲームを始めたことも知っている。弟子を募集しているのならルリマキ自身も弟子入りしたいと思ったが、そうはいかないようだ。だがなぜメルロンと言う人はギンエイに弟子入りすることができたのだろうか。
『なんかね、メルロンがギンエイに、占い師さんを護衛するのを手伝ってくれって頼んだんだけど、それで気に入られたみたい』
難解な情報がいっぺんにいくつも飛び込んできた。
『占い師さんを護衛……?ですか……?』
『そうそう。で、その護衛を一緒にやってほしいっていうお願いなんだけど。まあ、その辺の詳しいことはこっちに来たらメルロンから直接話させるよ』
ゴウと一緒にいたのは一人は件のメルロンと言う、エルフ族の子供のアバターを使う剣戦士。もう一人はジョダと言うドワーフ族の槍戦士だった。
「こちら、ルリマキさん。こちら、メルロンとジョダさん」
ゴウが簡潔に紹介をしてくれた。その紹介の中でメルロンと言う人だけ「さん」がつかなかった。きっとゴウとは凄く親しい仲なのだろう。嫉妬と言うわけではないが、少々羨ましくはある。その上メルロンはギンエイの弟子だというのだ。
「よろしくお願いします」
「ルリマキさんっすね。よろしくっす」
メルロンとジョダにルリマキも挨拶を返す。
「ルリマキです」
「んじゃ自己紹介も済んだところで、クエストの詳細をメルロンから」
「お前もう少しお互いの紹介とかそういうのを。いやいい。何でもない」
はあ、とメルロンがため息をついた。子供の姿のアバターがゴウに向ってぞんざいな態度をとるのは奇妙な感じだが、それに腹を立てるのはおかしなことだ。メルロンの中の人がどんな人物なのかわからないし、それよりなにより、人を見た目で判断することをルリマキは、舞姫は良しとしない。してはならない。
「ルリマキさん、まずなんですが。ちょっと普通のクエストと言うのとは違いまして。報酬とかも大したもの用意できないかもしれないんです。なので面倒そうだと思ったら遠慮なく抜けてください」
「はい」
また難解な情報が出てきた。クエストの報酬は用意できないと言ったが、メルロンと言う人は自分で用意するつもりなのだろうか。運営によるシステム上の報酬ではなく。
「センチャの町に、コヒナさんと言う占い師さんがいるんですが、その人を護衛してダージールまで連れてくる、と言うクエストです。ギンエイと言う人に相談したら、手伝ってもらう条件として色々課題を出されてしまって。その課題をこなすのと、最終的にはコヒナさんをダージールに連れてくることの手伝って欲しい、と言う内容になります」
「はい」
答えてしまったがどうにも要領を得ない。センチャの町には行ったことがあるが、そんなクエストあっただろうか。占い師なんていかにも物語の重要人物に思えるのだが。それにギンエイに相談したら課題を出された、なんて。もしかするとほとんどの人が知らないような隠しクエストでもあるのだろうか。
「こいつね、その占い師さんのこと手伝いたくてしょうがないんだって。な?」
ゴウがそう言うとメルロンが持っていた剣でゴウの頭をゴンと叩いた。ダメージが発生するわけではないが、流石に見た目に痛そうだ。叩くのならやはりハリセンがいい。
「だからそう言うんじゃないって何度も言ってるだろう」
「いってえな。いや、そういうので合ってるだろ。何が違うんだよ」
「ん…………あれ? 違わないな」
「お前いいかげんにしろよ!?」
二人のやり取りに、舞姫は思わず吹き出してしまった。なるほど、センチャには占い師さんがいるのだ。おそらくNPCではない、メルロンが手伝いたい占い師が。確認のため、ゴウにフレンドメッセージを送る。
『占い師さんと言うのは、プレイヤーさんなんですか?』
『そうそう。俺も会ったことないんだけどね。プレイヤーなんだけど冒険しないで町で占い師やってるんだって』
流石ネットゲームの世界は広い。色んな人がいる。
「そんなわけで、これはシステム上のクエストではなく俺からのお願いになります。その占い師さん自身も今はこの話を知りません」
「はい」
「ええと、以上です。もしよかったらなのですが、手伝っていただけますか?」
「はい」
ルリマキはそれだけを返す。言葉が足りなければゴウが補足してくれるだろうし、ゴウが補足しないのならば必要ないということだろう。もちろん「大事な友達の大事な友達」の頼みを断るわけはないのだ。
数日後、ギンエイに出されたいくつかの宿題を終えて、作戦の為の打ち合わせが行われた。
そこでルリマキは憧れであったギンエイと初めて直に会うことができた。一緒にいたジョダも同じくギンエイのファンだったようで、ギンエイからリュートを貰っていた。羨ましくなってしまったが、自分でかけた制約のせいで私も欲しいとは言い出せない。するとゴウが
「ギンエイせんせー、ルリマキさんもせんせーのガチファンです」
と言い出した。
「はい」
びっくりしたが否定するのもおかしい。慌てて何度も頷く。
「おお、それは光栄です……ん?」
ギンエイがルリマキの顔を覗き込んでくる。表情を作らない設定にしてあるのに気が付いたようだ。一瞬どんな反応をされるかと緊張したが
「おおおおお、こ、これは素晴らしい。ああ、なんと素晴らしい」
そういって握手を求めてきた。アバターのルリマキは無表情のままそれに応じる。だがルリマキを操作する舞姫の顔は真っ赤になっていた。アイドルに会えたらこんな感じになるのだろうか。握手をして貰えたのが手に汗を掻いたりしないアバターで本当によかった。
「生憎今は何も持ち合わせがないですが、次お会いした時にはルリマキさんにも何か記念にお渡しするものを用意しますね」
「はい」
それだけを返してまたしきりに頷く。ルリマキにできる精一杯の喜びの表現に、ギンエイが楽しそうに笑った。
クエストはレベル1のプレイヤーを護衛して≪嘆きの洞窟≫を越えるというもので、中々に難易度が高い。念入りにこちらの戦力と作戦の確認が行われたが、その時にギンエイ自身はクエストに参加しないということを知ってルリマキは少々残念な気持ちになった。まあ、それも致し方あるまい。実際に会って話をすることはできたわけだし、ギンエイの立てた作戦でクエストをこなせるというだけでも稀有なことだ。
護衛対象の占い師はコヒナと言う人らしい。打ち合わせではメルロンが他の三人にしきりにそのコヒナのことでいじられていた。その内容が気になってゴウにだけ聞こえるフレンドメッセージで聞いてみる。
『メルロンさんはコヒナさんとリアルで面識があるのですか?』
『いや、ないと思うよ。俺とメルロンはあるけど』
またも予想外の情報が入ってきてそれはそれで気になるのだが、まずはメルロンとコヒナの関係だ。どうしても気になってしまう。
『メルロンさんは、その占い師さんのことが好きなんですか?』
聞きたいのは「会った事もないのに?」ということだ。
『どーだろね。わかんね。多分、メルロンもわかってないんじゃね?』
自分でもわからないという場合もあるのか。やはり恋と言うのは難しいモノようだ。
『あいつ馬鹿だからさ、少し周りで煽った方が良いんだよ』
『なるほど……?』
少々無責任ではないかとも思った。それがゴウには伝わったようだ。
『あはは、どっちでもいいんだよ。所詮俺たちが外野で何言ったって決めるのはメルロンだからさ』
そういうものか。なるほど……? だ。
コヒナ抜きでまずは練習と言う手はずだったがその予定は大幅に崩れた。なんと訓練の予定でむかった≪嘆きの洞窟≫の手前で当のコヒナに会ってしまった為だ。
ネットゲームの中でメンバーを揃えて何かをしようとすれば日程の調整は非常に重要になる。リアルでは皆バラバラの生活をしているわけだから、偶然メンバーが揃った時は吉日中の吉日だ。この機会を逃すわけにはいかず急遽その場で出発することになった。
コヒナは自分とは正反対の表情豊かなアバターを操作する人だった。表情だけでなく、話している間もずっと動き続けている。そこは表情で伝えられない分身振り手振りで感情を伝えようとする自分と一緒で、参考になる。向こうも同じことを考えたらしく、お互いにお互いを真似て動いてみる。中々に楽しい。この人とは仲良くなれそうな気がした。そして、もしメルロンがこの人のことを好きだというなら、応援してあげたいと思った。
コヒナが来るとギンエイは何やら慌てて飛んで行ったが、代わりにウタイと言う人が現れた。ルリマキはすぐにそれがギンエイの別キャラだと気が付いた。つまり自分たちにレベルを合わせたギンエイと一緒に護衛のクエストをすることになるわけだ。
ルリマキにはそれはまるで神話の中で神様が人へを身をやつした英雄の物語の様に思えて、その物語に自分が同行しているのというのはどう考えたって最高だった。
ウタイがやってきて直ぐ、ルリマキはチャットルーム≪メルロン君を見守る会≫と言うものに誘われた。チャットルームはルームのメンバー内だけに聞こえる会話を行うシステムだ。パーティー用のチャットとは別に内緒話ができる。悪趣味だとも思うが、とりあえず入ってみる。案の定メンバーはルーム主のウタイに加えてゴウとジョダ、そして自分だった。
『よし全員加入したな? じゃあ我々で若い二人を見守っていこうじゃないか!』
『ういーっす』
『うへひゃへひゃ。なんかこれ、ワクワクするっすね!』
ウタイの言葉にゴウとジョダが答える。やはり悪趣味だ。悪趣味ではあるのだが。友達といわゆるコイバナなどと言うものをしたことがないルリマキにはとても魅力的な提案で、ジョダの言う通りワクワクする。そのワクワクの誘惑に逆らえず、
『はい』
と、答えた。
しかし実際に冒険が始まってみると、どうにも歯がゆくて仕方がない。
メルロンがしきりにコヒナに気を使っているのはわかる。さっきゴウも言っていたが、さっきまでメルロンは自分のことを俺と言っていたが、いつの間にか僕に代わっている。
もともと話し方などから周りに気を使う人だと思ってはいたが、しゃべるのはゴウにまかせてそれに相槌をうつ形で会話に参加していた。それが今はモンスターがいない所で何気ない話題を自分から振ったりしている。こうなるとメルロンが言う「そういうんじゃない」は受け入れ難い。
しかしコヒナの方は全く気が付いていない様子であった。恐らくはコヒナから見ればいつものメルロンなのだろう。なかなかうまくいかないものだ。
『ええい、どうにもじれったいな!』
同じことを考えていたのは自分だけではないようでチャットルーム≪見守る会≫でウタイが言う。
『いやあ、メルロンにしたら相当頑張ってるよアレ』
『そういう問題じゃないんだよ! もっとこう、面白くならないものかね?』
ゴウがフォローするが、ウタイは無茶なことをいう。ルリマキはそれにギンエイが動画を取るときに仲間にわがままを言っている所を想像してしまう。もちろん方向性は違うが、動画撮影の前のギンエイと仲間たちはこんな感じだったのではないだろうか。
『ジョダ君、二人をなにかこう、アレな雰囲気にしてくれないか』
『ったく、アレってなんすか。んじゃあ、ちょっとトイレ休憩にして、しばらく戻ってきてない感じで二人っきりにして観察するってのはどっすかね?』
『おお、それだ! 流石ジョダ君、なんて悪いヤツだ!』
『へっへっへ、ウタイ先生程じゃございやせんや』
本当に悪い相談をしている。エチゴ屋と悪代官のセリフだ。きっと相談内容にふさわしい悪い顔で笑っているに違いない。しかしその相談を聞いている舞姫は、自分の口元が同じように悪い顔で笑っているのに気が付いてしまった。困ったことに自分もこの悪だくみの共犯者なのだ。
丁度安全地帯である神殿に着いた。
「んじゃ、このあたりでちょっと休憩にしよう。各自戻って来たらチャットで報告を。他のメンバーの状態はログで確認するように」
ウタイの言葉に返事を返して各々用を足したり飲み物を用意したりする。
『戻りました』
『おかえりー』
ルリマキが≪見守る会≫のチャットルームに戻ってきたことを伝えると、ゴウが返事を返してくれた。ログを確認すると既に全員戻ってきているが、それを知っているのはルリマキを含めた≪見守る会≫の四人だけだ。メルロンとコヒナは中々戻ってこない自分たち四人を待ちながら何やら話している。
ログを確認してみるとコヒナの服の事のようだ。初々しいというかなんというか、見ていていかんともしがたい気持ちになる。小説や漫画に出てくる恋愛を見るのとも違う、どうにももどかしい感じだ。
「あの、コヒナさん、ひょっとしてなんですが。もしかして、ものすごく気を使ってますか?何だか普通の人みたいですよ」
メルロンがコヒナにかける言葉には≪見守る会≫から逐一採点が下される。
『普通の人みたいですよ、だと? メルロン君は一体何を考えているんだ?』
『あは~。まあ俺としては好きっすけどね。好感が持てるっつうか』
『ジョダ君、それは上から目線だろう。この彼女持ちが!』
『そんなことないっすよ!』
『いやあ、多分「普通じゃない」っていうのが褒め言葉なんじゃないかなあ。メルロン的には。いつも元気なコヒナさんが今日は元気がないのが心配だよ、みたいな?』
『なんだそれは。私にはよくわからないがコヒナさんには通じるのか?』
『なんか会話成立してるっぽいから通じてるんじゃないっすかね?』
『はい』
みんな好き勝手なことを言う。しかしルリマキとしてもせっかく好感度を稼げそうなところでわざわざおかしな言い方をしなくてもいいのにと思ってしまう。
コヒナが苦手だというリーパー種について話していた二人だったが、他のメンバーが戻ってこないため、メルロンのことをコヒナが占うという流れになったようだ。そういえばコヒナは占い師だという話だった。
「<月>のカードですね~。嘘とかごまかし、隠し事、不安なんかを表すカードです~。御心当たりがありますか~?もし気になることがありましたら、アドバイスにもう1枚開いてみます~」
コヒナが占いの結果をメルロンに告げる。それに対しメルロンは
「あはは、どうでしょうか」
とごまかすように笑った。自分が色眼鏡で見ているからなのか、占いの結果はメルロンがコヒナに思いを寄せていてそれを隠している、と取れてしまう。と、その時
「いや、大当たりじゃん」
ゴウが間違ってオープンチャットで発言してしまった。
ウタイはそれに「あっ、ゴウ君、バカ」と反応していたが、ルリマキは、もしかしたらゴウはわざとオープンチャットで発言したのかもしれないと思った。
メルロンははあ、と大きくため息をつくとごん、と剣でゴウを叩いた。慌てて二人の間に割って入る。悪いのはゴウだけではない。自分も含め四人とも共犯だ。それに剣で叩くのは良くない。見た目にもよくない。こんなこともあろうかと、今日は人数分のハリセンを持ってきている。
メルロンにハリセンを渡し、ゴウの隣に正座した。ウタイが嬉しそうにその隣にその隣に座ると、仕方ないといった風にジョダも一緒に座った。
メルロンはしばらく不思議そうに見ていたが、やがて意図を理解したらしく、また大きなため息をつくと、四人を順番にハリセンでスパンスパンと叩いていった。一緒に悪いことを企んだら一緒にお仕置きを受けるべきだ。友達というのはそういうものだろう。
その様子を、一人状況が分かっていないだろうコヒナがぽかーんと口を開けてみていたのが面白かった。
最奥部にいるボス、≪狂った水の精霊≫は練習の甲斐あって難なく倒せた。強敵だと思っていただけに少々拍子抜けだ。ウタイがいたというのは大きいのだろうが、自分も一年という長いブランクを埋められてきているのかもしれない。
後はダージールまで障害もないはずだったが、最後の最後になって厄介な相手が出てきた。
≪ダブルサイス≫
リーパーの上位種であるグリムリーパーの、さらに上位に当たるモンスターであり、攻略サイトでの討伐の推奨レベルは65。現在のルリマキを超える。ウタイは特別だとしても、ゴウ以外は全員ルリマキよりレベルが下だ。その上この攻略サイトの推奨レベルは、計算は2パーティー分、12人で戦うことを想定している。
現状の戦力で戦うことなど考えるべきではない相手だった。
もちろん逃走にもリスクはある。ダブルサイスはリーパー種の中で唯一移動速度が速く、その上テレポート能力を持っていて、動いた相手を積極的に襲う習性がある。逃走した瞬間に攻撃が来る。狙われたのがゴウであれば持ちこたえられるだろうが、他のメンバーでは一撃で死亡する可能性もある。
だがそれでも戦闘を回避するべきだ。死亡した仲間は後で蘇生ができる。だが戦闘になれば全滅は確実だ。ルリマキはそう思った。しかし、英雄ギンエイの化身アバターであるウタイは言った。
「コヒナさん、絶対に動くな。ああ、大丈夫だよ。君がアレを怖がっているというのは良くわかった。見つからないように隠れていて欲しい」
戦闘を回避しようとしたときに、ダブルサイスが生贄として選ぶのがコヒナでないとは限らない。確かにコヒナは言った。リーパー種が怖いと。これまでも何度も死んでも平気な顔でいたが、リーパー種に殺されるのだけは嫌だと、メルロンとの会話の中でそう言っていた。
ならばその護衛を引き受けた自分たちは、どうするべきか。
「我々は君を守ろう。何、心配することはない。君同様、私たちは全員望んで此処にいる」
間近で見る英雄は、使うアバターが違っていても、画面の中で見るよりずっとずっとかっこよかった。
「ああ、確かに聞いたとも。その依頼、改めて勇者メルロンとその愉快な仲間たちが承った!」
助けて欲しいという願いに、英雄が応える。
そして英雄が言う「仲間」の中に、自分がいる。
負けるわけにはいかなかった。
当然のごとく苦戦を強いられる。だがここでももちろん、姿が違っても英雄は英雄のままだった。
ウタイから出される的確な指示に従う中で、すごい早さで仲間たちの戦い方が上達していくのを感じる。自分でもメキメキ、と音が聞こえてきそうな成長速度だ。一瞬で敗北してもおかしくない相手に、辛くも戦線を維持し続ける。
まともに攻撃をしのげるのはゴウだけ。その友達の背中に、ルリマキはしっかりと庇われて、自分のなすべきことをやっていく。
それでもダメージを与えられずに仲間たちに焦りが出たころ、英雄は言った。
「心配はいらない。このまま戦闘を維持。大事なのは時間だ。あと5分持たせろ!大丈夫だ、それで勝てる!」
「だあああ、長え!でも生≪それで勝てる≫、痺れるっす!」
ジョダの言葉はまさにルリマキの言葉を代弁したものだった。
難しい。長い。だが勝てるのだ。だってその言葉は英雄ギンエイの決め台詞なのだから。
果たして「それ」は現れた。
筋肉隆々の、大戦斧を担いだ人間族の戦士。人に身をやつした英雄の求めに応じて駆け付けた、舞姫が憧れた
その上気が付けばかの
英雄にあこがれて旅を始めた自分が、その英雄と共に旅人を守り、仲間と共に怪物退治をしている。
こんな出来すぎた話があるだろうか。
これならいい。これなら嫉妬されても仕方がない。
狭い
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